BIMの数量拾いが積算基準と合わない理由

公開 2026年8月25日

目次8項目

図面からの数量拾いは、見積をつくる工程のなかで時間のかかる作業です。実務では、2次元の図面を見ながら手で拾うか、拾い出し専用のソフトを使う形が広く使われています。

一方で、設計の段階からBIMのモデルで進む仕事が増えてきました。モデルには部材の形状と属性が入っているため、数量はそこから取り出せるはずだ、という期待が出てきます。

ポイントはここです。BIMの数量拾いで出るのは「モデルに入っているとおりの数量」であって、積算基準に沿った数量ではありません

ここでは、BIMの数量拾いについて、仕組み、積算とずれる理由、国の試行で課題に挙がっている点、そして人が見る部分を順に整理します。

BIMの数量拾いはどういう仕組みか

BIMの数量拾いは、モデルに入っている部材の情報を集計することで成り立っています。手で図面を測る作業とは、出発点が違います。

モデルの中では、壁や柱や建具が「形のあるもの」として入力されています。それぞれに寸法と、材料や仕上げといった属性が付いています。この属性を条件にして集計すると、数量の一覧が出てきます。

そのため、2次元の図面から拾う場合と違って、線を追う作業や縮尺を確認する作業がありません。集計の条件さえ決まっていれば、数量そのものは一瞬で出ます

とはいえ、速く出ることと使えることは別の話になります。出てきた数量をそのまま見積に載せられるかというと、そうはならない場面が多くあります。次の節がその理由です。

もう1つ押さえておきたいのは、モデルの作り方が会社や設計者によって違うことです。同じ建物を表すモデルでも、部材の分け方や属性の付け方には幅があります。受け取ったモデルがどういう考え方で作られているかを見ないまま集計すると、出てきた数量の意味が分からなくなります。

そのため、最初に見るのは数量そのものではなく、モデルの中身です。部材がどの単位で入っているか、属性に何が入っているか、入っていない部位はどれか。この3つを確かめてから集計すると、後の突き合わせが速く終わります。

  • モデルに入力する設計の段階 部材の形状寸法材料・仕上げの属性
  • 条件を決めて集計するBIMソフトの機能 部材の種類で絞る属性で分ける一覧に書き出す
  • 積算の条件を足すここは人の作業 控除の決まり割増施工の手間
  • 見積の形にする積算ソフト 単価を掛ける内訳を出す
3つめを飛ばすと、モデルの数量がそのまま見積に載ってしまう

BIMの数量拾いが積算とずれる理由

BIMの数量拾いで出た数量は、積算基準で出した数量と一致しないことがあります。理由は2つに分かれます。

1つめは、入力のしかたです。BIMのソフトが決めているルールどおりに入力していないと、集計される数量も変わってきます。同じ壁でも、1枚として入れるか、階ごとに分けて入れるかで、面積の出方が違ってきます。

2つめは、数え方そのものの違いです。モデルは入力された形状をそのまま測りますが、積算には控除や割増の決まりがあります。開口部をどこから引くか、重なる部分をどちらに寄せるか。こうした条件はモデルの中には入っていません。

モデルが出す数量積算基準の数量
測るもの入力された形状基準に沿った数量
開口部の控除入力次第基準で決まっている
施工の手間入らない割増などで入る
変わる要因入力のしかた基準の版・発注者

どちらかが間違っているのではなく、目的が違うので数え方が違う、という整理にしておくと迷いません。そのうえで、差が出た理由を説明できる状態にしておくと、社内でも発注者との話でも使えます。

実務で差が出やすいのは、仕上げの面積と、躯体の重なる部分です。仕上げは下地との関係で数え方が変わり、躯体は柱と梁の取り合いをどちらに含めるかで数量が動きます。どちらもモデルの入力だけでは決まらず、基準の側で決まっています。

逆に、建具や設備機器のような個数物は差が出にくい部分です。数えるものがはっきりしていて、控除や割増の考え方が入らないためです。差が出やすい部位と出にくい部位を分けておくと、確認の時間を短くできます

BIMから出した数量
部材数量単位属性
数量拾い表(積算用)
項目数量単位控除・割増
色が付いた列がそろっていれば突き合わせられる。右端の列はモデルには無い

BIMの数量拾いで国の試行が示していること

BIMの数量拾いについては、国でも取り組みが進んでいます。国土交通省の官庁営繕では、2023年度から「BIMデータを活用した積算業務」の試行が始まっています。

その試行では、BIMデータから形状の情報と属性の情報を抽出し、そこへ積算に必要な条件やデータを追加して積算を行う、という形が取られています。モデルから出した数量がそのまま積算になるのではなく、条件を足す工程が前提に置かれている点が参考になります。

効率の面では、通常の積算業務と比べて3割程度の効率化になる仕組みだ、という報告も出ています。全部が自動になるのではなく、3割という数字が現実的な目安として示されているところが、判断の材料になります。

一方で、課題として挙がっている点もあります。積算ソフトへデータを移したあと、そのソフトの上だけで追加や修正を行うことになり、もとのBIMのモデルとの乖離が発生するという指摘です。ここが、この記事でいちばん大きい継ぎ目になります。

乖離が起きると困るのは、設計変更が来たときです。モデルは新しくなっているのに、積算側には前回足した条件が残っています。どちらを基準にするかを決めていないと、変更のたびに条件を入れ直すことになります。

この問題は、道具を増やしても消えません。モデルと積算は目的が違うので、完全に同じ内容にはならないためです。消すのではなく、どこがずれているかを分かる形にしておく、という扱いが現実的になります。

  • BIMのモデル 形状と属性の情報 数量の一覧集計の条件はモデル側で決める
  • 数量の一覧 積算の条件を足す 数量拾い表控除・割増・施工の手間
  • 数量拾い表 単価を掛ける 工事見積書内訳が出る形で
  • 積算ソフト側の修正 モデルに戻らない BIMとの乖離国の試行で課題に挙がっている点
BIMの数量拾いの流れ。いちばん下だけが逆向きに戻れていない

BIMの数量拾いとモデルの乖離をどう扱うか

BIMの数量拾いを続けていくと、モデルと積算の内容が離れていきます。積算の側で足した条件や修正が、モデルには戻らないためです。

実務での扱い方は、大きく2つに分かれます。1つは、モデルを正としてそのつど拾い直す形。もう1つは、ある時点のモデルを基準に決めて、それ以降の修正は積算側で持つ形です。

前者は、設計が動いている段階に向きます。モデルが変われば数量も変わるので、拾い直すほうが早くなります。後者は、着工が近づいて条件が固まってからに向きます。そのつど拾い直すと、足した条件が毎回消えてしまうためです。

どちらにしても、いつのモデルから拾った数量なのかを記録しておくことが前提になります。モデルの版と、拾った日付と、足した条件。この3つが残っていれば、後から差の理由をたどれます。

記録する場所は、専用の仕組みでなくても構いません。拾い表の先頭に3行だけ書いておく形でも役目を果たします。大事なのは場所より、毎回同じところに書いてあることです。

あわせて、足した条件は文章で残しておくと後で使えます。「開口部は何平方メートル以上を控除する」「柱と梁の取り合いは柱に含める」。数字だけを直すと、なぜその数字なのかが次の人に伝わりません。

BIMの数量拾いで人が見る部分

BIMの数量拾いを入れても、人が見る部分は残ります。集計の条件と、モデルに入っていないものです。

集計の条件は、どの属性で分けるかという設定です。設定が変われば出てくる数量も変わるので、ここは自動になりません。よく使う条件を決めて保存しておくと、人によって結果が変わることを防げます。

モデルに入っていないものは、仮設、残材、施工の手間、そして図面に描かれていない範囲です。いずれも設計のモデルには出てこないため、拾い表の側で足すことになります。モデルが完全であるほど、足す量は減りますが、ゼロにはなりません

項目BIMで出るか補足
部材の数量出る入力のとおり
開口部の控除条件次第積算基準に合わせて設定する
仮設・残材出ない拾い表の側で足す
施工の手間出ない歩掛や割増で見る
図面に無い範囲出ない見込みは人が決める

BIMの数量拾いを小さく試す順序

BIMの数量拾いは、いきなり本番の見積で使わないほうが判断がつきます。比べる相手がないと、出た数量が妥当かどうかを確かめられないためです。

過去に手で拾った物件を1件選んで、同じモデルから拾い直す形が確実です。項目ごとに突き合わせると、どの部材で差が出るのかが見えてきます。合計だけを比べると、多い項目と少ない項目が打ち消し合って差が隠れます。

差が出た項目については、入力のしかたが原因なのか、数え方の違いが原因なのかを分けておきます。前者は設計側と話す内容で、後者は積算の条件として毎回足す内容になります。

そのうえで、試すのは1人に絞るほうが早く進みます。複数人が別の条件で集計すると、結果の差が道具のせいなのか設定のせいなのか分からなくなるためです。

かかった時間も測っておくと判断が具体的になります。集計そのものの時間だけでなく、モデルの中身を確かめる時間と、条件を足す時間まで含めた合計で比べる形です。集計が一瞬でも、確かめに半日かかるなら全体では変わりません。

国の試行で示されている3割という数字は、この合計で見たときの目安として使えます。半分になると見込んで計画を組むと、たいてい足りなくなります

2次元の図面から拾う

  1. 図面を広げて縮尺を確認
  2. 部位ごとに測る
  3. 拾い表に書き出す
  4. 変更が出たら測り直す

変更のたびに最初から

BIMのモデルから拾う

  1. 集計の条件を決める
  2. 数量の一覧が出る
  3. 積算の条件を足す
  4. 変更はモデル側で反映

足した条件は残す工夫が要る

BIMの数量拾いで減るのは測る時間。足す条件の管理は新しく発生する

BIMの数量拾いを設計側とそろえる

BIMの数量拾いの精度は、施工側の工夫だけでは上がりません。もとのモデルを作るのは設計側なので、そこで何が入力されているかが上限になります。

そのため、モデルを受け取る段階で確認しておくと後が楽になります。どの部材まで入力されているか、属性に何を入れているか、どこまでを設計の範囲としているか。この3つが分かっていれば、足す作業の量が先に読めます。

一般には、設計のモデルには施工の都合が入っていないことが多くあります。仮設も、施工の順序も、現場での納まりの調整も、設計の段階では決まっていないためです。モデルが不完全なのではなく、目的が違うだけという見方をしておくと、話がこじれません。

そのうえで、何度か同じ設計者と組むなら、入力の決まりをすり合わせておくと効いてきます。部材の分け方や属性の名前をそろえてもらえると、集計の条件を毎回作り直さずに済みます。1件ごとの工夫より、2件目以降で効いてくる話になります。

一方で、相手に合わせてもらえないことも多くあります。その場合は、受け取ったモデルの形に合わせて集計の条件を作り、その条件を物件ごとに保存しておく形が現実的です。

BIMの数量拾いと2次元の図面の関係

BIMの数量拾いを入れても、2次元の図面がなくなるわけではありません。受け取る図面の形式は、発注者や設計事務所によって違うためです。

モデルで来る仕事、PDFで来る仕事、紙で来る仕事。この3つが混ざっている状態がしばらく続きます。そのため、モデルが来たときだけBIMで拾い、それ以外は今までの方法で拾うという二本立てになります。

このとき効いてくるのが、拾い表の形をそろえておくことです。どちらの方法で拾っても同じ表に落ちる形にしておけば、後の工程は変わりません。入口が2つでも、出口が1つなら運用は複雑になりません

最後に、モデルが来る仕事が増えるかどうかは、自社では決められません。そのため、投資の判断は受け取っている図面の形式を数えてから決めるほうが外しにくくなります。直近の20件で何件がモデルだったか。この数字が、いちばん確かな材料になります。

よくある質問

BIMを入れれば、積算の担当者は要らなくなりますか。

モデルから数量を出すところは速くなりますが、積算基準に合わせて条件を足す作業は残るのが一般的です。国の試行でも、モデルから抽出した形状と属性の情報に、積算に必要な条件やデータを追加する形が取られています。人数を減らす道具というより、拾いの時間を判断の時間に回す道具として考えるほうが実態に合います。

小さい会社でもBIMの数量拾いは意味がありますか。

受け取る図面がBIMのモデルで来るかどうかで変わります。2次元のCADやPDFしか来ないなら、先にそちらの拾いを速くするほうが効果が出ます。モデルが来る仕事が増えてきた段階で検討する、という順序にしている会社が多くあります。

モデルの数量と、積算した数量が違うときはどちらが正しいですか。

どちらが正しいというより、数え方が違うと考えるほうが実務に合います。モデルは入力されたとおりの形状を測り、積算は基準に沿って控除や割増を入れます。**差が出た理由を説明できる状態**にしておくことが、発注者との話でも社内の判断でも効いてきます。

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