建設業の年次有給休暇管理簿の書き方と基準日

公開 2026年9月1日

目次8項目

日給で働いてもらっている職人に年次有給休暇があるのか、という質問は建設業で繰り返し出ます。現場が動いた日だけ払う形にしていると、休んだ日に賃金が出る仕組みが結びつきにくいためです。

一般には、6か月続けて勤務し、その間の出勤が8割以上あれば年次有給休暇が発生します。賃金の払い方が日給か月給かは、この判断に関係しません。そのうえで、いつ何日与えていつ取ったかを年次有給休暇管理簿に残すことが、労働基準法施行規則で求められています。

ポイントはここです。建設業の年次有給休暇管理簿は、賃金の払い方ではなく雇用しているかどうかで対象が決まります

ここでは、管理簿に書く3つの項目、基準日の置き方、年5日の進め方、そして日給の人の賃金の扱いを順に整理します。

建設業の年次有給休暇管理簿とは何を残す帳簿か

建設業の年次有給休暇管理簿は、時季・日数・基準日の3つを人ごとに残す帳簿です。労働基準法施行規則で作成と保存が定められており、賃金台帳と一体で作ることも認められています。

  • 時季いつ取得したか
  • 日数何日取得したか
  • 基準日いつ付与したか
年次有給休暇管理簿に書くのは3つだけ

書く項目は3つだけですが、この3つがそろっていないと年5日の判断ができません。とくに基準日が抜けていると、いつからいつまでの1年を見るのかが決まらなくなります。

時季は取得した日そのものを書く

時季の欄には、取得した年月日をそのまま書きます。「10月に2日」といったまとめ方では、年5日の期間にかかるかどうかが判断できません。

半日単位で取得できる制度がある場合は、その旨も書き添えます。時間単位の制度を入れている場合は、年5日にどう数えるかを先に決めておきます。

日数は付与と取得を分けて書く

その年に与えた日数と、実際に取った日数を別の欄で持ちます。繰り越した日数も分けておくと、どちらから使ったのかが分かります。

残日数は付与と取得の差ですが、繰越が混ざると計算が合わなくなります。そのため繰越の欄を最初から様式に置いておきます。

基準日は付与した日を書く

基準日は、年次有給休暇を与えた日です。入社日から6か月後がその日になりますが、会社の判断でそろえることもできます。

基準日が人によってばらばらだと、年5日の期限も人ごとに違う日になります

建設業の年次有給休暇管理簿が必要になる人

建設業の年次有給休暇管理簿が対象にするのは、6か月続けて勤務し、その間の出勤が8割以上あった人です。付与される日数は、勤続の期間が長くなるほど増えていきます。

  • 6か月 10日
  • 1年6か月 11日
  • 2年6か月 12日
  • 3年6か月 14日
  • 4年6か月 16日
  • 5年6か月 18日
  • 6年6か月以上 20日
週5日勤務の場合の付与日数(勤続期間ごと)

週5日勤務であれば最初の付与が10日となり、年5日の取得義務の対象にもなります。週の所定労働日数が少ない人は比例して付与されるため、10日に届かない年もあります。

その場合でも管理簿は作りますが、年5日の義務からは外れます。つまり管理簿の作成と年5日の義務は、対象が完全に一致するわけではありません。

立場契約の形管理簿の作成
自社の社員雇用契約作る
常用の職人雇用契約作る
パート・アルバイト雇用契約作る(比例付与)
一人親方請負契約作らない
応援会社の作業員相手の雇用相手の会社が作る

付与日数が10日に届かない年は年5日の義務の対象から外れますが、管理簿そのものは作る形になります

6か月の継続勤務と8割の出勤で発生する

6か月の継続勤務と、その期間の8割以上の出勤という2つの条件で発生します。現場が止まって会社の都合で休みになった日は、出勤率を計算するときの扱いに注意が必要です。

会社の責任で休業させた日は出勤したものとして扱われるため、現場待ちの日を欠勤として数えると出勤率が実際より低く出ます。

常用と一人親方で扱いが変わる

雇用契約を結んでいる常用の職人には年次有給休暇が発生します。一方で請負契約の一人親方は労働者ではないため、対象になりません。

ただし契約の名前が請負でも、実際に自社の指揮命令で毎日働いている場合は、実態として雇用に近くなります。判断に迷う場面は所轄の労働基準監督署に確かめます。

現場が変わっても勤続はつながる

同じ会社に雇用されている限り、配属される現場が変わっても勤続期間はつながります。現場ごとに契約を切り直している場合は、その扱いを決めておく必要があります。

実質的に継続していると見られる形になっていれば、通算して勤続期間を数えることになります。

建設業の年次有給休暇管理簿の基準日をどう置くか

基準日は原則として入社日から6か月後ですが、全員をそろえる形も認められています。人数によって、どちらが回しやすいかが変わります。

入社日から数える

  • 原則どおりの形
  • 人ごとに基準日が違う
  • 管理簿の期限が散らばる
  • 人数が少ない会社に向く

基準日をそろえる

  • 全員を同じ日に付与
  • 前倒しで付与する
  • 期限が年1回にまとまる
  • 人数が多い会社に向く
基準日は原則どおりにも、そろえる形にもできる

そろえる場合は、本来より早く付与することになります。そのぶん日数は増えますが、年5日の確認が年1回にまとまるため管理は軽くなります。

人の出入りが多い会社では、基準日が散らばると期限の管理だけで手が取られます。どちらにするかを決めて、就業規則に書いておきます。

統一する日を決めて就業規則に書く

基準日をそろえる場合、統一する日を就業規則に書いておきます。4月1日や10月1日など、年度の区切りに合わせる例が多く見られます。

書いていないと、担当が代わったときに扱いが変わります。途中で変更する場合は、労働者に不利にならない形を確かめてから行います。

入社1年目の付与を前倒しする

基準日をそろえると、入社から6か月経つ前に付与する人が出ます。本来の付与日より早くなるため、その分は前倒しで与える形になります。

前倒しした場合、次の付与までの期間が1年より短くなることがあります。そのときの日数の扱いを決めて、管理簿の欄外に書いておきます。

分割して付与するときは期間も書く

入社時に何日か与えて、残りを6か月後に与えるという分割の形もあります。この場合、年5日を見る期間が分かりにくくなります。

分割したときは、年5日の期間がどこからどこまでかも管理簿に書いておくと、期限の判断が早くなります。

建設業の年次有給休暇管理簿と年5日の取得義務

年10日以上が付与される人には、年5日を取らせることが求められます。基準日から1年の間に5日に達していればよいため、期限までの進み具合を見る形になります。

  1. 1 基準日 年次有給休暇を付与
  2. 2 本人の申出 取得した日を管理簿へ
  3. 3 半年で確認 残りの日数を見る
  4. 4 時季指定 足りなければ会社が指定
  5. 5 1年後 5日に達したかを確認
年5日は、基準日から1年の間に取れていればよい

半年の時点で残りを見ておくと、期限の直前に慌てて指定する形になりません。

半年の時点で残りを見る

基準日から半年経った時点で、取得日数が2日から3日あるかを見ます。そこで足りていなければ、残りの半年で調整できます。

建設業では工期の終盤に人手が要るため、後半に取りにくくなる現場もあります。そのため前半のうちに進めておくほうが、無理が出にくくなります。

時季指定は本人の希望を聞いてから行う

年5日に足りない場合、会社が時季を指定できます。ただし一方的に日を決めるのではなく、本人の希望を聞いてから指定する形になります。

指定した日も管理簿に残します。本人の申出で取った日と、会社が指定した日を分けておくと、後から経緯が分かります。

計画的付与を使う方法もある

労使協定を結んで、あらかじめ日を決めて与える計画的付与という仕組みがあります。夏季や年末に現場を止める会社では、その日に合わせて使う例があります。

5日は本人が自由に使える分として残す必要があるため、計画的付与に回せるのはそれを超える日数になります。

建設業では日給の人の有給をどう扱うか

日給で働いてもらっている人の有給は、いくら払うのかが問題になります。計算の方法は3つあり、どれを使うかを就業規則に定めておく必要があります。

  1. 就業規則に計算の方法を書いているか はい次へ いいえまず就業規則に定める
  2. 通常の賃金で払う形にしているか はい日給をそのまま払う いいえ次へ
  3. 労使協定を結んでいるか はい標準報酬日額も選べる いいえ平均賃金で計算する

日給の人は、通常の賃金として日給をそのまま払う形が分かりやすい

年次有給休暇の賃金をどう計算するか

3つのうち通常の賃金を選ぶと、日給をそのまま払う形になり計算が要りません。平均賃金を選ぶと直近3か月の平均になるため、現場が止まった月があると金額が下がります。

日給の人ほど月による変動が大きいため、どの方法を選ぶかで受け取る額が変わってきます。

計算の方法内容日給の人での扱い
通常の賃金働いたものとして計算日給をそのまま払う
平均賃金直近3か月の平均現場が止まった月があると下がる
標準報酬日額健康保険の標準報酬から労使協定が必要

どの方法を選ぶかは会社ごとに決められますが、人によって変えることはできない扱いになっています

出面の人工と有給の日を分けて書く

出面表では、実際に働いた日と有給で休んだ日を分けて書きます。まとめて人工として数えてしまうと、工事ごとの労務費に有給分が混ざります。

有給の賃金は特定の工事の原価ではなく、会社の負担として扱う形が一般的です。そのため出面の段階で分けておくほうが、後の集計が楽になります。

現場が止まった日を有給に振り替えない

雨で現場が止まった日を、本人の申出なしに有給として処理する扱いは認められません。会社の都合で休業させた日は、休業手当の話になります。

本人が有給を使いたいと申し出た場合は別ですが、その場合も申出があったことを記録に残しておきます。

半日単位の運用は先に決めておく

半日単位で取得できる制度を入れるかどうかを、先に決めておきます。午前と午後の区切りをどこに置くかも、あわせて決めます。

現場の作業時間は一律ではないため、半日をどう数えるかを決めていないと、人によって扱いが変わります。

建設業の年次有給休暇管理簿でつまずきやすいところ

管理簿の記入でつまずくのは、多くの場合その前段の情報が足りていないためです。雇用契約書の内容がそろっていれば、記入そのものは転記で済みます。

  1. 1 雇用契約書 入社日と所定日数
  2. 2 基準日 6か月後に決まる
  3. 3 付与日数 勤続と所定日数から
  4. 4 取得の記録 出勤簿から転記
  5. 5 残日数 繰越と合わせて計算
管理簿の記入は、雇用契約書の内容から順につながっている

入口の雇用契約書に入社日と週の所定労働日数が書かれていないと、基準日も付与日数も決まりません。つまり管理簿より前の書類の問題になります。

そのため契約を交わす段階で、この2つを埋めてから先へ進む形にしておきます。

つまずき何が起きるか先に決めておくこと
入社日があいまい基準日が決まらない雇用契約書の日付に合わせる
所定労働日数が不明付与日数が計算できない契約書に週の日数を書く
繰越の管理がない残日数が合わない年度ごとに繰越を記録する
時間単位の運用が未定記入の単位がそろわない労使協定の有無を確認する

雇用契約書に週の所定労働日数を書いておくと、付与日数の計算がその場で終わります。

繰り越した日数を分けて書く

前の年から繰り越した日数と、その年に付与した日数を分けて持ちます。どちらから使うかを社内で決めておかないと、消える日数が読めなくなります。

繰り越せるのは2年で時効になるまでの分です。消える前に本人へ知らせる形にしておくと、あとから不満が出にくくなります。

時間単位の運用は労使協定を結んでから

時間単位で取得できる制度は、労使協定を結んで初めて使えます。協定なしに運用していると、時間単位の取得そのものが有効になりません。

年5日に数えられる範囲も決まっているため、導入するときは記入の単位とあわせて決めておきます。

退職する人の残日数を先に確認する

退職の申出があった時点で、残日数を確かめます。退職日までに取りたいという申出が出ることが多いためです。

工期の途中で抜けられない場面もありますが、時季変更権には限りがあります。早めに調整するほうが双方の負担が軽くなります。

建設業の年次有給休暇管理簿の保存期間

建設業の年次有給休暇管理簿の保存は3年ですが、いつから数えるかは他の帳簿と違います。与えた期間が満了した日から数える形になります。

  • 年次有給休暇管理簿 3年 与えた期間の満了日から
  • 賃金台帳 3年 最後の記入をした日から
  • 出勤簿 3年 最後の出勤日から
  • 労使協定 3年 有効期間の満了日から

同じ3年でも起点が違うため、まとめて同じ日に廃棄する運用にすると早すぎる分が出ます。年度ごとにファイルを分けて、表紙に期限を書いておく形が扱いやすくなります。

年度ごとにファイルを分けておく

基準日をそろえている会社では、年度で区切ると期限もそろいます。基準日が人ごとに違う場合は、退職者の分だけ別にまとめる形もあります。

いずれの場合も表紙に期限を書いておけば、廃棄の判断がその年度の分だけで済みます。

賃金台帳と一体で作ってもよい

管理簿を賃金台帳と一体で作ることが認められています。様式が1つになるため、作る手間と保管の場所が減ります。

その場合は保存の扱いを賃金台帳に合わせるのか、管理簿の起算日で見るのかを決めて、表紙に書いておきます。

電子で保存するときは取り出せる形にする

管理簿を電子で保存する場合、求められたときに出せる状態を保つ必要があります。氏名や期間で探せる形にしておくと、調査の場でその場から出せます。

紙と電子が混ざると、どちらが最新なのか分からなくなります。切り替えた時点を記録に残しておきます。

建設業の年次有給休暇管理簿を出勤簿と一緒に回す

管理簿を単独の作業として持つと、更新が止まります。出勤簿を閉じるついでに更新する形にしておくと、特別な手間が要りません。

  1. 1 日々 出面表に有給を記入
  2. 2 月末 出勤簿として閉じる
  3. 3 締め後 管理簿に日数を転記
  4. 4 半年 年5日の進み具合を確認
  5. 5 基準日 新しい年度を開く
年次有給休暇管理簿は、出勤簿を閉じるついでに更新する

出面表の段階で有給を記号で書いておけば、月末に閉じるときにそのまま数えられます。逆に日々の記入で有給と欠勤を区別していないと、締めのあとに聞き直すことになります。

残日数を本人に見せる形にする

給与明細に残日数を載せる形が広く使われています。本人が自分の残りを把握できると、計画を立てやすくなります。

残日数が見える状態にしておくと、本人からの申出が出やすくなります。

現場の職長にも予定を共有する

有給の予定を職長に共有しておくと、人の手配ができます。共有していないと、当日になって現場が回らないという形になります。

月の初めに翌月の予定を出す流れにしておくと、現場側も応援を頼む時間が取れます。

担当が代わっても続く形にする

基準日の置き方、賃金の計算方法、半日単位の扱いを、就業規則か規程に書いておきます。担当者の頭の中にあるだけだと、代わったときに扱いが変わります。

年に1回、法改正の有無とあわせて内容を確かめる時間を取っておきます。

様式は年次有給休暇管理簿テンプレート、あわせて使う出勤簿テンプレートからダウンロードできます。

よくある質問

日給で働く職人にも年次有給休暇は発生しますか。

雇用契約で働いている人であれば、賃金の払い方にかかわらず発生します。日給か月給かは支払いの形の違いで、付与の要件は勤続期間と出勤率で決まります。付与日数は週の所定労働日数によって変わります。

年次有給休暇管理簿は、どの様式を使えばよいですか。

法令で様式が定められているわけではありません。時季・日数・基準日の3つが労働者ごとに分かる形であれば、表計算のシートでも足ります。賃金台帳や出勤簿と一体で作る形も認められています。

年5日の取得義務は、全員が対象ですか。

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者が対象になります。週の所定労働日数が少ない人は付与日数が10日に届かない年があり、その年は対象から外れます。管理簿に付与日数を書いておくと、対象かどうかがその場で分かります。

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