建設業の書類は何年保存するのか|保存期間を5年・10年で切り分ける

公開 2026年8月21日

目次13項目

建設業の書類は、種類によって保存期間が違います。

同じ工事から生まれた書類でも、根拠になる法令が違えば期間も変わります。まとめて処分すると、残しておくべきものまで消えることになります。

実務では、工事ごとに書類を一式まとめ、年度で棚に並べている会社が一般的です。

ポイントはここです。保存期間は、書類の名前ではなく根拠になる法令で決まります

ここでは、根拠法ごとに期間を整理し、起算日の考え方までを見ていきます。

保存期間は書類の根拠法で決まる

保存期間を調べるときは、その書類がどの法律から求められているかから入ると早く分かります。

建設業の書類には、大きく3つの出どころがあります。

根拠求めているもの期間の傾向
建設業法契約と施工体制の記録5年・10年
労働安全衛生法安全衛生の記録3年・5年(例外的に長いものあり)
労働基準法労務の記録5年(当分の間3年の経過措置)

同じ「名簿」でも、作業員名簿と労働者名簿では根拠が違います。前者は元請への提出書類、後者は労働基準法が事業場に備えることを求めている帳簿です。

建設業法が定めるもの

建設業法に基づく保存期間は、2つの枠に分かれています。

  • 帳簿と添付書類 5年 住宅を新築する工事は10年
  • 営業に関する図書 10年 完成図・打合せ記録・施工体系図
建設業法に基づく保存期間の枠

帳簿は、営業所ごとに備えるものです。請け負った工事の名称・請負契約の内容・下請契約の内容などを記載し、契約書の写しなどを添付します。施工体制台帳を作成した工事では、その記載された部分の写しも添付書類になります。保存期間は5年で、発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものは10年とされています。様式は建設業法の帳簿テンプレートから用意できます。

営業に関する図書は、完成図、工事内容に関する発注者との打合せ記録、そして施工体系図です。こちらは目的物の引渡しから10年間の保存が求められています。

台帳と体系図で期間が違うのは、この枠の違いによるものです。

労働安全衛生法が定めるもの

安全衛生の記録は、書類ごとに期間が決まっています。

記録期間の目安
特別教育の記録3年
健康診断個人票5年
雇入れ時・定期の健康診断結果5年
特定の化学物質・石綿に関する記録30年・40年など長期

最後の行が例外的に長いのは、健康影響が現れるまでに時間がかかるためです。

石綿を扱った作業の記録などは、通常の書類と同じ感覚で処分すると取り返しがつきません。

該当する作業を行った工事は、他と分けて保管することをおすすめします。

KY活動の記録や新規入場者調査票については、法令に保存期間の定めがありません。

労働基準法が定めるもの

労働関係の記録は、労働基準法が保存を求めています。

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、雇入れや解雇に関する書類などが対象です。

期間は5年とされていますが、当分の間は3年とする経過措置が置かれています。

実務では、3年ではなく5年で運用している会社も増えています。

出面表そのものに定めはありませんが、賃金台帳の根拠資料になるため、台帳と同じ期間だけ残しておくと扱いに迷いません。

保存期間の定めがない書類

現場でつくる書類には、法令に保存期間の定めがないものも多くあります。

  • KY活動記録
  • 新規入場者調査票
  • 火気使用願
  • 工事日報
  • 作業員名簿(提出した控え)

定めがないことは、捨ててよいことを意味しません。労働災害が起きたときに、当時の管理状況を示す唯一の資料になることがあります。

多くの会社では、社内規程で「工事完了後○年」と決めて運用する形をとっています。

決めておかないと、フォルダに残り続けるか、誰かの判断で消えるかのどちらかになります。

個人情報を含む書類は、保管期間を決めておくこと自体がリスクを下げます。

保存期間の起算日はいつか

保存期間と同じくらい間違えやすいのが、いつから数えるかです。

書類起算日
帳簿その事業年度の末日など、記載の対象となった時点
営業に関する図書目的物の引渡しをした日
健康診断個人票作成した日
特別教育の記録教育を実施した日

工事に関する書類は、工事の完了ではなく引渡しが起点になるものがあります。完了から引渡しまで期間が空く工事では、数か月の差が生まれます。

電子で保存するときに決めておくこと

書類を電子で保存する会社が増えています。紙で残す場合と比べて場所は取りませんが、決めておかないと崩れる点があります。

1つ目は、保存する場所です。

担当者のパソコンに入っている状態は、保存しているとは言いにくくなります。

退職や機器の入れ替えで消えるためです。

共有のフォルダかクラウド上に、工事ごとの置き場所を決めておくと、探す時間もあわせて減ります。

2つ目は、名前の付け方です。

工事名と引渡し日が入っていれば、処分の判断がその場でつきます。

日付が入っていないフォルダは、中を開かないと期限が分かりません。

3つ目は、提出した版を上書きしないことです。

更新のたびに上書きすると、当時どういう内容で提出したのかが残りません。

日付を入れた別ファイルとして積み上げる形にしておくと、経過が追えます。

契約書などについては、電子帳簿保存法の対象になる場合があります。取引に関する書類を電子でやり取りしている場合は、その保存要件もあわせて確認しておくと安心です。

保存期間を守っていないと何が起きるか

保存期間を守っていない場合に問題になるのは、行政の検査だけではありません。

より現実的に困るのは、後から事実を示す必要が出たときです。

工事が終わって数年後に瑕疵が見つかった、当時の施工範囲について発注者と認識が食い違った、労災の認定で当時の作業内容を問われた。

こうした場面で、記録が残っているかどうかが判断を左右します。

建設業許可の更新や経営事項審査の場面でも、帳簿や図書の整備状況が確認されることがあります。普段の保管が、そのまま準備になっているという状態にしておくと、その都度の作業が減ります。

保管のルールを決める順序

社内で保存のルールを作るときは、書類の一覧から入ると終わらなくなります。

先に決めると進みやすいのは、次の3つです。

最初に、単位を決めます。

工事ごとにまとめるのか、年度ごとにまとめるのか。

建設業では工事単位が扱いやすく、引渡し日を起点にできるという利点があります。

次に、期間を決めます。

書類ごとに違う期間を管理するのは現実的ではないため、その単位の中で最も長い期間に揃える形が続きます。

10年の書類が含まれるフォルダは10年、という決め方です。

最後に、処分の日を決めます。

年に一度、期限の切れたフォルダをまとめて処分する日を作っておくと、溜まり続ける状態を避けられます。

処分した記録を残しておくと、後から「なぜ無いのか」を説明できます。

個人情報を含む書類は、この処分の仕組みがあること自体がリスクを下げます。作業員名簿や新規入場者調査票は、必要な期間を過ぎたら残さないという判断も含めて決めておくと安心です。

工事以外の書類

保存が必要なのは、工事から生まれる書類だけではありません。

建設業許可を受けている会社では、許可に関する書類も手元に残しておく必要があります。

許可申請の副本、変更届の控え、決算変更届の控え。

これらは、次の更新や変更の手続きで前回の内容を参照するため、実務上も残しておくと作業が早くなります。

経営事項審査を受けている会社では、審査で提出した資料の控えも同様です。前回の点数がどう出たのかを確認できると、次の準備がしやすくなります。

技術者の資格に関する書類も、会社として持っておく場面があります。

監理技術者資格者証や、技術者の実務経験を証明する資料。

技術者が退職したあとに、その人の在職期間の証明を求められることもあります。

これらは工事ごとのフォルダには入らないため、会社の書類として別の場所にまとめる形が扱いやすくなります。工事の書類と混ぜると、工事のフォルダを処分するときに一緒に消えてしまいます。

迷ったときの考え方

期間の定めがない書類をどうするかで迷ったときは、次の問いで判断すると決まりやすくなります。

その書類が無いことで、後から説明できなくなることがあるか。

この問いに「ある」と答えられる書類は、残しておく側に倒すのが安全です。

KY活動の記録や作業員名簿の控えが、これにあたります。

もう1つは、その書類に個人情報が含まれているか。

含まれている場合は、残す期間を決めることそのものが管理になります。

期限を決めずに持ち続ける方が、リスクは高くなります。

この2つの問いは、方向が逆に見えます。

実際には「必要な期間は残し、過ぎたら確実に処分する」という1つの運用に収まります。

残す判断と捨てる判断を、同じルールの中で決めておくことがポイントです。

10年という保存期間をどう扱うか

引渡しから10年という期間は、実務の感覚からするとかなり長いものです。

その間に、担当者が代わり、パソコンが入れ替わり、保存の方法そのものが変わることもあります。10年前のファイル形式が、そのままでは開けなくなっている場合もあります。

長期の保存を前提にするなら、形式をなるべく単純にしておくと後が楽になります。専用ソフトの独自形式より、PDFのような広く読める形式で残しておく方が、開けなくなるリスクは下がります。

量が多くなりやすいのは写真です。

工事写真台帳のように一覧で管理しておくと、原本のファイルがどこにあるかを台帳から辿れます。

工事日報も、日付から出来事を引ける索引として機能します。

保存場所を移すときは、移した記録を残しておくと、次の担当者が探せます。10年後に必要になるのは、書類そのものと、それがどこにあるかという情報の両方です。

保管の一覧表を1つ作り、工事名・引渡し日・保存の期限・置き場所を並べておくと、この2つが同時に管理できます。

表そのものは工事が終わるたびに1行増えるだけなので、手間はほとんどかかりません。

担当が代わるときに引き継ぐのも、この表1枚で足ります。

工事の数が増えるほど、この一覧があるかどうかで探す時間が変わってきます。

工事ごとにまとめる

書類ごとに期間が違うからといって、期間ごとにフォルダを分けると運用が続きません。

実務で扱いやすいのは、工事ごとに1つのフォルダへまとめ、その中で最も長い期間に揃える方法です。10年の書類が1つでも含まれていれば、そのフォルダは10年残す、という決め方になります。

フォルダ名に引渡し日を入れておくと、処分の判断がその場でつきます。年に一度、期限の切れたフォルダをまとめて処分する日を決めておくと、溜まり続ける状態を避けられます。

台帳や体系図の様式は、施工体制台帳テンプレートからダウンロードできます。どの工事で台帳が必要になるかは、施工体制台帳が必要になる工事で整理しています。

よくある質問

施工体制台帳と施工体系図で保存期間が違うのはなぜですか。

根拠となる枠が違うためです。台帳の記載部分の写しは帳簿の添付書類として5年(発注者と締結した住宅を新築する工事は10年)、施工体系図は営業に関する図書として引渡しから10年の保存が求められています。

保存期間の定めがない書類は処分してよいですか。

定めがないことは、捨ててよいことを意味しません。労働災害が起きたときに当時の状況を示す資料になることがあるため、社内規程で期間を決めて運用する形が一般的です。

関連するテンプレート

関連する記事