建設業の法定三帳簿とは?書き方と保存期間

公開 2026年9月1日

目次8項目

労働基準監督署の調査で最初に出すよう言われるのが、この3つの帳簿です。現場の書類はそろっているのに会社側の帳簿が見当たらない、という指摘は建設業で珍しくありません。

一般には、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つをまとめて法定三帳簿と呼び、労働基準法にもとづいて事業場ごとに備えます。ただし建設業では、作業員名簿や新規入場者調査票といった現場に出す書類のほうが日常的に動くため、そちらを整えていれば足りていると思われがちです。この2つは目的も置き場所も別物です。

ポイントはここです。建設業の法定三帳簿は、現場に出す書類ではなく会社が事業場ごとに備える書類という位置づけになります

ここでは、3つの帳簿がそれぞれ何を受け持つのか、書く項目と保存の起算日、そして毎月どう回すかを順に整理します。

建設業の法定三帳簿とは3つの帳簿をまとめた呼び名

建設業の法定三帳簿は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つを指す言い方です。労働基準法がそれぞれ別の条文で作成と保存を求めているもので、まとめて1つの帳簿にすることはできません。

  • 労働者名簿誰を雇っているか
  • 賃金台帳いくら払ったか
  • 出勤簿いつ働いたか
法定三帳簿は、人・金・時間を1つずつ受け持っている

3つが受け持つ範囲は重なりません。そのぶん、どれか1つが欠けていると、残りの2つがそろっていても在籍と支払いの突き合わせができなくなります。

3つを別の帳簿として持ち、氏名でつながる形にしておくと、あとから追いかけやすくなります。

労働者名簿は雇っている人の台帳

労働者名簿には、いま雇っている人と、過去に雇っていた人の情報が並びます。氏名や生年月日といった基本の情報に加えて、従事する業務の種類や履歴を残します。

建設業では職種と資格が仕事に直結するため、履歴の欄に配属した現場や職長歴を書いておくと、現場に出す書類を作るときにそこから引けます。逆にここが空欄のままだと、作業員名簿を作るたびに本人へ聞き直すことになります。

賃金台帳は支払った賃金の記録

賃金台帳には、労働日数と労働時間数、そして基本給と手当の内訳を書きます。支払った額だけでなく、その額になった計算の根拠まで残る点が、この帳簿の役目になります。

建設業では日給と時給が混在し、現場ごとに手当が変わることもあります。そのため内訳を1つずつ立てておかないと、後から金額の根拠を説明できません。

出勤簿は働いた日と時刻の記録

出勤簿には、出勤した日と始業・終業の時刻を残します。出面表に時刻の欄を足せば、そのまま出勤簿として使える場合もあります。

ただし丸を付けるだけの出面表では、労働時間が分かりません。残業や休憩が読み取れる形になっているかどうかが、使えるかどうかの分かれ目になります。

建設業の法定三帳簿が求められる理由

建設業の法定三帳簿は、調査に備えるためだけの書類ではありません。現場に出す書類の元になるうえ、助成金や許可の申請でも使います。

会社が備える帳簿

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 事業場ごとに保管

現場に出す書類

  • 作業員名簿
  • 新規入場者調査票
  • 再下請負通知書
  • 現場ごとに提出
同じ人の情報でも、置き場所と目的が分かれている

左は会社が保管する帳簿で、右は現場ごとに元請へ提出する書類です。同じ人の氏名や資格を書くことになるため、二重に情報を集めている会社が少なくありません。

右の書類を作るときに会社の帳簿から転記する流れにしておくと、二重に情報を集める手間がなくなります。

元請から労務関係の確認を受けることがある

元請の安全書類の審査で、労務関係の帳簿の写しを求められる場面があります。社会保険の加入状況とあわせて確認されることもあり、そのときに帳簿が整っていないと審査が止まります。

求められる範囲は元請によって変わりますが、3つがそろっていれば、どの範囲を求められても対応できます。

労働基準監督署の調査で最初に見られる

労働基準監督署の調査では、この3つから見られる場面が多くあります。そろっていない場合、他の指摘にもつながっていきます。

在籍の一覧と突き合わせて、抜けている人がいないかも確かめられます。とくに短期で雇い入れた人の帳簿は抜けやすい部分です。

助成金や建設キャリアアップの申請で使う

雇用に関する助成金の申請では、賃金台帳と出勤簿の写しを添えることがあります。建設キャリアアップシステムの登録でも、就業の実績を示す資料として使えます。

そのため申請の直前に慌てて作るのではなく、日々の運用の中で整えておくほうが手戻りがありません。

建設業の法定三帳簿の1つ目|労働者名簿に書く項目

労働者名簿は、雇い入れたときに作り、退職するまで書き足していく帳簿です。記載する項目は労働基準法で定められており、様式そのものは自社で作って構いません。

  1. 1 雇用契約 契約書を交わす
  2. 2 本人確認 氏名と住所を確認
  3. 3 名簿に登録 雇入れの日を記入
  4. 4 資格を追記 取得のつど足す
  5. 5 退職時 年月日と事由を記入
労働者名簿は雇入れから退職まで書き足していく

このうち退職時の記入を忘れると、保存の年数を数える起点が分からなくなります。名簿から削除するのではなく、退職の事実を書き足して残す形になります。

項目内容建設業での書き方
氏名・生年月日本人を特定する情報住民票の表記に合わせる
住所現住所転居時に更新する
履歴社内の異動や職歴配属した現場や職長歴を残す
従事する業務の種類担当する仕事職種名で書く
雇入れの年月日雇用を始めた日契約書と一致させる
退職の年月日と事由退職時に記入保存期間の起算日になる

住所と従事する業務は、変わったときに直す項目です。配置転換や転居があったときに更新する流れを、人事の手続きに入れておきます。

日雇いの人をどう扱うか

日々雇い入れる人については、労働者名簿の作成が求められない扱いになっています。とはいえ賃金台帳と出勤簿は作る必要があるため、3つのうち2つは必要です。

同じ人が繰り返し来ている場合、実態としては常用に近くなります。そのときは名簿にも載せておくほうが、後の説明で困りません。

資格の欄を足しておくと転記が減る

法定の記載事項ではありませんが、資格の欄を足しておくと現場の書類作成が楽になります。玉掛けや足場の組立て等作業主任者といった資格は、新規入場者調査票でも聞かれます。

取得のつど書き足す形にしておけば、作業員名簿を作るたびに本人へ聞き直す必要がなくなります。

退職したあとも消さずに残す

退職した人の行を削除してしまうと、保存の年数を満たせません。退職の年月日と事由を書き足したうえで、そのまま残します。

在籍者と退職者を別のファイルに分ける形でも構いませんが、そのときは退職者側の保存の期限を表紙に書いておきます。

建設業の法定三帳簿の2つ目|賃金台帳に書く項目

賃金台帳は、出勤簿の数字をもとに作られ、工事ごとの労務費の集計につながります。つまり3つの帳簿の中間に位置する帳簿です。

  1. 1 出勤簿 日数と時刻を集計
  2. 2 単価 日給・時給を確認
  3. 3 賃金台帳 計算の根拠を残す
  4. 4 給与明細 本人に交付
  5. 5 労務費集計 工事ごとに配賦
賃金台帳は出勤簿から作られ、労務費の集計につながる

台帳まで作ってあると、工事ごとの労務費を集計するときに元の数字をたどれます

労働日数と労働時間数を分けて書く

労働日数と労働時間数は、別の欄で持ちます。日給で払っている場合も、時間数を残しておかないと割増の計算ができません。

建設業では現場によって作業時間が変わるため、時間外や深夜の時間数を分けて記録しておく必要があります。

手当の内訳を1つずつ立てる

手当をまとめて1行にすると、内訳が分かりません。現場手当、資格手当、通勤手当のように、種類ごとに欄を分けます。

固定の残業代を含めて払っている場合は、その内訳も分けて書きます。まとめてあると、割増が足りているかどうかを後から確かめられません。

賃金の締めと支払いの日を固定する

締めの日と支払いの日を固定しておくと、記入の周期がそろいます。現場ごとに締めが違う運用にすると、台帳の記入も月をまたいで乱れます。

締めを変えるときは、その月の扱いを決めて記録に残しておきます。

建設業の法定三帳簿の3つ目|出勤簿に書く項目

出勤簿は、いつ何時間働いたかを残す帳簿です。建設業では出面表を使っている会社が多く、それを兼用できるかどうかが実務の分かれ目になります。

  1. 出勤した日が分かるか はい次へ いいえ日付欄を足す
  2. 始業と終業の時刻が入っているか はい次へ いいえ時刻欄を足す
  3. 休憩の時間が分かるか はい次へ いいえ休憩欄を足す
  4. 本人か管理者が確認しているか はい出勤簿として使える いいえ確認欄を足す

4つが満たせていれば、出面表をそのまま出勤簿にできる

出面表を出勤簿として使えるかの見分け方

時刻の欄を足すだけで出勤簿として兼用できるため、様式を2つ持つより手間が減ります。

現場名の欄を足しておく

出勤簿に現場名の欄を足しておくと、工事ごとの労務費を配賦するときに使えます。1日に複数の現場へ行った場合は、時間で割って書きます。

法定の記載事項ではありませんが、この欄があるだけで工事台帳への転記が転記だけで済むようになります。

直行直帰の日の書き方を決めておく

現場へ直接向かい、そのまま帰る日の始業と終業をどう扱うかを決めておきます。現場に着いた時刻を始業とするのか、集合場所を出た時刻とするのかで時間数が変わります。

決めた扱いを様式の欄外に書いておけば、人によって書き方が変わりません。

押印ではなく確認の記録を残す

本人の押印は必須ではありませんが、内容を確認した記録は残しておきます。確認欄に署名する形でも、管理者が確認した記録でも構いません。

打刻の記録と実際の労働時間が離れている場合は、そのままでは根拠になりません。差が出る理由を残しておきます。

建設業の法定三帳簿の保存期間

保存の年数は3つとも同じですが、いつから数えるかが帳簿ごとに違います。起算日を間違えると、まだ捨てられないものを廃棄してしまいます。

  • 労働者名簿 3年 退職・解雇・死亡の日から
  • 賃金台帳 3年 最後の記入をした日から
  • 出勤簿 3年 最後の出勤日から
  • 工事関係の帳簿 5年 建設業法にもとづくもの

退職者が出たときに起算日を記録しておく運用にすると、処分の判断がその場で付きます。

起算日を帳簿に書き込んでおく

退職の年月日を名簿に書いたら、そこから数えた期限も余白に書いておきます。そうしておけば、年に1回の見直しのときに廃棄できるものが一目で分かります。

年度ごとにまとめて、表紙に期限を書く形でも構いません。そのぶん判断は年度単位になりますが、迷う場面は減ります。

建設業法の帳簿とは年数が違う

建設業法にもとづく帳簿や、営業に関する図書は保存の年数が別に定められています。労務の帳簿と同じファイルに綴じてしまうと、廃棄のときに区別できません。

そのため労務の帳簿と工事関係の帳簿は、別に綴じておきます。背表紙にどちらなのかを書いておくと、探す時間も短くなります。

電子で保存するときは検索できる形にする

帳簿を電子で保存する場合、求められたときに出せる状態を保つ必要があります。氏名や期間で探せる形にしておくと、調査の場でその場から出せます。

紙と電子が混ざると、どちらが最新なのか分からなくなります。どこからを電子にしたかを決めて、切り替えた時点を記録に残しておきます。

建設業の法定三帳簿でつまずきやすいところ

いちばん多いつまずきは、誰を帳簿に載せるかの判断です。建設業では一人親方や応援の作業員が現場に入るため、線引きが必要になります。

  1. 1 契約書 雇用か請負かを見る
  2. 2 指揮命令 誰の指示で動くか
  3. 3 賃金の支払先 自社か相手の会社か
  4. 4 帳簿への反映 載せるかどうかを決める
載せるかどうかは、契約の形から順に切り分けていく

契約書の形から見ていくのが基本ですが、実際の指揮命令が自社から出ている場合は、契約の名前だけでは判断できません。

立場契約の形法定三帳簿への載せ方
自社の社員雇用契約3つとも載せる
常用の職人雇用契約3つとも載せる
一人親方請負契約載せない(外注として管理)
応援会社の作業員相手の雇用載せない(相手の帳簿)
日々雇い入れる人雇用契約賃金台帳と出勤簿は作る

一人親方は自社の労働者ではないため、労務の帳簿ではなく外注管理表で扱う形が一般的です。

常用と請負を書類の上で分ける

常用として毎日来てもらっている職人を請負契約にしている場合、実態としては雇用に近くなっていることがあります。

契約の形と実際の働き方が離れていると、後から指摘を受ける場面があります。そのため契約を交わす段階で、どちらとして扱うかを決めておきます。

事業場の単位をどう置くか決める

帳簿は事業場ごとに備えます。支店や営業所がある会社では、どこを1つの事業場として扱うかを決めておく必要があります。

現場を事業場として扱うかどうかは、規模や期間によって判断が変わります。迷う場面は所轄の労働基準監督署に確かめて、決めた内容を記録に残します。

現場に出す書類との食い違いを防ぐ

作業員名簿の資格と労働者名簿の資格が違う、という食い違いが起きます。どちらかを出どころに決めて、そこから転記する形にします。

会社の帳簿を出どころにしておけば、現場ごとに聞き直す必要がなくなり、内容もそろいます。

建設業の法定三帳簿を毎月回す形にする

建設業の法定三帳簿は、作った時点では整っていても、更新が止まればそこで使えなくなります。月次の流れに組み込んでおくと、特別な作業が要らなくなります。

  1. 1 日々 出面表に時刻を書く
  2. 2 月末 出勤簿として閉じる
  3. 3 締め後 賃金台帳に転記
  4. 4 支払い 給与明細を交付
  5. 5 入退社時 労働者名簿を更新
出勤簿から賃金台帳へ、人の増減は労働者名簿へ

労働者名簿だけは月次の流れから外れ、人が入ったときと辞めたときに更新します

様式をそろえて転記だけで済むようにする

出面表と賃金台帳で項目の並びをそろえておくと、転記が写すだけで済みます。並びが違うと、そのつど読み替えることになり、写し間違いが起きます。

現場名や職種の書き方も、社内で1つに決めておきます。

現場から本社に上げる期限を決める

出面表を本社に上げる期限を決めておかないと、締めのあとに届きます。月末の何日までに上げるかを決めて、現場の職長に伝えておきます。

遅れた分の扱いも決めておくと、翌月にずらすかその月に含めるかで迷いません。

年に1回、記載事項の改正を確認する

労働基準法の記載事項や保存の年数は、改正で動くことがあります。年に1回、様式が最新の要求を満たしているかを確かめます。

確かめた日を様式の余白に書いておけば、次に見直す目安になります。

様式は労働者名簿テンプレート賃金台帳テンプレート出勤簿テンプレートからダウンロードできます。

よくある質問

法定三帳簿は、現場ごとに作るのですか。

事業場ごとに備える形が一般的です。現場が事業場として扱われることもありますが、労務管理を本社でまとめている会社では本社に備えている例が多くあります。判断に迷う場合は、賃金の計算をどこで行っているかを目安にすると整理しやすくなります。

一人親方に手伝ってもらった場合も、労働者名簿に載せるのですか。

請負契約で入ってもらう場合は自社の労働者ではないため、労働者名簿には載せない形が一般的です。雇用契約であれば載せます。契約の形を先に確定させておくと、帳簿がねじれません。

出勤簿は出面表で代用できますか。

出面表に始業・終業の時刻が入っていれば、出勤簿として使える形になります。人工の数だけを書いた出面表では労働時間が分からないため、時刻の欄を足しておくと兼用しやすくなります。

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