3次元出来形管理|測る前に決めることがある

公開 2026年9月6日

目次8項目

出来形管理は、施工したものが設計どおりの形になっているかを確かめる作業です。一般には、決められた断面で寸法を測り、管理図表と写真にまとめて提出する形が広く使われています。

近年はここに、3次元の計測技術を使う方法が加わっています。国土交通省は3次元計測技術を用いた出来形管理の要領を出しており、対象の工種も広がってきました。

ポイントはここです。3次元出来形管理で成否を分けるのは計測の機器ではなく、測る前に何を決めておくかです。

ここでは、3次元出来形管理について、従来との違い、測る前の準備、計測の方式、そして成果品までを順に整理します。

3次元出来形管理と従来の方法の違い

3次元出来形管理は、測る点の数が従来と大きく変わります。決められた断面だけでなく、面として測る形になります。

従来は、管理の断面を決めて、そこで寸法を測っていました。測る点が少ないぶん作業は短く済みますが、断面と断面のあいだで何が起きているかは分かりません。

3次元では、レーザースキャナや写真から点の集まりを取り、面として比べます。広い範囲をまとめて測れるため、人が立ち入る回数も減ります。高い場所を測る作業が減る点は、安全の面でも挙げられています。

一方で、出てくるデータの量が増えます。点の集まりそのものは、そのままでは判断の材料になりません。設計のデータと比べて、どれだけ違うかを出す工程が要ります。

そのため、3次元にすると「測る時間」は減りますが、「比べて整理する時間」が新しく発生します。全体として短くなるかどうかは、この後半の工程をどう組むかで決まります。

そのうえで、従来の方法がなくなるわけではありません。発注者が示す条件によって、どちらで管理するかが決まります。混在する前提で、両方の手順を持っておく形が現実的です。

従来の出来形管理

  1. 管理する断面を決める
  2. 現地で寸法を測る
  3. 管理図表に記入する
  4. 写真を撮って台帳にする

測る点は少ない

3次元出来形管理

  1. 3次元の設計データを作る
  2. 面として計測する
  3. 設計データと比べる
  4. 要領の形式で成果品にする

測る前の準備が増える

3次元出来形管理で減るのは測る時間。増えるのは準備と整理の時間

3次元出来形管理で測る前に決めること

3次元出来形管理では、計測を始める前に決めておくことがいくつかあります。ここが決まっていないと、測ったデータが使えません。

1つめは、3次元の設計データです。比べる相手がなければ差は出せません。2次元の図面から3次元のデータを起こす作業が、最初の関門になります。

2つめは、管理する項目と許容する差です。どの寸法を管理するのか、どこまでの差を許すのか。従来の管理基準に沿って決める形が一般的ですが、面で測るぶん判断する場所が増えます。

3つめは、計測の方式です。レーザースキャナ、写真から起こす方法、衛星測位を使う方法などがあり、工種と現場の条件で向き不向きが変わります。

この3つのうち、1つめでつまずく会社がいちばん多くあります。設計データが2次元でしか来ない場合、3次元に起こす作業を誰がやるのかという話になるためです。

そのため、発注者から3次元の設計データが提供されるかどうかを、着手前に確認しておくと段取りが変わります。提供される場合とされない場合では、必要な手間がまったく違います。

一方で、決めごとは工事ごとに変わります。特記仕様書で指定されることが多いため、着手前に監督員と確認しておくのがいちばん確実です。

あわせて、誰がどの工程を担当するかも決めておきます。計測は現場、処理は事務所、成果品は別の担当という分かれ方になりやすく、引き継ぎの場所で止まることが多くあります。

特に処理の工程は、現場から見えにくい場所で発生します。計測が終わった時点で仕事が終わったつもりになっていると、数日たってから「まだ終わっていない」と分かる形になります。

  • 2次元の設計図 3次元に起こす 3次元設計データ提供されない場合はここが手間
  • 現地 レーザーや写真で計測 点の集まり面としてまとめて測れる
  • 点の集まりと設計データ 差を計算する 出来形の評価許容する差を先に決めておく
  • 評価の結果 要領の形式に整える 電子成果品発注者ごとに分類が違う
3次元出来形管理の流れ。1つめが用意できるかで、かかる手間が大きく変わる

3次元出来形管理が中小に広がりにくい理由

3次元出来形管理は、国の直轄工事ではかなり進んでいます。一方で、規模の小さい工事にはまだ広がっていません。

令和5年度の実績では、国の直轄工事で87%まで来ているのに対し、都道府県や政令指定都市の土工では23%にとどまっている、という数字が示されています。この差が、いまの実態をよく表しています。

広がりにくい理由はいくつかあります。機器と技術者の確保、3次元の設計データを起こす手間、そして小さい工事では効果が出にくいこと。面積が小さいと、準備の手間が測る時間の短縮を上回ります。

こうした状況に対して、簡易型のICT活用工事という形が2020年から用意されています。3次元のデータを部分的に使う形で、工事の成績に加点が付く仕組みです。

そのため、規模の小さい会社が入るなら、いきなり全面的に導入するより簡易型から試す道すじが現実的になります。この点は別の記事で詳しく扱います。

一方で、発注者の側も基準を簡素にする方向で見直しを進めています。そのため、いま難しくても数年後には条件が変わっている可能性があります。

3次元出来形管理の計測の方式

3次元出来形管理で使う計測の方式は、いくつかに分かれます。工種と現場の条件で向き不向きが変わります。

レーザースキャナは、広い範囲を短時間で測れます。地上に据える形と、機械に載せる形、空から測る形があります。面としての精度が出やすい一方、機器の費用は大きくなります。

写真から起こす方法は、撮影した多数の写真から形を計算します。機器の負担が小さく、小回りが利きます。ただし、影になる部分や、模様の少ない面では精度が落ちます。

衛星測位を使う方法は、機械そのものに測位の装置を付けて、施工しながら形を記録します。土工では広く使われている形です。

どれを選ぶかは、測る対象の形と広さで決まります。そのうえで、要領では信頼性を確かめる手順も定められているため、機器を選ぶ段階で要領に適合するかを確認しておく必要があります。

一方で、機器を自社で持つかどうかは別の判断です。借りる形もあり、測量そのものを外注している会社も多くあります。1件だけ借りて試すところから始めると、判断の材料が増えます。

外注する場合も、成果品の形式まで含めて依頼しておくと後で作り直しになりません。測っただけのデータを受け取っても、要領の形に整える作業が自社に残ります。どこまでを頼むのかを、見積の段階ではっきりさせておくと食い違いが出ません。

方式向く場面気をつける点
地上のレーザースキャナ構造物・のり面据え替えの回数が増えると時間がかかる
空から測る方式広い土工天候と飛行の条件に左右される
写真から起こす小規模・部分的影と模様の少ない面で精度が落ちる
衛星測位を使う機械土工の施工中施工と計測が同時に進む

3次元出来形管理と成果品の形

3次元出来形管理で測ったデータは、最後に成果品としてまとめます。ここで要領に沿った形式が求められます。

提出するのは、点の集まりそのものだけではありません。設計のデータ、計測のデータ、そして評価の結果。どれをどのフォルダに入れるかまで決まっていることが多くあります。

分類の方法は発注者ごとに違います。国の要領に沿う場合と、都道府県が独自に定めている場合があり、同じ工種でも提出の形が変わります。

そのため、着手の段階で提出の形式を確認しておくと、後でそろえ直す作業が減ります。測り終えてから形式を知ると、整理の作業が最後に集中します。

あわせて、電子成果品のチェックシステムを使って事前に確認しておく形が広く使われています。検査の段階でエラーが出ると、再提出になります。

一方で、形式の確認は毎回必要です。要領は改定されるため、前の工事と同じだと思って進めると食い違いが出ます。改定の版を見ておく習慣を付けておくと安全です。

3次元出来形管理を写真と組み合わせる

3次元出来形管理を入れても、工事写真がなくなるわけではありません。測るものと、記録として残すものは別だからです。

面として測れるのは、形が残っている部分だけです。埋め戻してしまう配管、隠れてしまう鉄筋、施工の過程そのもの。これらは従来どおり写真で残すことになります。

そのうえで、計測のデータと写真をつないでおくと、後から説明しやすくなります。同じ部位について、形の数値と施工の状況の両方を示せるためです。

つなぎ方としては、撮影の黒板に測点や管理断面の番号を入れる形があります。番号がそろっていれば、計測の結果と写真を突き合わせられます。

一方で、全部の写真に入れる必要はありません。計測の対象になっている部位、差が大きく出た部位に絞ると、手間と効果のつり合いが取れます。

最後に、写真の整理そのものは電子納品の中でいちばん時間がかかる作業として挙げられています。3次元のデータが増えるぶん、写真の側の整理を軽くしておくと全体が回ります。

3次元出来形管理を工程に組み込む

3次元出来形管理は、工程表に位置を持たせておかないと後回しになります。測る作業も、処理する作業も、日々の施工とは別の時間が要るためです。

工程表に置いておくと良いのは3つです。着工前の計測、途中の段階での計測、そして出来形の計測。このうち着工前は、逃すと二度と取れません。

途中の計測は、工種によっては省けます。一方で、土工のように形が大きく変わる工事では、途中を取っておくと差が出たときに原因の場所を絞れます。

そのうえで、処理と成果品づくりの時間も見込んでおきます。計測が終わった日を完了とみなすと、後半の作業が工程の外に落ちます。事務所の作業として、別に日数を置いておく形が確実です。

一方で、天候に左右される点は織り込んでおく必要があります。空から測る方式は特に条件が限られるため、予備の日を1日置いておくと工程が崩れにくくなります。

3次元出来形管理を小さく試す順序

3次元出来形管理は、いきなり全面的に入れないほうが判断がつきます。測る前の準備でつまずくことが多いためです。

続きやすいのは次の形です。

  1. 自社の工事が対象になるかを、特記仕様書と監督員への確認で押さえる
  2. 3次元の設計データが提供されるかを確かめる
  3. 計測の機器を1件だけ借りて、従来の方法と並行して測る
  4. かかった時間を、準備・計測・整理に分けて記録する

3つめの「並行して測る」が判断の鍵になります。従来の方法と両方やると手間は増えますが、比べる材料が手に入ります。

4つめで時間を分けて記録しておくと、次の判断が具体的になります。計測が速くても整理に時間がかかるなら、効果が出るのは規模の大きい工事だけ、という見当が付きます。

そのうえで、簡易型のICT活用工事という入口も用意されています。全面的に使わなくても加点の対象になるため、最初の1件としては入りやすい形です。

一方で、対象の工種や条件は制度の見直しで変わります。そのため、判断の材料にする数字は、その年の要領と発注者の案内で確かめるほうが確実です。

よくある質問

3次元出来形管理は、どの工事で使えますか。

国土交通省は工種ごとに要領を出しており、土工のほか舗装、路面切削、河川浚渫などに広がっています。自社の工事が対象かどうかは、発注者が示す特記仕様書で決まります。着手前に監督員と確認しておくと手戻りがありません。

機械を買わないと始められませんか。

計測の機器は借りる形もあり、測量そのものを外注している会社も多くあります。自社で全部そろえる前提にすると判断が重くなるため、**1件だけ借りて試す**ところから始める形が現実的です。

従来の出来形管理と何が違いますか。

測る点の数が大きく変わります。従来は決められた断面で測りますが、3次元では面として測るため、全体の形が分かります。そのぶん、測る前に管理する断面や許容する差を決めておく必要が出てきます。

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