建設業の退職証明書|実務経験証明書とは別
公開 2026年9月22日
目次17項目
- 1建設業の退職証明書と実務経験証明書は別物
- 2建設業の退職証明書に書ける5つの事項
- 業務の種類には職種と工事の種類を書く
- その事業における地位は役職で書く
- 使用期間は在籍していた期間
- 3建設業の退職証明書を受付から交付まで流す
- 4実務経験証明書を頼まれたときの調べ方
- 退職の時点で一覧にしておく
- 証明する人を決めておく
- 5建設業の退職証明書で賃金欄をどう書くか
- 6建設業の退職証明書を解雇のときに書く
- 7記録が残っていないときの伝え方
- 8建設業の退職証明書が求められる場面
- 次の会社への提出
- 国民健康保険や国民年金の手続き
- 賃貸や融資の審査
- 失業給付までのつなぎ
- 9建設業の退職証明書と離職票を混ぜない
- 出すところが違う
- 使う場面が違う
- 届くまでの時間が違う
- 本人にどう説明するか
- 10建設業の退職証明書を工期の区切りで備える
- 区切りの前に声をかける
- 同じ書式で出す
- 担当を決めておく
- 再発行の求めにも備える
- 11建設業の退職証明書で出向と応援をどう書くか
- 在籍していたのはどちらか
- 期間を備考で補う
- 応援は自社の勤務
- 記録がどちらにあるか
- 12建設業の退職証明書を何日で出すか
- 目安を先に伝える
- 記録がそろっていれば短い
- 古い記録を探すときは長くなる
- 渡し方を決める
- 13建設業の退職証明書に電子で対応するか
- 出す形と残す形を分ける
- 押印を求められるか
- 送るときの宛先を確かめる
- 14建設業の退職証明書と建退共・CCUSの関係
- 建退共の証紙や掛金
- CCUSの就業履歴
- 3つを同じ日に案内する
- 社会保険の資格喪失
- 15建設業の退職証明書で退職の事由をどう書くか
- 自己都合のとき
- 契約期間の満了のとき
- 会社都合のとき
- 書かないという選択
- 16建設業の退職証明書を受け取る立場で見る
- 何を確かめるために求めるか
- 実務経験の確認は別に頼む
- 本人にしか頼めない
- 17まとめ
建設業の退職証明書は、退職した人の請求に応じて会社が交付する書面です。労働基準法にもとづくものとされています。
一般には、どの業種でも同じ形で扱われる書類です。とはいえ建設業では、退職した社員から「証明書を書いてほしい」と言われたときに、退職証明書ではなく実務経験証明書を指している場面があります。施工管理技士の受検や、次の会社での技術者の登録にかかわるためです。
ここでは、建設業の退職証明書として何を書き、何を書かないかを整理します。
建設業の退職証明書と実務経験証明書は別物
建設業の退職証明書は、実務経験証明書と混ざります。どちらも前の会社が書くもので、転職のときに求められるためです。
退職証明書
- 根拠は労働基準法
- 請求された事項だけを証明する
- 書ける事項は5つに限られる
- 在籍していた期間を使用期間として書く
実務経験証明書
- 根拠は資格や許可の要件
- どの工事に、どの立場で携わったかを示す
- 様式は試験機関や行政庁が定めている
- 工事の内容で判断されるので在籍期間とは一致しない
ポイントはここです。受付の時点で、どちらを求められているかを分けます。分けずに書き始めると、書いたあとで「これではない」と戻ってきます。
そのため、依頼を受けたときに用途を聞きます。「どこに出すものですか」と一言確かめるだけで、ほとんどの場合は判別できます。
建設業の退職証明書に書ける5つの事項
建設業の退職証明書で証明できるのは、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由の5つです。
そのうち、請求された項目だけを書きます。請求されていない事項を書いてはならないという定めがあるとされています。親切のつもりで足した1行が、本人の不利になることがあります。
業務の種類には職種と工事の種類を書く
建設業では、この欄がいちばん証明の役に立ちます。
土木施工管理、建築施工管理、電気工事、管工事。職種だけでなく、担当した工事の種類まで書くと、次の会社が読み取れます。
一方で、ここに資格名を書き足したくなります。求められていなければ書きません。
その事業における地位は役職で書く
主任、係長、工事部長。社内での立場を書きます。
この場合、途中で役職が変わっていれば、いつから変わったかを添えます。期間が分かる形にしておくと、あとから実務経験の証明を頼まれたときにも使えます。
使用期間は在籍していた期間
雇入れの年月日から、退職の年月日までです。
出向していた期間や、休業していた期間の扱いは、提出先によって判断が変わることがあります。そのため、そうした期間があった場合は、備考に書くかどうかを本人に確かめます。
建設業の退職証明書を受付から交付まで流す
建設業の退職証明書は、受付・作成・交付の3つに分けると滞りません。
- 1 受付 用途と項目を聞く
- 2 判別 退職証明書か実務経験証明書か
- 3 照合 名簿・賃金台帳・出面表
- 4 作成 請求された項目だけ書く
- 5 交付 控えを1部残す
受付で聞くのは4つです。用途、提出先、いつまでに要るか、どの欄が要るか。これを定型文にしておくと、電話でも取りこぼしません。
作成では、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、出面表を見ます。とはいえ、記憶で書いた欄が1つでも混ざると、あとで訂正になります。
交付では、控えを1部残します。この場合、同じ人から再び請求が来たときに、前回と食い違いません。
実務経験証明書を頼まれたときの調べ方
実務経験証明書を求められた場合は、在籍期間ではなく工事の記録をあたります。
工事経歴書、工事台帳、配置技術者の記録。この3つに、誰がどの工事に付いていたかが残っています。そのうえで、工事の種類と期間を拾って様式に写します。
退職の時点で一覧にしておく
建設業では、退職から何年も経ってから依頼が来ることがあります。
だからこそ、退職の手続きのときに、その人が携わった工事を一覧にして綴じておきます。あとから探すより、はるかに短く終わります。
証明する人を決めておく
実務経験証明書は、会社の代表者が証明する形が一般的です。
とはいえ、実際に内容を確かめられるのは、当時の現場を知っている人です。誰が中身を確かめて、誰の名前で出すかを先に決めておきます。
建設業の退職証明書で賃金欄をどう書くか
建設業の退職証明書の賃金の欄は、少し迷います。現場手当や資格手当が加わる形があるためです。
月額か年額かは、用途によって求められる形が違います。そのため、請求のときに確かめます。
手当を含めるかどうかでも額が変わります。この場合、何を含めた額かを備考に書きます。
賃金の請求が無ければ、この欄は空けます。手当の内訳まで書いて渡す必要はありません。
一方で、書くと決めたなら賃金台帳から写します。台帳が月ごとに閉じてあれば、探す時間は短く終わります。
建設業の退職証明書を解雇のときに書く
建設業の退職証明書は、解雇のときも同じ様式で書きます。事由を請求されていれば、その理由も含めて証明することとされています。
理由は、評価の言葉ではなく事実で書きます。就業規則のどの条項にあたるか、どの事実がそれにあたるか。
また、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、解雇の理由についての証明書を請求できる形があります。この場合、退職証明書とは別の場面になります。
判断に迷う事案では、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確かめてから交付します。
記録が残っていないときの伝え方
建設業の退職証明書を書けないことがあります。記録の保存期間を過ぎている場合です。
この場合、黙って空欄で出さず、何が確かめられて何が確かめられなかったかを伝えます。そのうえで、書ける範囲で交付します。
逆に、記録が残っているのに探すのに時間がかかっているだけなら、目安の日数を先に伝えます。本人の手続きにも期限があります。
建設業の退職証明書が求められる場面
建設業の退職証明書は、本人が何かの手続きで求められて請求してきます。
次の会社への提出
在籍していた期間と、担当していた職種が見られます。そのため、業務の種類とその事業における地位の欄が中心になります。
国民健康保険や国民年金の手続き
退職した日が分かるものとして、市区町村の窓口で求められます。使用期間があれば足りる場面が多くなります。
賃貸や融資の審査
前職の勤務の実態を確かめるために使われます。この場合、賃金の証明を求められることがあります。
失業給付までのつなぎ
離職票が届くまでの間に、退職した事実を示すために使われます。一方で、給付の手続きそのものには離職票が要ります。
建設業の退職証明書と離職票を混ぜない
窓口で並べて出されるので、会社の側でも取り違えが起きます。
出すところが違う
退職証明書は会社が作って本人に渡します。離職票はハローワークが交付し、会社は資格喪失の届と離職証明書を出す側になります。
使う場面が違う
失業給付の手続きには離職票が要ります。そのため、給付の話が出たら、退職証明書だけで足りるとは言いません。
届くまでの時間が違う
離職票は届くまでに日数がかかります。この場合、その間のつなぎとして退職証明書が使われます。
本人にどう説明するか
「こちらは会社が書くもの、あちらは役所から届くもの」。とはいえ、どちらが要るかは提出先に確かめてもらうのがいちばん確かです。
建設業の退職証明書を工期の区切りで備える
建設業では、工事の完成に合わせて人が動きます。
区切りの前に声をかける
本人から請求が来るのを待たなくても構いません。そのうえで、要るかどうかだけ聞いておくと、あとで急がずに済みます。
同じ書式で出す
人によって欄の埋め方が変わると、あとで見比べにくくなります。この場合、自社の様式を1つに決めて、そこから写します。
担当を決めておく
年度末や工期末は、ほかの書類も重なります。とはいえ、作るのは総務か工事部のどちらか、を先に決めておくだけで滞りません。
再発行の求めにも備える
紛失や、提出先が増えたときに、もう一度求められることがあります。一方で、控えが1部あれば、そのまま同じ内容で出せます。
建設業の退職証明書で出向と応援をどう書くか
建設業では、出向や応援で他社の現場に入っていた期間があります。
在籍していたのはどちらか
出向元に籍が残っていたなら、出向元が書きます。そのため、まず在籍していた会社がどちらかを確かめます。
期間を備考で補う
使用期間は在籍していた期間なので、出向していた分も含みます。この場合、いつからいつまでどこへ出向していたかを備考に書くと、読み取れる形になります。
応援は自社の勤務
応援で他社の現場に入っていた期間は、自社の勤務です。とはいえ、どの現場に入っていたかは、実務経験の証明を頼まれたときに要ります。
記録がどちらにあるか
出面表や入退場の記録が、出向先にしか残っていないことがあります。一方で、賃金台帳は払っていた側に残ります。探す前に、どちらの記録かを見分けます。
建設業の退職証明書を何日で出すか
期限は法令で日数が決まっているわけではありませんが、遅滞なく交付するものとされています。
目安を先に伝える
依頼を受けたときに、いつ渡せるかを伝えます。そのうえで、本人の手続きに期限があるなら、そちらを優先します。
記録がそろっていれば短い
名簿と賃金台帳が手元にあれば、作るのは長くかかりません。この場合、2営業日から3営業日で渡せます。
古い記録を探すときは長くなる
倉庫に綴じてある年度の分を出すと、日数がかかります。だからこそ、退職の手続きのときに1か所へまとめておきます。
渡し方を決める
退職後は郵送になることが多くなります。とはいえ、最終出勤日に渡せるなら、そのほうが早く終わります。
建設業の退職証明書に電子で対応するか
紙で作って渡す形が一般的ですが、やりとりは電子で進むことが増えています。
出す形と残す形を分ける
本人に渡すものは、提出先が受け付ける形にします。一方で、会社に残す控えは電子でも構いません。
押印を求められるか
提出先によって扱いが違います。そのため、依頼の受付で、押印が要るかどうかも一緒に聞きます。
送るときの宛先を確かめる
退職後は、社内のアドレスが使えません。この場合、本人が指定した連絡先を受付の欄に控えておきます。
建設業の退職証明書と建退共・CCUSの関係
退職に合わせて、ほかにも手続きが動きます。
建退共の証紙や掛金
退職金は建退共から本人に支払われる形です。そのため、退職証明書とは別の手続きになりますが、依頼が同じ日に重なります。
CCUSの就業履歴
登録した情報は本人のものとして残ります。この場合、会社が退職証明書に書き写す必要はありません。
3つを同じ日に案内する
退職証明書、建退共、CCUS。そのうえで、どれが会社の手続きで、どれが本人の手続きかを1枚で伝えると、あとの問い合わせが減ります。
社会保険の資格喪失
退職の日が資格喪失の日と結びつきます。一方で、退職証明書に書く退職の日と、届出に書いた日が食い違わないようにします。
建設業の退職証明書で退職の事由をどう書くか
請求があったときだけ書く欄ですが、書き方でいちばん迷うところです。
自己都合のとき
「一身上の都合により退職」で足ります。とはいえ、本人が別の書き方を希望している場合は、事実に反しない範囲で調整します。
契約期間の満了のとき
期間の定めのある契約が終わった形です。この場合、更新しなかった理由まで書く必要はありません。
会社都合のとき
事実で書きます。工事の完成による人員の整理、事業所の閉鎖。そのため、評価の言葉ではなく、起きたことを書きます。
書かないという選択
請求が無ければ、この欄は空けたまま交付します。だからこそ、受付でどの項目の請求があるかを聞いておきます。
建設業の退職証明書を受け取る立場で見る
自社が採用する側に回ると、同じ書面を受け取ります。
何を確かめるために求めるか
在籍していた期間と、担当していた職種です。そのため、それ以外の欄まで求めると、相手の会社の手間が増えます。
実務経験の確認は別に頼む
技術者として迎えるなら、実務経験証明書が要ります。この場合、前の会社に様式を渡して書いてもらう形になります。
本人にしか頼めない
会社どうしで直接やりとりするものではありません。一方で、様式と期限を本人に伝えておくと、話が早く進みます。
まとめ
建設業の退職証明書は、受付で実務経験証明書と分けるところがいちばんの分かれ目です。用途を1つ聞くだけで、そのあとの作業が決まります。
書けるのは5つの事項で、請求された項目だけを書きます。業務の種類には職種と工事の種類を、その事業における地位には役職と時期を入れると、証明として読めるものになります。
記録の保存期間を過ぎると書けません。退職の手続きのときに、名簿・賃金台帳・出面表・工事の記録を1か所に綴じておくと、何年か経ってからの依頼にも応えられます。
よくある質問
退職証明書と実務経験証明書はどちらを出せばよいですか。
目的が違います。施工管理技士の受検や、次の会社での技術者の要件に使うなら実務経験証明書です。退職した事実そのものを示すなら退職証明書になります。受付の時点でどちらかを聞いて分けます。
退職から5年経った人に頼まれました。書けますか。
記録が残っていれば書けます。労働者名簿や賃金台帳の保存期間を過ぎていると、確かめる材料がありません。その場合は、書ける範囲と書けない範囲を伝えたうえで出します。
保有していた資格も書いたほうが親切ではありませんか。
請求されていなければ書きません。書ける事項は5つに限られていて、請求されていない事項を書いてはならないとされています。資格そのものは、本人が合格証明書や免状で示せます。
賃金はどの形で書きますか。
用途によって、月額か年額か、手当を含めるかが変わります。請求のときに確かめて、何を含めた額かを備考に書きます。賃金台帳から写し、記憶で書かないところが分かれ目です。
解雇した社員から請求が来ました。事由も書くのですか。
事由の請求があれば、その理由も含めて証明することとされています。評価の言葉ではなく事実で書きます。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確かめてから交付します。