工事台帳の作り方|原価の分け方と実行予算との対比

公開 2026年9月1日

目次8項目

工事が終わってから、この現場で利益が出たのかどうかが分からない。原価が工事ごとに分かれていないと、会社全体の数字しか見えません。

一般には、受注した時点で工事番号を振り、材料費・労務費・外注費・経費をその番号に集めていく形になります。番号が書類に書かれていないと、月末に振り分ける作業がそのまま残ります。

ポイントはここです。工事台帳は、工事番号で書類をつなぐことで、後から原価を追えるようにする帳簿です

ここでは、集める項目、原価の4つの分け方、実行予算との対比、そして月次で回す形を順に整理します。

工事台帳とは何を集める帳簿か

工事台帳は、工事ごとの収入と原価を1枚にまとめる帳簿です。会社全体の決算とは別に、工事の単位で利益を見るために使います。

  1. 1 受注 工事番号を振る
  2. 2 材料費 納品書と請求書から
  3. 3 労務費 出面表と賃金台帳から
  4. 4 外注費 注文書と請求書から
  5. 5 経費 現場経費精算書から
  6. 6 完成 原価を締めて利益を出す
工事台帳は、工事番号を目印に4つの費目を集める

集める先はそれぞれ別の書類ですが、目印はどれも工事番号です。そのため番号を振るところが、この帳簿の出発点になります。

工事番号を先に振る

受注が決まった時点で工事番号を振り、以後の書類すべてに書きます。注文書、納品書、出面表、経費の精算書が対象です。

後から振ると、すでに動いた書類に番号がありません。番号を先に振ると、書類が自然に集まってきます

収入と原価を1枚で見る

原価だけを集めても、利益は分かりません。請負金額と変更の増減も同じ台帳に置きます。

請負金額と原価を1枚に置くと、利益がその場で見える形になります。

完成前でも途中経過が分かる

月ごとに更新していれば、工事の途中でも原価の進み具合が分かります。出来高に対して原価が先行していれば、そこで気づけます。

竣工してから集計する形だと、分かるのが終わった後になります。そのときには打てる手が残っていません。

工事番号の付け方を決めておく

年度と連番を組み合わせる形が広く使われています。途中で付け方を変えると、過去の工事と並べられなくなります。

一度決めた規則は変えない形にしておきます。枝番を使えば、同じ現場の追加工事も同じ系統でまとめられます。

同じ現場で複数の工期に分かれる場合も、枝番で区別できます。

工事台帳が求められる理由

工事台帳は社内の管理のためだけでなく、決算でも使われます。

原価管理のため

  • 工事ごとの利益を出す
  • 実行予算と対比する
  • 次の見積りに生かす
  • 月ごとに更新する

会計のため

  • 未成工事支出金を分ける
  • 完成工事原価を確定
  • 決算で工事を区切る
  • 期末に締める
同じ台帳を、社内の管理と決算の両方が使う

会計では、期末の時点で完成と未完成を分けられることが求められます

工事ごとの利益が見える

会社全体で利益が出ていても、赤字の工事が混ざっていることがあります。工事ごとに分けてはじめて、どの工種や規模で利益が出るかが見えます。

その傾向が分かれば、受注する工事を選ぶ判断にも使えます。

決算で完成と未完成を分ける

期末の時点で完成していない工事の原価は、未成工事支出金として資産に計上します。完成した工事の原価は、完成工事原価として費用になります。

この区分は工事ごとの原価が分かっていないとできません。工事台帳がないと、期末の振り分けができません

税務上の資料としても使う

工事ごとの原価は、税務調査で確認される場面があります。どの工事にいくらかかったかを、書類とあわせて示せる形にしておきます。

集計の根拠になる納品書や請求書も、工事ごとにまとめておきます。

工事台帳に並べる項目

工事台帳は、収入・原価・利益の3段で組みます。

  • 収入請負金額と変更
  • 原価4つの費目
  • 利益差引きと利益率
工事台帳は、収入・原価・利益の3段で組む

収入の段で忘れられやすいのが、変更の増減です。当初の請負金額だけを置いていると、追加工事の分が利益に見えてしまいます。

区分項目どこから拾うか
収入当初の請負金額請負契約書
収入変更の増減変更工事の見積書
原価材料費納品書と請求書
原価労務費出面表と賃金台帳
原価外注費注文書と請求書
原価経費現場経費精算書
利益差引きと利益率収入と原価から計算

様式の欄外に拾う先を書いておくと、担当が代わっても同じ場所から集まります。

変更の増減も収入に入れる

承認された変更の金額を、収入の段に足します。未承認のものは分けて置き、承認された時点で移します。

変更が多い工事では、当初の金額と最終の金額が大きく違います。どちらで利益率を見るかも決めておきます。

費目の区分を社内で固定する

同じ支出でも、材料費に入れるか経費に入れるかで見え方が変わります。社内で区分を1つに決めて、工事をまたいで同じ扱いにします。

区分が工事ごとに違うと、比べることができません。

未払いの分も見込みで入れる

月末の時点で請求書が届いていない分があります。その分を入れずに集計すると、原価が実際より少なく見えます。

見込みで入れておき、請求書が届いた時点で置き換えます。

工事台帳の原価を4つに分ける

原価は材料費・労務費・外注費・経費の4つに分けます。

  • 材料費 30工種で大きく動く
  • 労務費 25自社の職人の分
  • 外注費 35専門工事を頼む分
  • 経費 10現場にかかる費用
原価を100としたときの並び方(工種によって割合は動く)

ただし割合は工種によって大きく変わります。自社で施工する範囲が広い会社は労務費が増え、外注が中心の会社は外注費が増えます。

労務費と外注費を混ぜない

自社が雇用している職人の分は労務費、一人親方や協力会社に払う分は外注費です。契約の形で分かれます。

労務費と外注費を混ぜると、法定福利費の計算も合わなくなります。

経費に何を入れるか決める

仮設のリース料、現場の光熱費、車両の燃料費、安全用品が対象になります。どこまでを工事の経費とし、どこからを一般管理費とするかを決めます。

逆に決めていないと、工事ごとに扱いが変わって比べられません。

材料費は現場ごとに分ける

まとめて仕入れた材料を複数の現場で使う場合、配分の方法を決めます。使った数量で割る形が基本ですが、記録がなければ配分できません。

受払の記録があると、配分の根拠を示せます。

工事台帳と実行予算の対比

台帳の数字だけを見ても、それが多いのか少ないのかは分かりません。比べる相手として実行予算が要ります。

  1. 1 見積り 受注のための金額
  2. 2 実行予算 原価の目標を立てる
  3. 3 工事台帳 実際の原価を集める
  4. 4 予算実績対比 差を工種ごとに見る
  5. 5 対策 残りの工種で調整
実行予算があってはじめて、台帳の数字が判断材料になる

差が出た工種を早く見つけると、残りの工種で調整する余地が残ります。

実行予算は着工前に作る

実行予算は、見積りを自社の原価の目標に組み替えたものです。着工してから作ると、すでに動いた分の目標が後付けになります。

見積りより厳しい目標を置く形が一般的です。

工種の区分をそろえる

実行予算と工事台帳で工種の区分が違うと、比べられません。見積りの内訳と同じ区分にしておきます。

3つの書類で区分をそろえると、そのまま並べて見られます。

月次で差を見る

月ごとに実行予算と実績を比べ、差の大きい工種を確かめます。差の理由が数量なのか単価なのかを分けて見ます。

早く見つければ、残りの工種で調整できます。

工事台帳でつまずきやすいところ

原価が集まらない原因は、書類に工事番号が書かれていないことにあります。

  1. 受注時に工事番号を振っているか はい次へ いいえまず番号を振る運用にする
  2. 注文書に工事番号を書いているか はい次へ いいえ様式に番号欄を足す
  3. 請求書に工事名が入っているか はい次へ いいえ取引先に依頼する
  4. 出面表に現場名が入っているか はい集計できる状態になっている いいえ現場名の欄を足す

4つがそろうと、月末の振り分けがほとんど要らなくなる

工事台帳に原価が集まる形になっているかの確認

このうち3つ目は相手のある話です。請求書に工事名を書いてもらうよう、取引を始めるときに依頼しておきます。

共通の材料をどう配分するか決める

複数の現場で使う消耗品や工具は、どこかに配分する必要があります。使った現場が分からないものは、経費として按分する形になります。

按分の方法を決めておけば、毎月同じ扱いで処理できます。

月をまたぐ請求を見込みで入れる

締めの後に届く請求書があります。その分を入れないと、月次の原価が実態より少なく出ます。

そのため見込みで入れておき、確定したら置き換える形にします。

小口の経費を集める仕組みを作る

現場で立て替える小口の支出は、集まらないまま消えがちです。精算の様式に工事番号の欄を作り、提出の期限を決めておきます。

一つずつの金額は小さくても、件数が多いと無視できない額になります。

工事台帳の保存期間

工事台帳は複数の制度に関わるため、求められる年数が違います。

  • 建設業法の帳簿 5年 営業に関する帳簿
  • 税務の帳簿書類 7年 欠損金があるとさらに長い
  • 会社法の会計帳簿 10年 帳簿の閉鎖から
  • 住宅の新築工事の図書 10年 営業に関する図書

10年を目安にしておくと、どの制度の求めにも収まります。

工事ごとにまとめて保管する

台帳と、その根拠になる請求書や納品書を工事ごとにまとめます。後から確認を受けたときに、1つの箱から出せます。

逆に年度で分けると、工期が年度をまたぐ工事が分断されます。

電子で持つときは書き出せる形にする

会計のソフトで台帳を持っている場合、書き出せる形を確かめておきます。ソフトを変えたときに、過去の工事が見られなくなることがあります。

完成した工事は、書き出して別に保管する形にしておきます。

完成した工事から順に棚を分ける

進行中の工事と完成した工事を、棚の段階で分けます。完成した分は保存の期限を書いて、順に並べます。

期限が来たものから廃棄できる形になります。

工事台帳を月次で回す形にする

台帳は月次で更新する形にしないと、竣工まで数字が見えません。

  1. 1 月末 現場から資料を集める
  2. 2 5日まで 請求書と出面表を締める
  3. 3 10日まで 台帳に転記する
  4. 4 対比 実行予算と比べる
  5. 5 共有 差の大きい工事を確認
期限を決めておくと、月次の作業が積み残らない

期限を決めていないと、忙しい月ほど後回しになります。そのうえ翌月にまとめて処理すると、2か月分の資料を一度に扱うことになります。

現場からの提出期限を決める

出面表と経費の精算書を、いつまでに本社へ上げるかを決めます。月末の翌営業日までという形が扱いやすくなります。

期限を過ぎた分の扱いも決めておきます。

差の大きい工事だけを確認する

すべての工事を細かく見る時間はありません。実行予算との差が一定を超えた工事だけを確認する形にします。

差の割合で色を分けておけば、見るべき工事がその場で分かります。

竣工時に振り返りを1行残す

竣工したら、予算と実績の差の理由を1行書きます。数量の読み違いなのか、単価の上昇なのかを残します。

竣工時に理由を1行残すと、次の見積りの精度が上がります。

見積りの内訳と並べて見る

竣工したあと、当初の見積りの内訳と実際の原価を工種ごとに並べます。どの工種で読みが甘かったかが、そこで分かります。

差が出た工種は、数量の拾い方に原因があるのか、単価や歩掛が実態と合っていないのかを切り分けます。

歩掛の側に原因があれば、その数字を更新する材料になります。この積み重ねが、次の見積りの精度をつくります。

様式は工事台帳テンプレート、対比には予算実績対比表からダウンロードできます。

よくある質問

工事台帳は工事ごとに1冊作るのですか。

工事ごとに1つ作る形が一般的です。工事番号を振り、その番号で見積書・注文書・請求書をつなげておくと、原価の集計がそのまま進みます。小口の工事が多い会社では、月ごとにまとめて1つにする形もあります。

工事台帳と建設業法の帳簿は同じものですか。

別のものとして扱う形が一般的です。建設業法で備える帳簿は、営業所ごとに請負契約の内容などを記載するもので、工事台帳は原価を集める帳簿です。工事台帳の内容が帳簿の添付資料として使われる場面はあります。

未成工事支出金との関係はどうなりますか。

完成していない工事にかかった原価は、未成工事支出金として資産に計上する扱いが一般的です。工事台帳で工事ごとの原価を集めておくと、決算のときに完成した工事と未完成の工事を分けやすくなります。

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