建設業の健康診断とは?対象者と保存期間

公開 2026年9月1日

目次8項目

同じ会社の職人でも、受ける健康診断の種類が人によって違う。建設業でこれが起きるのは、扱う物質や作業の内容で必要な健診が変わるためです。

一般には、常時使用する労働者が受ける一般健康診断と、特定の物質や作業に就く人が受ける特殊健康診断の2つに分かれます。この2つは受ける理由も保存の年数も別に決まっているため、まとめて年1回で済ませていると、特殊健診の周期を外すことになります。

ポイントはここです。建設業の健康診断は、人ごとではなく作業ごとに受ける種類が決まります

ここでは、2つの健診の違い、対象になる人の絞り方、項目と費用の扱い、そして記録の保存年数を順に整理します。

建設業の健康診断は一般健診と特殊健診に分かれる

建設業の健康診断は、労働安全衛生法にもとづく一般健康診断と、特定の作業に就く人が受ける特殊健康診断に分かれます。片方だけを行っていても、もう片方の義務は残ります。

一般健康診断

  • 常時使用する労働者が対象
  • 雇入時と年1回
  • 結果は本人へ通知
  • 記録は5年保存

特殊健康診断

  • 特定の業務に就く人が対象
  • 多くは6か月以内ごと
  • 物質ごとに項目が違う
  • 保存年数は物質による
受ける理由も、保存の年数も別々に決まっている

左は雇っている人全員に関わる話で、右は作業の内容で決まる話です。保存の年数も5年から40年まで開くため、同じファイルにまとめると廃棄の判断ができません。

一般健康診断は全員が対象になる

常時使用する労働者には、雇い入れたときと年1回の健康診断が求められます。日給で働いている職人でも、雇用契約を結んでいれば対象です。

パートや短時間の人については、所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上かどうかが目安になります。賃金の払い方ではなく雇用しているかどうかで決まる点は、年次有給休暇と同じ考え方です。

特定業務従事者は6か月ごとになる

深夜業や、著しく暑熱・寒冷な場所での業務に常時従事する人は、年1回ではなく6か月以内ごとの健診になります。

建設業では、夏場の屋外作業や夜間工事が該当する場面があります。そのため工事の内容が変わったときに、周期も見直す対象になります。

特殊健康診断は作業で決まる

石綿、有機溶剤、鉛、粉じんといった物質を扱う作業に就く人は、それぞれに定められた特殊健康診断を受けます。

受ける種類は人ではなく作業の内容で決まるため、工事の受注段階で確認しておくと手配が間に合います。

建設業の健康診断で対象になる人の洗い出し

建設業の健康診断で誰に何を受けさせるかは、雇用の形と作業の内容の2段階で決まります。順に切り分けていくと、迷う場面が減ります。

  1. 自社と雇用契約を結んでいるか はい次へ いいえ対象外(本人か所属会社が実施)
  2. 常時使用する労働者にあたるか はい一般健診の対象 いいえ所定労働時間を確認
  3. 粉じん作業に常時従事するか はいじん肺健診も対象 いいえ次へ
  4. 石綿・有機溶剤・鉛などを扱うか はい該当する特殊健診も対象 いいえ一般健診のみ

雇用の形で一般健診、作業の内容で特殊健診が決まる

建設業で健康診断の対象を絞る順序

作業の内容は工事ごとに変わるため、受注のたびに見直す形になります

一人親方は会社の義務の対象から外れる

請負契約の一人親方は自社の労働者ではないため、会社が健診を行う義務はありません。本人が自分で受けるか、加入している団体の健診を使う形になります。

ただし現場に入れる条件として健診の結果を求める元請もあります。契約の形と現場の入場条件は別の話なので、受注のときに確かめておきます。

応援で来る人は所属会社が行う

応援会社から来る作業員は、その会社が雇用しているため、健診もその会社が行います。自社の管理表に載せる必要はありません。

一方で、その人が特殊健診の対象になる作業をするなら、受けているかどうかを確かめる場面が出てきます。安全書類でその確認を求める元請もあります。

短期の雇用でも雇入時健診は行う

数か月だけの雇用でも、常時使用する労働者にあたるなら雇入時の健康診断が必要です。短期だからという理由で省くことはできません。

ただし入社前3か月以内に受けた健診の結果を本人が持っていれば、その項目については省ける場合があります。

建設業の健康診断の項目

雇入時と定期では、省略できる項目に違いがあります。定期健診では医師の判断で省ける項目がありますが、雇入時は原則として省略できません。

雇入時の健康診断

  • 雇い入れるときに1回
  • 項目は原則として省略できない
  • 3か月以内の結果があれば省ける
  • 結果は個人票にまとめる

定期の健康診断

  • 1年以内ごとに1回
  • 医師の判断で省ける項目がある
  • 特定業務は6か月以内ごと
  • 結果は個人票に追記する
雇入時は省略できず、定期は医師の判断で省ける項目がある

雇入時の健診は、その人を配置できるかどうかを判断するために行います。そのため省略の余地が狭く、定期健診とは位置づけが違います。

医師の判断で省けるかどうかは、健診機関ではなく医師が決めます。会社の側で「今年は省く」と決められるものではありません。

項目雇入時定期
既往歴・業務歴行う行う
自覚症状・他覚症状行う行う
身長・体重・腹囲・視力・聴力行う医師の判断で省略可
胸部エックス線行う医師の判断で省略可
血圧・貧血・肝機能・血中脂質・血糖行う医師の判断で省略可
尿検査行う行う
心電図行う医師の判断で省略可

入社前3か月以内に受けた健診の結果があれば、その項目を省ける場合があります

受診の前に業務歴を確認する

既往歴とあわせて業務歴を聞く項目があります。以前に粉じんや石綿を扱う作業をしていた人は、そこで分かります。

労働者名簿の履歴の欄に前職の職種を残しておくと、受診のたびに聞き直さずに済みます。

結果は本人に通知する

健診の結果は、異常の有無にかかわらず本人に通知します。通知した日を記録に残しておくと、行ったことを示せます。

結果は本人の個人情報にあたるため、見られる人を必要な範囲に限ります。

所見があった人は医師の意見を聴く

異常の所見があった人については、就業上の措置について医師の意見を聴きます。その意見を個人票に記載する形になります。

意見を聴いただけで終わらせず、配置や作業時間をどう調整したかまで記録に残しておきます。

建設業の特殊健康診断で多いもの

特殊健康診断は、工事の受注から作業を始めるまでの間に手配します。作業に就いてから慌てると、間に合わない場面が出ます。

  1. 1 受注 工事の内容を確認
  2. 2 物質の特定 石綿・有機溶剤など
  3. 3 対象者の選定 作業に就く人を決める
  4. 4 作業前の健診 就く前に受けさせる
  5. 5 以後の周期 多くは6か月ごと
特殊健康診断は、工事の受注から作業前までの間に手配する

物質の特定は、設計図書や事前調査の結果から行います。解体や改修の工事では、着工前の調査でしか分からない場合もあります。

そのため調査の結果が出た時点で、健診の手配に入る流れにしておきます。

健診の種類対象になる作業周期
じん肺健康診断粉じん作業管理区分により1年または3年以内ごと
石綿健康診断石綿等を取り扱う作業6か月以内ごと
有機溶剤健康診断塗装など有機溶剤を扱う作業6か月以内ごと
鉛健康診断鉛を扱う作業6か月または1年以内ごと
振動障害の健診チェーンソーなど振動工具6か月以内ごと

特殊健康診断は、作業に就く前にも受ける形になっているものが多くあります。

石綿の事前調査と健診はつながっている

解体や改修の工事では、着工前に石綿の有無を調査します。そこで石綿が見つかれば、作業に就く人が石綿健診の対象になります。

調査の結果が健診の手配の起点になるため、調査を外注している場合は結果を受け取る期限も決めておきます。

振動工具は使用時間の記録も残す

チェーンソーや削岩機といった振動工具を扱う人は、健診とあわせて1日の使用時間を記録に残します。

使用時間を管理していないと、健診の結果に所見が出たときにどこまで作業を減らすかの判断ができません。

有機溶剤は作業環境測定とセットになる

塗装や防水の作業では、有機溶剤の健診に加えて作業環境測定が関わります。測定の結果で区分が変わると、必要な対策も変わります。

健診の結果と測定の結果を並べて見ると、特定の作業場所で所見が集まっていることに気づける場合があります。

建設業の健康診断の費用と受診時間の扱い

費用はどちらの健診も事業者が負担しますが、受診にかかった時間の扱いは異なります。

一般健康診断

  • 費用は事業者が負担
  • 受診時間の賃金は労使で協議
  • 賃金を払う形が望ましい
  • 所定内に受けさせる会社が多い

特殊健康診断

  • 費用は事業者が負担
  • 受診時間は労働時間として扱う
  • 時間外なら割増の対象
  • 業務の遂行に不可欠なため
費用は同じでも、受診時間の扱いに差がある

特殊健診は業務そのものに必要な健診であるため、受診の時間は労働時間になります。所定の時間を超えて受診した場合は、割増賃金の対象になります

一般健診の受診時間については、賃金を払うことが望ましいとされています。所定労働時間の中で受けさせる形にしている会社が多く見られます。

現場の工程に合わせて日程を組む

工期の終盤に人手が集まる現場では、その時期に健診を入れると調整が難しくなります。工程表を見ながら、比較的余裕のある時期に日程を置きます。

期限が決まっている以上、後ろに寄せると選べる日が減ります。そのため期限から逆算して、早めに枠を押さえておきます。

巡回健診を使うと現場が止まらない

健診車に来てもらう巡回健診を使うと、移動の時間がなくなります。人数がまとまる会社では、費用の面でも有利になる場合があります。

現場に来てもらう場合は、駐車の場所と受診の順番を先に決めておきます。

未受診が続く人には個別に日程を出す

まとめて実施した日に来られなかった人が、そのまま未受診で残ることがあります。その人には個別に日程を出して、受診まで追いかけます。

未受診のまま次の期限が来る状態を作らないようにしておくと、記録に空白が出ません。

建設業の健康診断の結果をどう使うか

健診は受けさせて終わりではなく、所見があった人への対応まで含めて1巡になります。

  1. 1 結果の受領 個人票にまとめる
  2. 2 本人へ通知 結果を渡す
  3. 3 医師の意見 所見のある人について聴く
  4. 4 就業上の措置 配置や時間を調整
  5. 5 保健指導 必要な人に行う
健康診断は、受けたあとの判断までが1巡になる

医師の意見と就業上の措置は、所見があった人について進めます

高所作業の可否を先に決めておく

血圧やめまいに関わる所見があった場合、高所での作業をどうするかが問題になります。その場で判断すると、人によって扱いが変わります。

医師の意見をもとに、どの所見でどこまで制限するかを決めておきます。判断の基準を先に決めておくと、現場での調整が早くなります。

熱中症のリスクがある人を把握する

夏場の屋外作業では、健診の結果が熱中症のリスクの判断に使えます。持病や服薬の状況を把握しておくと、配置や休憩の取り方を変えられます。

本人の同意の範囲を確かめたうえで、必要な範囲だけを現場の管理者に伝える形にします。

結果を現場の安全衛生計画に反映する

所見の傾向が分かれば、安全衛生計画に反映できます。腰痛の所見が多い工種があれば、作業の方法を見直す材料になります。

個人が分からない形に集計して、安全衛生委員会の議題として扱う形が広く使われています。

建設業の健康診断の記録の保存期間

建設業の健康診断の記録は、種類によって保存の年数が大きく違います。まとめて同じ扱いにすると、必要な記録を早く捨ててしまいます。

  • 一般健康診断 5年 個人票を5年
  • 有機溶剤・鉛 5年 個人票を5年
  • じん肺健康診断 7年 じん肺健康診断記録を7年
  • 石綿健康診断 40年 従事しなくなった日から40年

石綿は発症までの期間が長いため、従事しなくなった日から40年という年数になっています。40年という年数は、担当が何度も代わる長さです。個人の記憶ではなく仕組みで残す必要があります。

種類ごとに保管の場所を分ける

保存の年数が違う記録を同じファイルに綴じると、廃棄のときに区別できません。種類ごとにファイルを分けて、背表紙に期限を書いておきます。

石綿のように長期の記録は、別の場所で管理する形もあります。移転や事務所の整理で失われないよう、保管の場所を規程に書いておきます。

退職した人の記録も残す

退職した人の記録も、保存の年数を満たすまで残します。石綿の健診記録は、退職後に本人から求められる場面があります。

会社を解散する場合の扱いについても、所轄の労働基準監督署に確かめて決めておきます。

個人情報として扱いを決めておく

健診の結果には病歴や検査の数値が含まれます。見られる人を必要な範囲に限り、鍵のかかる場所に保管します。

現場の管理者に伝える範囲も決めておきます。就業上の措置に必要な範囲を超えて共有しない形にします。

建設業の健康診断を受診管理表で追いかける

建設業の健康診断は種類ごとに周期が違うため、人と種類の表で追いかける形になります。

  1. 1 対象の洗い出し 雇用と作業から決める
  2. 2 受診の予約 期限の1か月前に手配
  3. 3 受診 結果を受け取る
  4. 4 個人票に記載 医師の意見も残す
  5. 5 次回の期限 管理表に書き入れる
受診管理表は、次回の期限を書き入れるところまでが1巡

受診した記録を残すだけでは、次に何をすればよいかが分かりません。次回の期限まで書き入れて、はじめて追いかけられる表になります。

期限の1か月前に手配を始める

期限が来てから予約すると、希望の日が取れない場合があります。1か月前を目安に手配を始める形にしておきます。

管理表で期限の近い人が上に出るようにしておくと、毎月見るだけで手配の対象が分かります。

未受診の人を色で分ける

期限を過ぎた人と、期限が近い人を色で分けておきます。一覧を開いた瞬間に、手を打つ対象が分かります。

色で分けるだけで、毎月の確認が数分で終わります。

現場の書類とつなげておく

新規入場者調査票では、健診の受診状況を書く欄があります。会社の管理表から転記する形にしておくと、聞き直さずに済みます。

会社の管理表を出どころにしておくと、現場に出す書類との食い違いが起きません。

様式は健康診断受診管理表テンプレート、業務歴を残す労働者名簿テンプレートからダウンロードできます。

よくある質問

建設業の健康診断は、いつ受けさせるのですか。

常時使用する労働者を雇い入れるときと、その後1年以内ごとに1回という周期が基本になります。深夜業を含む業務など特定の業務に常時従事する人は、6か月以内ごとに1回という周期になります。

一人親方の健康診断はどう扱いますか。

一人親方は自社の労働者ではないため、会社に受診させる義務はありません。現場によっては入場の条件として健診の結果を求められることがあり、その場合は本人が受けた結果を提示してもらう形が一般的です。

石綿を扱う工事に入った人の記録は、いつまで保存しますか。

石綿健康診断個人票は、その労働者が事業場で常時石綿等を取り扱う業務に従事しないことになった日から40年間の保存が定められています。一般の定期健康診断の記録とは年数が大きく違うため、保管の場所を分けておくと処分の判断で迷いません。

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