簡易型ICT活用工事は部分的な導入から
公開 2026年9月10日
目次7項目
ICT施工は、国の直轄工事ではかなり広がっています。令和5年度の実績では、直轄工事で87%まで来ているという数字が示されています。一般には、起工測量から出来形管理までを通して3次元で行う形が紹介されることが多くあります。
一方で、都道府県や政令指定都市の土工では23%にとどまっています。この差が、規模の小さい工事の実態を表しています。機器の費用、技術者の確保、3次元の設計データを起こす手間。いずれも小さい現場では重くなります。
ポイントはここです。簡易型ICT活用工事は、全部をやらなくてよい形として2020年から用意された入口です。
ここでは、簡易型ICT活用工事について、全面的な形との違い、選べる範囲、1件目に向く工程、そして次につなげる測り方を順に整理します。
簡易型ICT活用工事と全面的な形の違い
簡易型ICT活用工事は、3次元のデータを使う範囲が全面的な形と違います。工程の全部ではなく、一部だけを3次元にできます。
全面的な形では、起工測量、設計データの作成、施工、出来形管理、そして納品までを通して3次元で行います。どこか1か所でも対応できないと、通して成立しません。
簡易型では、この中のいくつかの工程だけを対象にできます。たとえば起工測量と出来形の計測だけを3次元にして、施工そのものは従来どおりの機械で行う、という形です。
必要な機器が減るぶん、1件目の負担が大きく下がります。測量だけであれば、機器を借りたり測量会社に外注したりする形でも成立します。
そのうえで、工事成績の加点が用意されている点も入口として効いています。簡易型では1点の加点という形で案内されており、小さい現場でも取り組む理由になります。
一方で、対象になる工種や条件は発注機関ごとに定められています。入札の段階で示される条件を見るのが確実で、同じ工種でも国と都道府県で扱いが違うことがあります。
あわせて、発注者の側も基準を簡素にする方向で見直しを進めています。中小への普及が進んでいない状況を受けたもので、要領の改定も続いています。いま難しいと判断した条件が、次の年には変わっていることがあります。
そのため、一度見送った場合も、年度が変わったら条件を見直しておく価値があります。前に調べたときの記憶のまま判断すると、機会を逃すことがあります。
簡易型ICT活用工事で選べる範囲
簡易型ICT活用工事では、どの工程を3次元にするかを選べます。全部をそろえる必要がないため、自社でできるところから始められます。
いちばん選ばれやすいのが、出来形の計測です。施工そのものは従来の機械で行い、できあがった形だけを3次元で測る形になります。機器を借りる、または測量会社に頼むことで成立します。
次に多いのが、起工測量です。着工前の地形を3次元で取っておくと、後の土量の計算にも使えます。基準となる面が残るため、工事が進んだ後でも比べられます。
一方で、ICT建機を使う施工は、簡易型では外すことが多くなります。機器の費用がいちばん大きい工程なので、ここを外せるかどうかが判断を左右します。
そのうえで、3次元の設計データをどうするかは工事によって変わります。発注者から提供される場合と、自社で起こす場合があり、後者では手間が増えます。
そのため、選ぶ順番としては「設計データが提供されるか」を先に確認し、提供されるなら計測の工程から、されないなら起工測量から入る形が現実的です。
設計データを自社で起こす場合は、外注するという手もあります。2次元の図面から3次元のデータを作る作業を請け負う会社があり、1件目はそこに頼んで進め方を見る、という入り方もできます。
自社でできるようになるかどうかは、受注が続くかどうかで決まります。年に1件なら外注、年に数件になるなら内製、という分かれ方が現実的です。
- 3次元の設計データが提供されるか はい出来形の計測から入る いいえ次へ
- 着工前の地形を測れる時期か はい起工測量から入る いいえ次へ
- 測量を外注しているか はい成果品の形式まで含めて依頼する いいえ機器を1件だけ借りて試す
提供されるデータと時期で、入りやすい工程が決まる
簡易型ICT活用工事の1件目に向く工程
簡易型ICT活用工事の1件目は、失敗しても工期に響かない工程を選ぶと安全です。慣れていない作業を工程の要所に置くと、遅れがそのまま全体に出ます。
向いているのは、出来形の計測です。施工が終わった後の作業なので、多少時間がかかっても後ろの工程を止めません。やり直しが利く位置にあります。
避けたいのは、施工そのものを置き換える形です。ICT建機の操作に慣れていない状態で工程の真ん中に入れると、日々の進捗に直接響きます。
1件目は「できるかどうかを確かめる」ことが目的で、時間を短くすることではありません。ここを取り違えると、効果が出なかったという結論だけが残ります。
そのうえで、従来の方法と並行してやっておくと判断の材料になります。手間は増えますが、数字を比べられる形が手に入ります。
一方で、並行は1件だけで十分です。2件目からは片方に絞らないと、負担だけが残ります。1件目の記録を残しておけば、2件目以降の判断はその記録でできます。
あわせて、1件目は人を絞るほうが進みます。現場で1人、事務所で1人。この2人が通して担当すると、引き継ぎで止まりません。関わる人を増やすのは、手順が固まってからのほうが速く進みます。
そのうえで、1件目でうまくいかなかった場合も記録は残ります。何が原因で止まったのかが書いてあれば、次に条件が変わったときに判断できます。やってみて合わなかった、という結果にも価値があります。
簡易型ICT活用工事で時間を測る
簡易型ICT活用工事を1件やったら、かかった時間を分けて記録しておくと次につながります。合計だけを見ても、どこが重かったのかが分かりません。
分けておくと役に立つのは4つです。準備の時間、計測の時間、処理の時間、成果品にする時間。この4つで分かれば、次の工事で何を変えればよいかが見えます。
準備の時間には、要領を読む時間、範囲を決める時間、設計データを用意する時間が入ります。1件目はここがいちばん長くなりますが、2件目からは大きく減ります。
計測の時間は、現地での作業です。従来の方法と比べる対象になるのは、主にここです。
処理の時間は、点の集まりから不要なものを取り除き、設計と比べる作業です。この工程は現場ではなく事務所で発生するため、誰がやるのかを決めておかないと誰もやらない状態になります。
成果品にする時間は、要領の形式に整える作業です。電子納品の分類とも重なるため、写真の整理と合わせて考えると全体が見えます。
簡易型ICT活用工事とAIが助けられる範囲
簡易型ICT活用工事の周りでAIが助けられるのは、調べることと、整理することです。現場の作業そのものは変わりません。
調べる側では、要領や発注者の案内から該当箇所を探す使い方があります。ICTに関わる基準類は分量が多く、自社の工種に関わる部分はその一部です。渡して当たりをつけさせると、読む範囲が絞れます。
整理する側では、点群の処理で自動の判別が使われています。地面とそれ以外を分ける処理は、多くのソフトに機能として入っています。
ただし、判別の結果を断面で確かめる工程は残ります。草が密な場所、低い仮設物、水面。いずれも判別が難しい対象です。
一方で、どの工程を3次元にするかという判断は任せられません。自社の機器、人の経験、工事の条件。いずれも現場を知っている人が決める領域です。
そのため、道具に期待するのは「調べる時間」と「処理の時間」を短くすることまでにしておくと、期待とずれずに済みます。
簡易型ICT活用工事で社内の役割を決める
簡易型ICT活用工事では、誰が何をするかを先に決めておくと止まりません。現場の作業と事務所の作業に分かれるためです。
現場で発生するのは、範囲の確認と計測です。従来の測量と同じ感覚で進められる部分が多く、慣れている人なら1日で流れをつかめます。
事務所で発生するのは、データの処理と成果品づくりです。点の集まりから不要なものを取り除き、設計と比べ、要領の形に整える。ここは現場からは見えない作業になります。
この2つを同じ人が担当すると、現場が忙しい時期に事務所の作業が止まります。逆に別の人にすると、引き継ぎの場所で止まります。どちらの形をとるかを先に決めておくと、途中で慌てません。
そのうえで、1件目は処理の工程に何日かかるかが読めません。余裕を多めに見ておいて、実際にかかった日数を記録しておくと、2件目からの計画が立てられます。
一方で、処理を外注する形もあります。測量会社に成果品まで含めて頼めば、社内の作業は範囲の確認だけになります。費用と自社に残る経験を比べて決める部分です。
簡易型ICT活用工事から次につなげる
簡易型ICT活用工事は、1件で終わらせると効果が小さくなります。1件目の負担が大きく、2件目から軽くなる構造だからです。
1件目で残るのは、要領の読み方、範囲の決め方、処理の手順、そして誰がどの作業をするかという役割です。これらは次の工事でもそのまま使えます。
そのため、1件目が終わった時点で手順を1枚にまとめておくと、2件目の立ち上がりが変わります。細かく書く必要はなく、つまずいた場所と、その対処だけ書いてあれば足ります。
そのうえで、2件目では範囲を1つ広げる形が自然です。計測だけだったところに起工測量を足す、起工測量だけだったところに出来形の計測を足す、という進め方です。
一方で、広げるかどうかは受注する工事の種類で決まります。対象になる工事が続かなければ、経験が途切れてしまいます。発注者がどの範囲でICTの工事を出しているかを見ておくと、計画が立てやすくなります。
最後に、制度は見直しが続いています。簡易型の条件も、対象の工種も変わっていく前提で見ておくほうが安全です。その年の要領と発注機関の案内で確かめる習慣を付けておくと、情報が古いまま進むことを避けられます。
全面的な導入を検討する
- ICT建機の費用を調べる
- 技術者の確保を考える
- 設計データの手間を見る
- 規模が合わず見送る
検討だけで終わる
簡易型から入る
- 出来形の計測だけを3次元に
- 機器は借りて1件試す
- 時間を工程ごとに記録
- 2件目で範囲を1つ広げる
経験と手順が残る
よくある質問
簡易型ICT活用工事は、どの工事でも選べますか。
発注者が用意している工事で選べます。対象の工種や条件は発注機関ごとに定められているため、入札の段階で示される条件を見るのが確実です。同じ工種でも、国の工事と都道府県の工事では扱いが違うことがあります。
全面的なICT活用工事と何が違いますか。
3次元のデータを使う範囲が違います。全面的な形では起工測量から出来形管理まで通して3次元で行いますが、簡易型では一部の工程だけを3次元にできます。そのぶん必要な機器と手間が小さくなります。
工事成績にはどれくらい影響しますか。
簡易型では1点の加点が用意されている、という形で案内されています。加点そのものより、**次の工事で全面的な形を選べる経験が残る**ことのほうが大きいと考えている会社が多くあります。具体の運用は発注機関の案内で確認してください。