建設業の安全宣言|方針から現場の掲示までの書き方と例文
公開 2026年9月18日
目次8項目
- 1建設業の安全宣言は3つの層に分かれている
- 安全宣言そのものを義務づけた条文はありません
- 誰に向けて貼るかで、置く場所が変わります
- 2建設業の安全宣言は、実行することを3つに絞る
- 数字を入れると、守れたかを後から確かめられます
- 工種別の書きぶり
- 一人親方・少人数の会社が出す場合
- 3建設業の安全宣言と、年度の安全衛生方針を分けて書く
- 工事安全衛生計画書との関係
- 安全スローガンとは役割が違います
- 4建設業の安全宣言を掲示したあとにやること
- 5建設業の安全宣言を、一人親方や少人数の会社が出すとき
- 6建設業の安全宣言と、安全大会の宣誓文を分ける
- 宣誓文の例
- 大会の式次第は別の資料になります
- 7建設業の安全宣言と、安全スローガンの違い
- 8建設業の安全宣言でよくつまずくところ
- 元請ごとに様式が違う
- 書いた人と掲示した人が違う
- 年度が変わったときに方針だけ古くなる
建設業の安全宣言は、作業所の入口や詰所に掲示して、その現場で守ることを全員に示す文書です。全国安全週間や安全大会の時期に、元請から掲示を求められることがあります。
一般には、会社が年度ごとに安全衛生方針を決め、それを現場ごとの宣言に落として掲示する形が多く使われています。とはいえ、方針だけを貼ると現場の作業と離れ、現場の宣言だけを貼ると会社として何を目指しているかが見えなくなります。
ここでは、建設業の安全宣言を、年度の方針・現場の宣言・安全大会の宣誓文の3つに分けて整理します。
建設業の安全宣言は3つの層に分かれている
建設業の安全宣言を書こうとして手が止まるのは、例文を探す前にどの層の宣言なのかが決まっていないためです。同じ「安全宣言」でも、次の3つは別のものです。
| 層 | 決める人 | 期間 | 書きぶり |
|---|---|---|---|
| 会社の安全衛生方針 | 経営層・安全衛生委員会 | 年度 | 目指す状態 |
| 現場で実行すること | 作業所長・現場代理人 | 工事期間 | 具体的な行動と数字 |
| 安全大会の宣誓文 | 作業員代表・協力会社代表 | 大会の当日 | 誓う形の文 |
ポイントはここです。掲示する宣言は「私たちは」、宣誓文は「私たち○○の全員は」で書きます。主語がそろっていないと、読んだ人が自分のこととして受け取れません。
- 1 年度の方針 会社が決める
- 2 現場の宣言 作業所が3つに絞る
- 3 掲示 場所と期間を記録
- 4 見直し 工種が変わったら
安全宣言そのものを義務づけた条文はありません
建設業の安全宣言に、法令で定められた様式はありません。労働安全衛生法は、事業者に労働災害を防止する措置を求め、働く人にはその措置に応じて必要な事項を守り、防止の取組に協力するよう努めることを求めています(26条・4条)が、宣言の様式や掲示のしかたまでは定めていません。
いっぽうで、都道府県の労働局が「安全宣言運動」として、現場責任者が具体的な行動を宣言して掲示する取組を案内している例があります。その運動に参加する場合は、実施要領で示された様式と手順が先になります。
元請から様式の指定があるときも同じです。指定された紙があるなら、そちらに書き写す形になります。
誰に向けて貼るかで、置く場所が変わります
建設業の安全宣言は、貼る場所によって読む人が変わります。詰所の入口に貼れば毎日入る人が読み、仮囲いの外側に貼れば近隣の人も読みます。
| 貼る場所 | 読む人 | 向いている内容 |
|---|---|---|
| 詰所の入口・朝礼台の正面 | その日入場する全員 | 現場で実行すること |
| 各職の作業場・加工場 | その職の作業者 | 工種に絞った実行すること |
| 仮囲いの外側 | 近隣・通行者 | 会社の方針と連絡先 |
| 事務所の掲示板 | 元請・発注者・監督官庁 | 方針と体制 |
そのため、現場で実行することは詰所の入口、会社の方針は事務所の掲示板という分け方が一般に使われています。全部を1か所に貼ると、誰に向けた紙なのかが読み取れなくなります。
建設業の安全宣言は、実行することを3つに絞る
建設業の安全宣言の本体は「この現場で実行すること」です。ここに何項目書くかで、掲示の読まれ方が変わります。
3つまでにすると、通りがかりに読み切れます。10項目並べた掲示は、貼った翌週から誰も立ち止まりません。その現場でいちばん多い災害から順に3つ選ぶ形が扱いやすくなります。
選ぶときの手がかりは、直近のヒヤリハットと、その工事で使う機械です。足場を組む工事なら墜落、重機が入る工事なら接触、夏の工事なら熱中症というように、その現場で起きる確率が高いものから順に並びます。
- 1人1枚と言われたか はい個人の宣言 いいえ次へ
- 作業所として出すのか はい掲示する3項目 いいえ次へ
- 大会で読むのか はい宣誓文 いいえ去年の紙を探す
求められているものが決まってから書き始める
ただし、過去に自社で起きた災害があるなら、それを1つ目に置く形が優先されます。再発防止対策として決めたことが、そのまま宣言の文になるためです。
数字を入れると、守れたかを後から確かめられます
「高所作業に注意する」と書くと、守れたかどうかを誰も判定できません。「2m以上の作業は、手すり・親綱・足元の3点を確認してから始める」と書くと、巡視で見に行けます。
直す前
- 高所作業に注意する
- 重機の周りに気をつける
- 熱中症に注意する
直したあと
- 2m以上は手すり・親綱・足元の3点を確認してから始める
- 重機の旋回範囲はバリケードで囲い、中に人がいる間は動かさない
- 暑さ指数28を超えた日は1時間ごとに全員で休憩する
安全パトロールの指摘も、この形になっていれば具体的に言えます。指摘と是正の記録は安全パトロール 指摘・是正記録にまとめています。
工種別の書きぶり
建設業の安全宣言は、工事の内容で中身が変わります。多い工種で、実行することの例を並べます。
| 工事の種類 | 実行することの例 |
|---|---|
| 建築(新築) | 高さ2m以上の作業は、手すり・親綱・足元の3点を確認してから始めます |
| 土木(管路・造成) | 土留めを設けるまで、掘削した溝の中に人を入れません |
| 解体 | 上下の同時作業をしません。上で作業する間は下を立入禁止にします |
| 改修・内装 | 火気を使う作業は、許可を受けて消火器を手元に置いてから始めます |
| 設備・電気 | 停電作業は、検電・施錠・表示札の3つを終えてから盤に触れます |
工種をまたいで入る現場では、共通の3つに加えて、職ごとの1つを各作業場に貼る形もあります。詰所には共通の3つ、加工場には鉄筋の1つ、という置き方です。
一人親方・少人数の会社が出す場合
一人親方や数名の会社では、会社の方針と現場の宣言を分ける意味が薄くなります。その場合は、1枚に「今の現場で実行すること」だけを書く形で足ります。
この場合、元請から安全宣言を求められたときに見られているのは、多くの場合この部分です。方針の文がないことを理由に差し戻された例は、実務ではあまり聞きません。
それでも方針を1行入れておくと、複数の元請に出すときに使い回しができます。「作業に入る前に設備を整えてから始める」のような、自分の仕事のしかたを表す1行で十分です。
建設業の安全宣言と、年度の安全衛生方針を分けて書く
建設業の安全宣言のうち、年度の安全衛生方針は会社が決めるもので、どの現場でも同じ文になります。現場の宣言は工事の内容で変わります。この2つを同じ欄に混ぜると、どちらも薄くなります。
方針のほうは、目指す状態を書く形が一般的です。「墜落・転落による災害をなくすため、高所作業の設備を先に整えてから作業に入る」のように、会社としての優先順位が分かる書きぶりにします。
安全衛生委員会がある事業場では、方針の決定や見直しを委員会で扱うことが多くあります。議事録に残しておくと、掲示した方針の出どころを説明できます。議事録の様式は安全衛生委員会議事録にあります。
工事安全衛生計画書との関係
現場ごとの安全の計画は、工事安全衛生計画書にまとめます。安全宣言はその計画のうち、全員に見せる部分を抜き出して掲示したものという位置づけで扱うと、二度書く手間がなくなります。
計画書に書いた重点実施事項から3つ選んで掲示する、という順序にすると、計画と掲示の中身がずれません。計画書の様式は工事安全衛生計画書にあります。
安全スローガンとは役割が違います
安全宣言と安全スローガンは、並べて募集されることが多く、混ざりやすい2つです。役割で分けると迷わなくなります。
| 安全スローガン | 安全宣言 | |
|---|---|---|
| 目的 | 覚えてもらう | 行動を決める |
| 長さ | 一行の標語 | 3項目または1文 |
| 数字 | 入れない | 入れる |
| 確かめ方 | 確かめない | 巡視で見に行ける |
一方、スローガンは年間を通して使い、宣言は工種が変わるたびに書き直す、という使い分けが一般的です。同じ紙に両方を載せる場合は、上下を分けて見出しを付けると混ざりません。
建設業の安全宣言を掲示したあとにやること
建設業の安全宣言は、貼って終わりにすると翌週には景色になります。手間をかけずに続けるなら、次の3つだけ決めておけば足ります。
掲示した場所と、見直す日を同じ紙に書きます。工事が進んで掲示板の位置が変わると、宣言だけが古い場所に残ります。見直しの目安は1か月です。
工種が変わったら書き直します。掘削から躯体、躯体から内装と進むと、多い災害も変わります。書き直すタイミングを工程表の節目に合わせておくと、思い出す手間がなくなります。
守れなかった場面を聞く場を、責める場にしないという部分で判断するのが良いです。「急いでいた日にできなかった」と分かれば、次は段取りのほうを直せます。
振り返りは長くしません。できた・できなかったと、できなかったのはどんなときかの2つだけで足ります。週に1回、朝礼のあとに5分取る形が続けやすくなります。
記録として残すかどうかは自社で決められます。安全宣言の保存を求めた法令の定めはないためです。とはいえ、災害が起きたあとに「その作業をどう管理していたか」を説明する材料にはなるので、掲示した紙をそのまま工事の書類に綴じる会社もあります。
- 3つ実行することの上限
- 1か月掲示を見直す目安
- 工程の節目書き直すタイミング
朝のKY活動で出している危険と対策は、安全宣言の材料とほとんど同じです。KY活動の記録はKY活動記録にまとめてあり、現場の安全記録の残し方は現場の安全記録は何を残すのかで扱っています。
建設業の安全宣言を、一人親方や少人数の会社が出すとき
一人親方や数名の会社では、会社の方針と現場の宣言を分ける意味が薄くなります。この場合、1枚に「今の現場で実行すること」だけを書く形で足ります。
元請から安全宣言を求められたときに見られているのは、多くの場合その部分です。方針の文がないことを理由に差し戻された例は、実務ではあまり聞きません。
とはいえ、方針を1行入れておくと、複数の元請に出すときに使い回しができます。「作業に入る前に設備を整えてから始める」のような、自分の仕事のしかたを表す1行で十分です。
そのうえで、現場ごとに書き換えるのは3項目のほうだけにします。方針は年度で固定できるので、毎回考え直す必要がありません。
建設業の安全宣言と、安全大会の宣誓文を分ける
建設業の安全宣言のうち、安全大会で代表者が読み上げる宣誓文は、掲示する宣言とは長さも主語も違います。掲示は「私たちは実行します」、宣誓は「私たち○○の全員は、次のことを守ることを誓います」という形が一般的です。
宣誓文の例
宣誓。私たち○○ビル新築工事作業所の全員は、この1年、次のことを守ることを誓います。一、決めた手順を、急いでいるときほど省かないこと。一、危ないと思ったことは、その場で声に出して作業を止めること。令和○年○月○日 作業員代表 ○○ ○○
協力会として出す場合は、入場者への教育や資格の確認を誓う形が使われます。「新しく現場に入る人には、作業に入る前に必ず危険な場所を歩いて教えること」のように、会として実行できることを書きます。
大会の式次第は別の資料になります
安全大会の開会の挨拶、来賓の紹介、講話、閉会の挨拶といった進行の資料は、宣誓文とは別のものです。求められているのがどちらかを先に確かめると、探す時間が短くなります。
大会を行わない年は、掲示の宣誓文の欄を空けたまま貼って差し支えありません。宣誓文が無いと掲示が成立しない、という決まりはないためです。
建設業の安全宣言と、安全スローガンの違い
安全宣言と安全スローガンは、並べて募集されることが多く、混ざりやすい2つです。役割で分けると迷わなくなります。
スローガンは覚えてもらうための短い標語で、年間を通して使います。一方、安全宣言は自分がやる行動を決めるもので、工種が変わるたびに書き直します。数字が入るかどうかも違い、スローガンには入れず、宣言には入れます。
いちばん大きな違いは、守れたかどうかを確かめられるかです。スローガンは確かめません。宣言は巡視で見に行けます。
同じ紙に両方を載せる場合は、上下を分けて見出しを付けると混ざりません。
建設業の安全宣言でよくつまずくところ
建設業の安全宣言でつまずくのは、書き出しよりも、出したあとに起きることのほうです。実務で相談が多い3つを挙げます。
元請ごとに様式が違う
複数の現場に入っていると、元請ごとに違う様式を渡されることがあります。毎回書き直すことになりますが、中身は同じでかまいません。
そのうえで自社の宣言を1つ決めておき、指定の様式にはそこから写す、という順番にすると迷いません。会社の方針は年度で固定できるため、写すのは現場の3項目だけになります。
書いた人と掲示した人が違う
作業所長が書いて事務が印刷する現場では、掲示した場所が書いた人に伝わらないことがあります。掲示場所の欄を宣言と同じ紙に置いておくと、この行き違いが起きません。
掲示期間と見直す日を同じ欄に並べておくと、次に誰が触るかも決まります。担当が交代しても、紙を見れば続きから始められます。
年度が変わったときに方針だけ古くなる
現場の3項目は工事が変わるたびに書き直すのに、上に載せた年度の方針だけが前年度のまま残ることがあります。掲示を見た人は気づきませんが、監査や元請の巡回では見つかります。
だからこそ、年度が変わる時期に掲示している全現場の紙を1度に差し替える形にしておくと、抜けが出ません。差し替えた日を書く欄があると、いつ直したかも残ります。
よくある質問
安全宣言に決まった様式はありますか。
法令で定められた様式はありません。安全宣言そのものを義務づけた条文が無いためです。都道府県の労働局が実施する安全宣言運動に参加する場合や、元請から様式の指定がある場合は、そちらが優先されます。
会社の安全衛生方針と、現場の安全宣言は別々に用意するのですか。
書く欄を分けたうえで、1枚にまとめる形が扱いやすくなります。方針は会社が年度で決めるもので全現場に共通し、現場の宣言は工事の内容で変わります。同じ欄に混ぜると、どちらも読み取れなくなります。
実行することは何項目書けばよいですか。
3つまでが目安です。数を増やすと通りがかりに読み切れず、貼った翌週から誰も立ち止まらなくなります。その現場でいちばん多い災害から順に選ぶ形が一般的です。
安全大会をやらない年は、宣誓文の欄はどうしますか。
空けたまま掲示して差し支えありません。宣誓文は大会で代表者が読み上げるためのもので、掲示する宣言とは用途が違うためです。
安全宣言はどのくらいの期間で書き直しますか。
掲示するものは1か月を目安に見直し、工種が変わるタイミングでは書き直す形が扱いやすくなります。掘削から躯体、躯体から内装と進むと、多い災害も変わるためです。