工事写真の仕分けをAIに任せる範囲

公開 2026年9月9日

目次7項目

工事写真は、撮る量に比べて整理の手間が大きい記録です。実務では、現場から戻ってからパソコンに取り込み、工種や撮影箇所ごとにフォルダへ振り分けていく形が広く使われています。枚数が数百を超えると、この振り分けだけで半日が消えることもあります。

一般には、撮影の段階で黒板に書き込み、後から黒板の文字を見て分類するという流れになっています。とはいえ黒板の文字は写真の中にあるため、機械が読める状態にはなっていません。ここが、整理に時間がかかる理由です。

ポイントはここです。工事写真の仕分けが自動になるかどうかは、AIの性能より撮影の時点で情報が電子になっているかで決まります

ここでは、工事写真の仕分けについて、電子小黒板との関係、AIが担う範囲、公共工事で求められる条件、そして台帳に残すところまでを順に整理します。

工事写真の仕分けが手作業になる理由

工事写真の仕分けが手作業のまま残るのは、分類に必要な情報が写真の中にしかないためです。撮影日時は写真のデータに入っていますが、工種・撮影箇所・立会者といった情報は、黒板に書かれた文字として画像に写っているだけになります。

いまの整理

  1. 現場で黒板を書いて撮る
  2. 持ち帰って取り込む
  3. 1枚ずつ黒板を読む
  4. フォルダへ振り分ける

数百枚で半日

電子小黒板を入れたあと

  1. 端末の黒板に入力して撮る
  2. 工種がデータで付いて残る
  3. 仕分けが発生しない
  4. 台帳の形で書き出す

撮った時点で分類済み

工事写真の仕分けは、後で分けるのではなく撮る時点で決まる

そのため、人が1枚ずつ見て、黒板を読んで、該当するフォルダに入れるという作業が発生します。撮った本人であれば思い出せますが、日をまたぐと分からなくなる写真も出てきます。

さらに、協力会社から送られてくる写真が混ざると難しさが増します。撮影の意図が分からないまま数十枚が届くことがあり、どの工種のどの箇所なのかを問い合わせるところから始まります。この問い合わせの往復が、整理の時間を押し上げます

一方で、この構造が分かると自動化の方向も決まります。黒板の情報を、画像ではなくデータとして持たせるか、画像から文字を読み取るかの2つです。前者が電子小黒板、後者がAIの文字認識にあたります。

黒板をデータで持つ

  • 撮影と同時に情報が電子で入る
  • 読み取りの誤りが起きない
  • 対応したアプリでの撮影が前提

画像から読み取る

  • 今までどおり撮ってよい
  • 手書きの文字は読み違いが出る
  • 過去に撮った写真にも使える
工事写真の仕分けを自動にする2つの道すじ

工事写真の仕分けと電子小黒板の関係

工事写真の仕分けを根本から楽にするのは、電子小黒板です。撮影する端末の画面に黒板を表示し、そこへあらかじめ入力した工種や測点を載せて撮る仕組みになっています。

この形にすると、黒板の内容が最初からデータとして残ります。撮影した時点で工種が決まっているため、仕分けという作業そのものが発生しません。板を持つ人が要らなくなるので、撮影に必要な人数が減るという面もあります。

黒板を書き直す手間も消えます。紙の黒板では、測点や工種が変わるたびに書き換えが必要で、雨の日や手が汚れている場面では思うように進みません。電子の黒板は入力を選ぶだけなので、撮影の間隔が短くなります。

建設業の情報化を扱う団体からは、施工者向けの導入ガイドが出されており、公共工事での運用の考え方がまとめられています。また国土交通省でも、令和5年度以降の入札に向けて小黒板情報の電子化に関する基準の改定が行われ、発注者と受注者の双方の負担を減らす方向が示されています。

とはいえ、電子小黒板は撮影の手順そのものを変えるものです。そのため、現場で使う端末とアプリを先に決めておく必要があります。途中から混ざると、電子の写真と紙の黒板の写真が同じ工事の中に並ぶことになり、かえって整理が増えます。

あわせて、端末の台数も先に決めておくと運用が安定します。1台しかないと、撮影のたびにその端末を持っている人を探すことになるためです。工区ごとに1台という形にしている現場が多くあります。

工事写真の仕分けでAIが担う範囲

工事写真の仕分けでAIが担うのは、主に画像認識と文字認識の部分です。黒板に書かれた文字を読み取り、写っているものの種類を判別して、工種ごとに自動で振り分けます。

役に立つのは、電子小黒板を使っていない写真がある場合です。過去に撮った写真、協力会社から送られてきた写真、スマートフォンでとっさに撮った写真。いずれも黒板の情報がデータになっていないため、読み取りで補う形になります。

精度については、製品によって差があります。印字された文字はよく読めますが、手書きで、しかも汚れた黒板の文字は読み違いが出ます。そのため、多くの製品では仕分けの結果を一覧で確認して手で直す工程が残る作りになっています。

作業AIに任せられるか補足
黒板の文字の読み取り任せやすい印字はよく読める。手書きは確認が要る
工種による振り分け任せやすい一覧で直せる形が一般的
撮影漏れの指摘一部必要な撮影箇所の一覧が登録されている場合
出来形の判定人が行う寸法の合否は測定と判断の話になる
黒板の内容が正しいか人が行う撮影時点で決まっている情報

一方で、確認の工程を省くと分類が崩れます。読み違えた写真が別の工種に入ると、後から探すときに見つかりません。直す作業だけが残る形にしておくと、全部を手で分けるのに比べて時間は大きく減ります。

そのうえで、AIの仕分けは撮影の順番にも助けられます。同じ箇所を続けて撮っていれば、前後の写真から推測が効くためです。逆に、あちこちを行き来しながら撮ると、1枚ずつ判断することになり精度が落ちます。撮る順番を決めておくと、後の工程まで楽になります。

工事写真の仕分けと公共工事の条件

工事写真の仕分けを公共工事で自動化する場合、使える道具に条件がつきます。写真が後から差し替えられていないことを示せる必要があるためです。

デジタル工事写真の小黒板情報を電子化する場合、写真管理基準に示す項目を電子的に記入できること、そして信憑性を確認する機能、つまり改ざん検知の機能を備えていることが求められるのが一般的です。その検知の方式についても、電子政府の調達で参照すべき暗号のリストに載っている技術を使うことが示されています。

そのため、汎用の写真アプリで撮った写真をAIで分類しても、公共工事の提出には使えない場合があります。ここが分かれ目になります。発注者が認めた技術かどうかを、着手前に確認しておく形にしておくと手戻りがありません。

  • 電子小黒板で撮影 工種と測点がデータで入る 撮った時点で仕分け済み仕分けという作業が発生しない
  • 通常の撮影 黒板の文字を画像から読む AIが一次分類手書きは読み違いが出るので確認が残る
  • 協力会社から届く写真 撮影の意図が分からない 問い合わせて確認撮り方の決めごとを先に渡すと減る
同じ「仕分けの自動化」でも、撮り方によって通る道が変わる

民間工事では、ここまでの条件が求められないことが多くあります。とはいえ、後から施工の状況を説明する材料になる点は同じなので、撮り直しのきかない部分については同じ扱いにしておくほうが安全です。

埋め戻す部分、隠れてしまう配筋、塗り込める下地。いずれも完成後には撮れないため、条件の緩い民間工事であっても、撮影と保存の扱いだけは公共工事に合わせておく会社が多くあります。

工事写真の仕分けを楽にする撮影の決めごと

工事写真の仕分けを楽にするには、撮る前の決めごとがいちばん大きく効きます。どんな道具を入れても、撮り方がそろっていなければ分類は安定しないためです。

決めておくと良いのは次の3つです。

  • 黒板に載せる項目を統一する(工事名・工種・撮影箇所・日付)
  • 1つの箇所につき、遠景と近景をセットで撮る
  • 撮影箇所の一覧を先に作り、撮ったらそこに印をつける

3つめが、撮影漏れをいちばん確実に防ぎます。AIは撮られていない写真を作れないため、漏れだけは仕組みで防ぐしかないという部分で判断するのが良いです。一覧が登録できる製品であれば、未撮影の箇所を出せる機能が用意されていることもあります。

そのうえで、黒板の項目は途中で変えないほうが扱いやすくなります。工事の途中で項目名が変わると、前半と後半で分類がそろわなくなるためです。

  1. 1 撮影箇所の一覧を作る 何を撮るかを先に決める
  2. 2 黒板の項目をそろえる 工事名・工種・撮影箇所・日付
  3. 3 撮る 電子小黒板または通常の撮影
  4. 4 仕分ける AIが一次分類、人が確認して直す
  5. 5 台帳にする 提出先の様式に合わせて出す
工事写真の仕分けの流れ。1つめと2つめが決まっていないと、4つめが安定しない

工事写真の仕分けを協力会社まで広げる

工事写真の仕分けを社内で整えても、協力会社から届く写真がそろっていなければ、結局そこで手が止まります。現場の写真は、元請だけで撮っているわけではないためです。

広げるときに効くのは、道具をそろえることより、撮り方の決めごとを渡すことです。黒板に載せる項目、遠景と近景の組み合わせ、送る先とファイルの名前。この4つを1枚にまとめて渡すだけで、届く写真の質がそろってきます。

一方で、協力会社に同じアプリの契約を求めるのは負担が大きくなります。そのため、元請側のアプリに招待して使ってもらう形や、写真だけを決まった場所へ送ってもらう形をとることが多くあります。どちらにしても、送る先を1か所に決めておくことが前提になります。

そのうえで、受け取った写真をいつ仕分けるかも決めておくと溜まりません。月末にまとめて処理する形にすると、量が多くなったときに後回しになりがちです。週に1回など、区切りを短くしておくほうが続きます。

工事写真の仕分けと写真台帳の関係

工事写真の仕分けが終わったあとは、台帳の形にまとめる作業が残ります。提出先から様式の指定がある場合は、その形に合わせることになります。

多くの製品では、仕分けた写真から台帳を自動で作る機能が用意されています。一方で、様式が指定されている場合や、社内で別の並べ方をしたい場合には、Excelの台帳に出して整える形をとることもあります。

そのため、アプリの中だけで完結させるか、表の形でも持っておくかは、提出先で決まります。とはいえ、写真そのものと台帳は別の記録です。台帳だけを残して写真の元データを消してしまうと、後から差し替えや拡大ができなくなるため、元の写真は別に残しておく運用が一般的です。

保存の場所も決めておくと迷いません。サービスの中だけに置いていると、契約が終わったときに取り出せなくなることがあります。工事の完了時に一式を書き出して、自社の保管先へ移す手順まで決めておく形が扱いやすくなります。

最後に、仕分けの精度を上げようとするより、撮影の段階の決めごとを整えるほうが結果は安定します。読み取りにくい黒板をAIに読ませる工夫より、読みやすい黒板を撮るほうが早いためです。

道具を入れる順番としては、まず撮影箇所の一覧と黒板の項目をそろえ、その状態で1つの工事を回してみる形が扱いやすくなります。そこで残った手間が、読み取りなのか、振り分けなのか、台帳づくりなのかが見えてから製品を選ぶと、使わない機能に払う形になりにくくなります。逆に、道具を先に決めてしまうと、撮り方のほうを製品に合わせて変えることになり、現場の負担が増えることがあります。

よくある質問

電子小黒板は、どの工事でも使えますか。

公共工事では、発注者が認めた技術であることと、改ざん検知の機能を備えていることが条件になっているのが一般的です。工事ごとに特記仕様書で扱いが決められていることが多いため、着手前に監督員と確認しておくと手戻りがありません。民間工事では、元請や施主の了解があれば使える場合が多くあります。

AIの仕分けが間違えた場合、どうなりますか。

多くの製品では、仕分けの結果を一覧で見て手で直せる形になっています。全部を人が分けるのに比べて、直す作業だけが残る形です。そのため、精度が完全でなくても時間は減りますが、確認の工程そのものを省くと台帳の分類が崩れます。

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