工事経歴書の作り方|工事台帳から整理する手順

公開 2026年9月19日

目次8項目

工事経歴書は、決算変更届や経営事項審査のたびに作る書類です。作り方が難しいというより、その年の工事を後から思い出すのが難しい書類です。

一般には、工事台帳から抜き出して作ります。とはいえ工事台帳は原価を管理するための形になっていて、工事経歴書が求める並びとは違います。そのため、業種別に分ける、元請と下請を分ける、完成と未成を分けるという3つの切り分けが、転記の直前にまとめて発生します。

ここでは、工事経歴書を年度末にまとめて作らずに済ませる手順を整理します。

工事経歴書で手が止まるのは3か所

工事経歴書を年度末にまとめて作ると、次の3つで止まります。

止まるところなぜ止まるか
業種の切り分け1つの工事に複数の業種が混ざっている
配置技術者誰を付けたかが工事台帳に残っていない
完成と未成の別決算日をまたいだ工事の扱いを都度調べる

ポイントはここです。工事が終わった月のうちに1行足しておくと、年度末の作業がほぼ転記だけになります。 思い出す作業がなくなるためです。

  1. 1 工事が完成 その月のうちに
  2. 2 整理表に1行 業種・元下・技術者
  3. 3 決算後に確認 完成と未成を分ける
  4. 4 公式様式へ転記 手引きで順序を確認
年度末にまとめず、工事が終わるたびに1行ずつ足していく

工事経歴書に要る項目と、その取り出し元

工事経歴書が求める項目は、社内のどこかにはあります。とはいえ1か所にまとまっていないため、取り出し元を決めておくと探す時間が減ります。

項目取り出し元
注文者工事請負契約書・注文書
元請・下請の別契約の相手が発注者か元請か
工事名契約書の工事名(略さない)
工事現場の所在地契約書・現場の住所
配置技術者施工体制台帳・社内の配置記録
請負代金の額契約書と変更契約の合計
工期(着工・完成)契約書と実績
完成・未成の別決算日時点の状態

配置技術者がいちばん抜けます。工事台帳は原価の器なので、誰を付けたかは残りません。この場合、工事が終わった時点で書いておくと、あとで探さずに済みます。

配置技術者は、工事の途中で交代していることもあります。そのため、いつからいつまで誰が付いていたかを書いておくと、あとで聞かれたときに答えられます。施工体制台帳を作っている工事であれば、そこから写せます。作っていない規模の工事では、社内の配置記録か、現場に出した辞令や通知が元になります。

工事台帳に残るもの

  • 原価の内訳
  • 請負代金の額
  • 着工と完成の日

台帳に残らないもの

  • 配置技術者
  • 元請・下請の別の判断
  • 業種の切り分け
台帳から写すだけでは埋まらない欄がある。ここが年度末に手が止まる原因

もう一つ抜けやすいのが、変更契約を含めた請負代金の額です。当初契約の額だけを控えていると、追加や変更が入った工事で数字が合いません。一方、工事台帳には変更後の金額が入っていることが多いので、台帳から写すときに当初契約か変更後かを確かめてから書きます。

工事名は略さずに書き写す

社内では「○○ビル」で通っていても、契約書の工事名は「○○ビル新築工事」のように正式な名称になっています。一方、整理表に略称で書いてしまうと、転記のときに契約書を開き直すことになります。

工事現場の所在地も同じです。現場では「○○市の現場」で通じますが、書類には住所が要ります。契約時点で分かっているものなので、その場で書き写しておくと、年度末に調べ直す作業がなくなります。

業種の判断も、契約の段階で済ませておくと楽になります。1つの工事に複数の業種が混ざっている場合、どの業種として計上するかは契約の内容から判断することになります。とはいえ、判断に迷うものは許可行政庁の手引きに考え方が書かれていることが多いので、迷った工事だけを印を付けて残しておき、決算後にまとめて確認する形でも間に合います。

工事経歴書の記載ルールは、その年の手引きで確認する

工事経歴書には、記載する順序や件数のルールがあります。ただし、経営事項審査を受けるかどうかで扱いが変わり、許可行政庁によって運用の説明も違います。

そのため、社内の整理表には記載順のルールを埋め込まないほうが扱いやすくなります。並べ替えられる形で持っておき、提出する年に手引きを確認してから並べます。

社内の整理表

  • 工事が終わるたびに1行
  • 並べ替えられる形

提出する様式

  • 許可行政庁の様式
  • 記載順は手引きに従う
整理表は下書き。提出用の様式と記載要領は行政庁のものが優先する

手引きは毎年更新されます。前年のものをそのまま使わず、その年の版を見るのが確実です。消費税の扱いや、1つの工事に複数の業種が混ざる場合の扱いも、手引きに書かれています。

経営事項審査を受ける場合は、確認の作業が増えます。審査では工事の実績が評点に効くため、記載する内容の確認が細かくなり、契約書や請求書との突き合わせを求められることがあります。この場合、整理表に工事ごとの契約書の保管場所を書いておくと、資料を集める時間が短くなります。

とはいえ、経営事項審査を受けない年もあります。そのため、整理表そのものは審査の有無にかかわらず同じ形で回しておき、審査を受ける年だけ確認の手順を足すのが扱いやすくなります。毎年やり方を変えると、担当が代わったときに引き継げません。

決算変更届には提出の期限があります。期限を過ぎた状態が続くと、許可の更新が受け付けられないことがあります。だからこそ、工事経歴書を年度末の作業として抱え込まず、工事が終わるたびに1行ずつ進めておくほうが、結果として期限に余裕が生まれます。

工事経歴書を、決算のどこで作り始めるか

工事経歴書は決算が締まってから作る書類ですが、決算を待って情報を集め始めると間に合いません。集める作業と、並べる作業を分けて考えます。

集める作業は、工事が終わるたびに1行足すことで済みます。並べる作業は、決算が締まってからでないとできません。未成の工事が決まるのが決算日だからです。

そのため、決算が締まったらやることは2つに絞れます。未成の工事を確認することと、その年の手引きで並べ替えのルールを確かめることです。この2つだけなら、数日で終わります。

だからこそ、年度末に情報を集め直す形をやめるだけで、作業量が大きく変わります。

工事経歴書と工事台帳の使い分け

工事経歴書と工事台帳は同じ工事を扱いますが、見たい切り口が違います。だからこそ、1つの表に統合しようとすると、どちらの用途でも使いにくくなります。

工事台帳記載整理表
見たいこと予算と実績の差その年に何を請け負ったか
単位工事ごとの原価工事ごとの1行
使うとき毎月決算後・経審の前
  • 1行工事が終わるたびに足す
  • 1回台帳から写すのはこれだけ
  • 毎年手引きは更新される
毎月やる作業ではない。工事が終わった月だけ

そのうえで、台帳から整理表へ写すのは工事が終わったときの1回だけにします。毎月やる必要はありません。

担当を決めておくことも効きます。現場の担当者が書くのか、事務が書くのかが決まっていないと、結局どちらも書かないまま年度末を迎えます。実務では、工事の完了報告を出すタイミングで現場から事務へ情報を渡し、事務が整理表に1行足す形がよく使われています。

渡す情報は多くありません。工事名、注文者、現場の住所、配置技術者、請負代金の額、着工と完成の日。この6つがそろえば、整理表の行はほぼ埋まります。そのため、工事完了報告書にこの6項目を入れておくと、渡す作業そのものが要らなくなります。

工事経歴書でよくある取り違え

工事経歴書をはじめて作るときに出やすい取り違えを、実務で聞くものから並べます。

ひとつ目は、職務経歴書との混同です。同じ「経歴書」でも、工事経歴書は会社が請け負った工事を並べるもので、個人の経歴を書くものではありません。検索すると個人向けの情報が混ざって出てくるため、最初に当たると迷います。

ふたつ目は、工事台帳のすべてを載せようとしてしまうことです。工事経歴書に記載する件数には考え方があるため、すべての工事を並べる形になるとは限りません。とはいえ、どこまで載せるかは申請の種類と許可行政庁の手引きで決まるため、整理表の側では全件を持っておき、提出のときに絞る形にしておくと迷いません。

みっつ目は、業種の分け方です。許可を受けている業種ごとに分けて記載することになりますが、1つの工事に複数の業種が混ざる場合の扱いは、手引きに考え方が書かれています。この場合、現場の感覚で分けるのではなく、契約の内容から判断します。

よっつ目は、消費税の扱いです。請負代金の額を税込みで書くのか税抜きで書くのかは、様式と手引きで決まっています。整理表の側では契約書の金額をそのまま持っておき、転記のときに手引きに合わせて換算するほうが、間違いが起きにくくなります。

年に1回の作業を、引き継げる形にしておく

工事経歴書の作成は年に1回です。そのため、担当が代わると作り方ごと失われやすい作業でもあります。一方、毎年同じ手順で回していれば、引き継ぎは手引きの場所と整理表の場所を伝えるだけで済みます。

引き継ぎのために残しておくとよいのは3つです。参照した手引きの版と入手先、迷った工事とその判断、提出した控えの保管場所。この3つがあれば、次の年に別の人が作っても同じ形になります。

とはいえ、手引きは毎年更新されます。前年の判断をそのまま踏襲してよいとは限らないため、迷った工事の記録には「何を根拠にそう判断したか」まで書いておきます。根拠が書いてあれば、手引きが変わったときに見直す場所が分かります。

保管の期間も決めておきます。工事経歴書そのものは提出する書類ですが、その元になった契約書や工事台帳は、社内で一定の期間持っておくことになります。一方、何年持つかは書類の種類で違うため、整理表に保管場所を書いておき、期間のほうは書類ごとの決まりに従う形にすると管理が楽になります。

  • 工事が終わった月 51行足す。5分
  • 決算後 2未成の確認だけ
  • 提出の直前 1手引きで並べ替える
いつ手を動かすか。帯が長いほど、そのタイミングで済ませておく量が多い

整理表をどこに置くかも、引き継ぎに効きます。現場ごとのフォルダに散らしておくと、年度末に集める作業が発生します。会社で1つのファイルにしておき、工事が終わるたびに行を足す形にすると、集める作業そのものが要りません。そのうえで、事業年度ごとにシートを分けておくと、前年と比べたいときにも開きやすくなります。

工事経歴書から見えてくること

工事経歴書は提出のために作る書類ですが、並べ終わると自社の1年が1枚で見える形になります。そのため、提出したあとに一度だけ眺めておくと、次の年の判断材料になります。

見えるのは3つです。元請と下請の比率、業種ごとの金額の偏り、1件あたりの規模です。元請の比率が下がっていれば、受注の入口が細っている可能性があります。逆に、下請の件数が増えているのに金額が伸びていなければ、小口の工事に時間を取られているということになります。

配置技術者の欄も、並べると別のことが見えます。同じ人の名前が続いていれば、その人が抜けたときに動かせない工事があるということです。とはいえ、これは工事経歴書のために調べることではありません。提出のために並べた結果として見えるだけなので、余計な手間はかかりません。

経営事項審査を受ける会社では、この並びがそのまま評点の材料にもなります。一方、受けない会社にとっても、翌年の見積りや人の配置を考えるときの下敷きになります。だからこそ、提出したら終わりにせず、控えを開いて眺める時間を短くても取っておくと、作った労力が次につながります。

  1. 経営事項審査を受けるか はい契約書との突き合わせも用意 いいえ次へ
  2. 決算変更届は出したか はい控えを保管 いいえ期限を確認する
  3. 未成の工事はあるか はい翌年に完成として載せ直す いいえ完了

受ける年だけ確認の手順を足す。整理表そのものは毎年同じ形で回す

提出の前に分岐するところ

決算変更届の提出期限は、事業年度が終わってから決まった期間のうちです。期限を過ぎた状態が続くと、許可の更新の手続きに影響が出ることがあります。だからこそ、工事経歴書を年度末の大仕事にせず、工事が終わるたびに1行ずつ進めておく形にしておきます。そのうえで、決算が締まったら未成の工事だけを確認して、転記に移ります。

整理表は工事経歴書 記載整理表に用意しています。許可の期限管理は建設業許可の更新と変更届、経営事項審査の流れは経営事項審査とはで扱っています。

よくある質問

工事経歴書はいつ作りますか。

決算変更届(事業年度終了報告)のときに毎年作ります。経営事項審査を受ける場合や、許可の新規・更新の申請でも提出することがあります。

記載する順序は決まっていますか。

決まっていますが、経営事項審査を受けるかどうかで扱いが変わり、許可行政庁によって運用の説明も違います。提出する年の手引きと記載例で確認してください。

工事台帳があれば工事経歴書は作れますか。

元になる情報はそろいますが、並びが違います。工事台帳は原価を追う形なので、業種別・元請下請別・完成未成別の切り分けと、配置技術者の情報を別に持つ必要があります。

配置技術者はどこから調べますか。

施工体制台帳や社内の配置記録です。工事台帳には残らないことが多いため、工事が終わった時点で書き留めておくと、年度末に探さずに済みます。

決算日をまたぐ工事はどう書きますか。

決算日時点で完成していなければ未成として扱うのが基本ですが、記載の方法は手引きで確認してください。前年の手引きをそのまま使わず、その年の版を見るのが確実です。

関連するテンプレート

関連する記事