KY活動の記録をAIで読み解く
公開 2026年9月17日
目次8項目
KY活動の記録は、多くの現場で毎日つくられています。作業前に危険を出し合い、対策を決めて、用紙に書いて残す。実務では、この流れが習慣として定着している現場が広くあります。
一方で、書いた記録がその後どう使われているかとなると、綴じたまま終わっている現場も少なくありません。書く手間はかかっているのに、読み返す機会がないという状態です。
ポイントはここです。KY活動の記録が活きるかどうかは、書き方より後から読める形になっているかで決まります。
ここでは、KY活動の記録について、溜まったものをAIで読み解く方法、そのために書く段階で整えておくこと、そして集計しやすい様式の作り方を順に整理します。
KY活動の記録が使われないまま溜まる理由
KY活動の記録が読み返されないのは、書式の問題であることが多くあります。自由記述の欄に手書きで書かれていると、後からまとめて見ることができないためです。
いまの流れ
- 毎朝、用紙に書く
- 元請へ提出する
- ファイルに綴じる
- 読み返されない
書く手間だけが残る
読み解く流れを足したあと
- 選択式の欄を足して書く
- 現場をまたいで集める
- AIが似た内容をまとめる
- 対策を1枚にして現場へ返す
書いた側から変化が見える
同じ危険が3つの現場で挙がっていても、書き方が違えば同じものとして数えられません。「高所からの墜落」「足場からの転落」「開口部への落下」。読めば近い内容だと分かりますが、並べ替えても隣に来ません。そのため、件数を数えられないまま束だけが厚くなるという状態になります。
もう1つの理由は、書く目的が提出になっている場合です。元請へ提出する書類として扱われていると、毎日同じ内容を書いて出すほうが手間が少なくなります。書かれている内容が毎日同じであれば、後から読んでも新しいことは出てきません。
そのうえで、この2つは別の問題です。前者は形式の話で、後者は運用の話になります。形式だけ整えても、書く内容が変わらなければ結果は同じです。
KY活動の記録をAIで分類する
KY活動の記録が自由記述で溜まっている場合、AIの文字処理が役に立ちます。言い回しが違っても意味の近いものをまとめる、という作業が得意な領域だからです。
自然言語処理の技術を使って、作業報告に含まれるヒヤリハットの事例を分析し、過去の類似事案を抽出するという取り組みは、製造や建設の分野で実際に行われています。報告書を危険源の種類ごとに自動で分類する試みも、テキストマイニングと機械学習の組み合わせとして紹介されています。
小さく試す場合は、専用の仕組みを入れなくても構いません。1年分の記録を書き写して汎用の生成AIに渡し、似た内容をまとめて件数の多い順に並べるよう頼むだけでも、傾向はある程度見えてきます。
- 毎日のKY活動記録 自由記述のまま 1か所に集める現場をまたいで集めると母数が増える
- 集めた記録 言い回しの違いを吸収する 危険の型で分類墜落・挟まれ・飛来落下など
- 分類の結果 件数ではなく結果の重さで選ぶ 対策を決めるここは現場を知っている人の判断
- 打った対策 1枚にまとめて配る 現場に返す返らないと次から書かれなくなる
| やること | AIに任せられるか | 補足 |
|---|---|---|
| 似た内容をまとめる | 任せやすい | 言い回しの違いを吸収できる |
| 件数の多い順に並べる | 任せやすい | 数え方を指定しておく |
| 時期や作業との関係を見る | 一部 | 日付と工種が記録に入っていれば |
| 対策を決める | 人が行う | 現場の条件を知っている人の判断 |
| 重大さの評価 | 人が行う | 起きたときの結果で見る話になる |
一方で、出てきた順位をそのまま受け取らないほうが安全です。件数が多いのは、危険が大きいからではなく、書きやすいからという場合があります。報告しやすい内容ほど件数が増える、という偏りは分析の前提として押さえておく必要があります。
KY活動の記録を分析できる形にする
KY活動の記録を分析したい場合、書く段階で少し整えておくと後が楽になります。全部を選択式にするという意味ではなく、集計に使う欄だけを決めておく形です。
全部が自由記述。後から数えられない
決めておくと効くのは次の3つです。
- 作業の種類(工種)を選ぶ欄を作る
- 危険の種類を大きく分けた選択肢を置く(墜落、挟まれ、飛来落下など)
- 自由記述は残したまま、その横に置く
3つめが大事なところです。選択式だけにすると、現場で実際に起きている細かい状況が消えてしまいます。選択式は数えるため、自由記述は読むためという役割の違いで持たせておくと、どちらの使い方もできます。
そのうえで、選択肢は途中で増やさないほうが扱いやすくなります。年度の途中で分類が変わると、前半と後半で数えられなくなるためです。増やしたくなった場合は、次の年度の区切りで変える形にしておくと集計が崩れません。
- 1 書く欄を決める 工種と危険の種類を選択式に
- 2 毎日書く 自由記述はそのまま残す
- 3 まとめて集める 現場をまたいで1か所に
- 4 分類する AIで似た内容をまとめる
- 5 対策に使う 多い順ではなく結果の重さで選ぶ
KY活動の記録と画像を使った分析
KY活動の記録とは別に、画像から危険を見つける取り組みも進んでいます。現場に設置したカメラの映像から、危険な行動や状況を自動で検知するという形です。
蓄積した画像から、発生の多い危険行動や時間帯の傾向を地図のように可視化する、といった使われ方が紹介されています。人が書いた記録では出てこない内容が拾えるという点が、文字の分析との違いになります。
一方で、導入のしかたは文字の分析とかなり違います。カメラの設置、通信、そして映っている人への配慮まで含めた準備が必要になるためです。働いている人が映る記録を扱う以上、何のために使うのかを先に説明しておくことが前提になります。
そのため、まずは文字の記録から始めて、そこで見えた課題に対して画像を使うかを考える、という順序にするほうが無理がありません。順序を逆にすると、何を見たいのかが決まらないまま機器だけが入ることになります。
KY活動の記録から対策につなげる
KY活動の記録を分析しても、対策につながらなければ現場は変わりません。分析で出てくるのは件数であって、優先順位ではないためです。
優先順位を決めるときに見るのは、起きたときの結果の重さです。件数が少なくても、起きれば重大な災害につながるものは先に手を打つことになります。逆に、件数が多くても、起きても軽微で済むものは順位が下がります。この判断は、現場の条件を知っている人が行う領域になります。
そのうえで、対策を決めたら記録の側にも反映しておくと、次の分析が意味を持ちます。対策を打った後で同じ内容が挙がり続けているなら、対策が効いていないか、現場に伝わっていないかのどちらかです。同じ内容が減ったかどうかを見るという部分で判断するのが良いです。
とはいえ、件数が減ったことを成果として扱うときには注意が要ります。報告しにくい空気ができると、件数は簡単に減ります。挙がった件数だけでなく、挙げた人の数や現場の数も一緒に見ておくと、実態との差に気づきやすくなります。
KY活動の記録を生成AIに渡すときの決めごと
KY活動の記録を生成AIに渡す場合、渡し方を先に決めておくと結果が安定します。同じ記録でも、頼み方が変わると出てくるまとめ方が変わるためです。
決めておくと良いのは、分類の観点を指定することです。何も指定しないと、AIは読みやすい切り口で勝手にまとめます。墜落・転落、挟まれ・巻き込まれ、飛来・落下といった、労働災害の型で分けるように伝えると、他の資料と突き合わせられる形になります。
あわせて、記録に無い内容を足さないように伝えることも大事です。KY活動の記録は現場で実際に挙がった内容の集まりなので、一般的な危険をAIが補ってしまうと、自社の傾向ではなくなります。件数を数える場面では、この点がそのまま結果を左右します。
個人情報の扱いも決めておく形が一般的です。記録に氏名が入っている場合、そのまま渡すと外部のサービスに個人名が残ります。氏名を伏せてから渡しても、分類の結果は変わりません。伏せる手間を惜しむ理由がないところなので、先にルールにしておくと迷いません。
KY活動の記録を現場に返す
KY活動の記録を分析しても、その結果が現場に戻らなければ書く動機は生まれません。集めたものが事務所で止まっていると、現場からは「出しても何も変わらない」ように見えます。
返し方としては、月に1回、件数の多かった内容と打った対策を1枚にまとめて配る形が扱いやすくなります。文章を長くする必要はなく、自分たちが書いた内容が挙がっていると分かることが大事な部分です。
あわせて、他の現場の内容を混ぜて返すと効果が広がります。自分の現場で起きていない危険を知る機会になるためです。似た作業をしている現場の事例は、そのまま次のKY活動の材料になります。
一方で、返すときに個人が特定できる形にしないほうが続きます。誰が挙げたかが分かると、次から挙げにくくなるためです。作業と状況だけを残して、人の名前は落として返す形が一般的です。
そのうえで、月に1回という頻度も決めておくと止まりません。何かあったときだけ返す形にしていると、事故が起きた月だけ急に情報が増え、普段は何も戻らない状態になります。
KY活動の記録と他の安全記録の関係
KY活動の記録は、単独で見るより他の記録と合わせたほうが見えるものが増えます。安全パトロールの指摘、事故の報告、作業間連絡調整の記録。いずれも同じ現場で起きていることを別の角度から書いたものだからです。
たとえば、パトロールで繰り返し指摘されている箇所が、KY活動では挙がっていないということがあります。この差は、現場で気づかれていない危険があるという合図になります。逆に、KYでは毎日挙がっているのにパトロールでは指摘されていない場合、対策がすでに効いているのかもしれません。
そのため、分析するときは記録の種類ごとに分けたうえで、同じ期間・同じ現場で並べてみる形が扱いやすくなります。AIに渡す場合も、どの記録から出てきた内容なのかが分かるようにしておくと、混ざらずに済みます。
最後に、これらの記録は保存の年数が決まっているものと決まっていないものが混ざっています。分析のために1か所に集めるときも、元の記録をどこに何年残すかは別に決めておくほうが、後で処分の判断がつきます。
そのうえで、集めた記録をどこまで遡って見るかも決めておくと作業が終わります。範囲を決めずに始めると、古い記録を探すところで止まってしまうためです。まずは直近の1年分だけを対象にして、そこで見えたものを次の対策に回す、という区切り方が続けやすくなります。
あわせて、分析そのものも毎月やる必要はありません。半年に1回まとめて見る形でも、繰り返し出ている内容はつかめます。頻度を上げるより、出てきた結果を現場に返すところまで毎回やり切るほうが、記録の質は上がっていきます。
よくある質問
KY活動の記録が形だけになっています。AIで改善できますか。
AIが変えられるのは、集めた記録を読み解く部分です。書かれている内容が毎日同じであれば、分析しても同じ結果しか出ません。まず書く欄を見直して、その日の作業に合わせて書ける形にするほうが先になります。そのうえで溜まった記録を分類すると、現場ごとの傾向が見えてきます。
何件くらい溜まっていれば分析できますか。
決まった件数はありませんが、数十件では傾向とばらつきの区別がつきにくくなります。1年分をまとめて見る、複数の現場を合わせて見るといった形で母数を増やすと、繰り返し出てくる内容が浮かび上がりやすくなります。