熱中症対策の記録|WBGTの測り方と体制の届出
公開 2026年8月23日
目次8項目
- 1熱中症対策の記録が求められる理由
- 記録が無いと対策が無かったことになる
- 元請から提出を求められる
- 記録は日単位で残す
- 2熱中症対策で使うWBGT値の測り方
- 測る場所を作業位置に合わせる
- 測る時刻を決めておく
- 公表値との使い分け
- 測る機器を用意して確かめる
- 3熱中症対策のWBGT値による判断
- 休憩の取り方を決めておく
- 作業時間をずらす
- 判断した記録を残す
- 4熱中症対策の体制を整える
- 発見の仕組みを作る
- 連絡先を掲示する
- 処置の道具を用意する
- 水分と塩分を用意する
- 5熱中症対策と発症したときの対応
- 冷やす場所を決めておく
- 記録は時刻とともに残す
- 再発を防ぐ
- 持病や服薬の状況を把握する
- 6熱中症対策の記録に書く項目
- 作業日報に組み込む
- 現場に掲示する
- 元請に共有する
- 記録の保存期間を決める
- 7熱中症対策で見落とされやすい場面
- 暑くなり始めの時期に手を入れる
- 新しく入った人を分けて見る
- 屋内の作業も対象にする
- 8熱中症対策を工程と教育に組み込む
- 夏の工程に余裕を入れる
- 教育で症状を伝える
- 協議組織で振り返る
- 前の年の記録を見てから工程を組む
「対策済」とだけ書かれた記録は、後から何をしたのかを説明できません。熱中症の対策で問われるのは、どの数値を見てどう判断したかです。
一般には、作業する場所でWBGT値を測り、その値に応じて休憩や作業時間を調整します。その判断を日ごとの記録に残す形になります。測っていても記録がなければ、対策そのものが無かったことになります。
ポイントはここです。熱中症対策は、測る・判断する・記録するの3つがそろってはじめて体制になります。
ここでは、WBGT値の測り方と判断、体制の作り方、記録に書く項目、そして見落とされやすい場面を順に整理します。
熱中症対策の記録が求められる理由
熱中症対策でおさえるのは、指標・体制・周知の3つです。
- WBGT判断の基準になる指数
- 体制発見・連絡・処置の手順
- 周知関係者に伝えておく
体制を作っていても、現場の作業者が知らなければ機能しません。
そのため書面を整えるだけでなく、朝礼や教育で伝えるところまでが対策になります。
記録が無いと対策が無かったことになる
災害が起きたあとに確認を受けるのは、その日に何をしていたかです。測定の値も、休憩の回数も、記録がなければ示せません。
日ごとに残しておけば、経過をそのまま説明できます。
元請から提出を求められる
夏場の現場では、元請から熱中症対策の記録の提出を求められる場面があります。様式が示される場合もあります。
着工の段階で、求められる内容と提出の周期を確かめておきます。
記録は日単位で残す
週にまとめて書くと、その日の判断が思い出せません。測った時点で書く形にしておきます。
作業日報に欄を作れば、書く場所を増やさずに済みます。
熱中症対策で使うWBGT値の測り方
熱中症対策で気温だけを見ると、体が受ける暑さを表せません。
| 指標 | 反映されるもの |
|---|---|
| 気温 | 空気の温度のみ |
| 湿度 | 汗が蒸発しやすいか |
| 輻射熱 | 日射やアスファルトからの照り返し |
| WBGT | 上の3つを合わせた指数 |
湿度が高いと汗が蒸発せず、体温が下がりません。そのため気温が同じでも、湿度によって危険の度合いが変わります。
気温だけで判断する
- 曇りの日を安全だと思う
- 湿度の高い日を見落とす
- 屋内の作業を対象外にする
- 照り返しの強い場所を見落とす
WBGTで判断する
- 曇りでも湿度が高ければ止める
- 湿度が数値に入っている
- 屋内でも測る
- 測る場所を作業位置に合わせる
右側は、どれも作業する場所そのものを測る形になっています。
測る場所を作業位置に合わせる
事務所の前で測った値と、屋上や地下で作業している場所の値は違います。実際に人が作業している位置で測ります。
作業の場所が複数ある現場では、それぞれで測ります。
測る時刻を決めておく
朝と昼過ぎの2回という形が広く使われています。時刻を決めておけば、日をまたいで比べられます。
値が上がりやすい時間帯が分かれば、工程の組み方も変えられます。
公表値との使い分け
環境省が地域ごとの予測値を公表しています。前日の準備や、その日の見通しを立てるときに使えます。
ただし現場の値とは差が出ます。判断に使うのは、その場で測った値にします。
測る機器を用意して確かめる
WBGTを測る機器は、黒球の付いたものを使います。温湿度計だけでは輻射熱が入らないため、値が低く出ます。
夏に入る前に、機器が動くかを確かめておきます。電池が切れていて測れないという場面が実際にあります。
熱中症対策のWBGT値による判断
熱中症対策では、測った値に応じて取る措置の重さが変わります。
31を超えた日に作業を続けるなら、理由と追加の措置を記録に残す形が確実です。
休憩の取り方を決めておく
値が上がったときに、何分作業して何分休むかを決めておきます。その場で判断すると、作業を優先しがちになります。
決めた基準を掲示しておけば、現場でも守られます。
作業時間をずらす
値が高くなる時間帯を避けて、朝早くから作業する形があります。昼の時間を長く取って、暑い時間帯を外す方法もあります。
近隣への影響もあるため、作業できる時間の範囲で組みます。
判断した記録を残す
値を測って、それに応じて何をしたかを書きます。測っただけで措置を書いていないと、判断が見えません。
休憩を増やしたのか、作業を止めたのかを残します。
そのうえで休憩の場所と時間も、あわせて決めておきます。
止めた日の作業をどこで取り返すかも、工程に入れておきます。
熱中症対策の体制を整える
体制は、発見から記録までの5段階を先に決めておきます。
- 1 発見 本人・周囲が異変に気づく
- 2 連絡 職長・現場代理人へ
- 3 判断 重症度を見る
- 4 処置 冷却・水分・救急要請
- 5 記録 時刻と経過を残す
5段階のうち、いちばん難しいのは最初の発見です。
本人が不調を言い出しにくい場面や、症状が進むと自分では判断できなくなる場面があるためです。
発見の仕組みを作る
2人1組で作業する、休憩のたびに声をかけるといった形にします。1人で作業する場面を減らすことが、そのまま発見の早さになります。
体調の確認を朝礼で行う現場もあります。
連絡先を掲示する
職長、現場代理人、救急への連絡先を1枚にまとめて掲示します。現場の住所と目印も書いておきます。
救急に伝える内容を書いておけば、その場で読み上げられます。
処置の道具を用意する
氷、冷却剤、水分、体温計を用意します。どこに置いてあるかを、全員が分かる形にします。
夏の初めに中身を確かめ、使ったら補充します。
水分と塩分を用意する
水だけでは、汗で失われた塩分が戻りません。経口補水液や塩分の入った飴を用意します。
現場に置いて、いつでも取れる形にしておきます。自分で持ってくる形にすると、忘れた人が出ます。
熱中症対策と発症したときの対応
迷ったときは、救急要請する側を選ぶ形が安全です。
- 意識がはっきりしないか はい直ちに救急要請 いいえ次へ
- 自分で水分が取れないか はい直ちに救急要請 いいえ次へ
- 冷却しても改善しないか はい医療機関へ いいえ次へ
- 症状が軽く改善したか はい経過を観察し記録する いいえ医療機関へ
迷ったときは、救急要請する側を選ぶ形が安全
自分で水分が取れない状態は、重症のサインとして扱われます。
冷やす場所を決めておく
日陰で風の通る場所か、冷房のある場所を決めておきます。その場で探すと、その間に症状が進みます。
休憩所を兼ねる形にしておくと、移動も短くなります。
記録は時刻とともに残す
発症した時刻、処置を始めた時刻、搬送した時刻を残します。経過が時刻で追えると、医療機関でも状況が伝わります。
その日のWBGT値と、作業していた内容もあわせて書きます。
再発を防ぐ
症状が軽く回復した場合も、その日はその作業に戻さない形にします。翌日以降の配置も、様子を見ながら決めます。
なぜ起きたのかを振り返り、体制の側を直します。
持病や服薬の状況を把握する
持病がある人や、薬を飲んでいる人は影響を受けやすくなります。健康診断の結果や、本人からの申し出で把握します。
把握した内容は、必要な範囲だけを職長に伝えます。配置や休憩の取り方を変える判断につながります。
熱中症対策の記録に書く項目
熱中症対策の記録は、日常のものと発症時のものに分かれます。
| 記録の種類 | 書く項目 |
|---|---|
| 日常の記録 | 測定の時刻、場所、WBGT値、取った措置 |
| 日常の記録 | 休憩の回数と時間、作業時間の調整 |
| 日常の記録 | 体調確認の結果(人数、要注意者の有無) |
| 発症時の記録 | 発症した時刻、場所、作業の内容 |
| 発症時の記録 | 症状、応急処置の内容、搬送の有無 |
| 発症時の記録 | 連絡した先と時刻、その後の経過 |
このうち日常の記録は毎日、発症時の記録はその都度になります。どちらも数字と時刻が入っているかで、後からの説明のしやすさが変わります。
説明が難しい記録
- 「対策済」だけが並ぶ
- 測定値が入っていない
- 休憩を取ったかが分からない
- 発症時の時刻が無い
説明のつく記録
- WBGT値が数字で入っている
- 測定の時刻と場所がある
- 休憩の回数と時間が書いてある
- 発症から搬送まで時刻が追える
右側は、どれも数字と時刻が入っています。
作業日報に組み込む
熱中症の記録だけを別の紙にすると、書く場所が増えます。作業日報にWBGTと措置の欄を足せば、そのまま残ります。
夏の期間だけ様式を差し替える形もあります。
現場に掲示する
測った値と、その日の休憩の取り方を掲示します。作業する人が、自分でも判断できる材料になります。
数値の意味を添えておくと、伝わり方が変わります。
元請に共有する
求められている場合は、決められた周期で提出します。求められていなくても、協議組織の場で共有できます。
他社の記録と並べると、現場全体の状況が見えます。
記録の保存期間を決める
熱中症の記録をどれだけ残すかを決めておきます。災害が起きたときに、その日の状況を示す資料になります。
工事の書類と同じ年数に合わせておくと、まとめて処分できます。年度ごとに綴じて、表紙に期限を書いておきます。
熱中症対策で見落とされやすい場面
暑さに慣れているかどうかが、気温より効くことがあります。
| 見落とされやすい場面 | 起きる理由 |
|---|---|
| 梅雨明け直後 | 体が暑さに慣れていない |
| 曇りで湿度の高い日 | 気温が低く油断する |
| 屋内の作業 | 風が通らず熱がこもる |
| 作業開始から数日以内 | 新しく入った人が慣れていない |
| 午前中の作業 | 昼をピークと思い込む |
| 休憩から戻った直後 | 体温が下がりきっていない |
どれも「真夏の午後の屋外」という思い込みから外れる場面です。そのため気温だけを見ていると気づけません。
想定しがちな場面
- 真夏の午後
- 屋外の直射日光下
- 気温35度を超える日
- ベテランより新人
実際に多い場面
- 梅雨明け直後の数日
- 湿度の高い曇りの日
- 風の通らない屋内
- 現場に入って数日以内の人
暑くなり始めの時期に手を入れる
梅雨明けの直後は、まだ体が暑さに慣れていません。気温が急に上がる時期に、対策を始めます。
7月に入ってからでは遅い年もあります。
新しく入った人を分けて見る
現場に入って数日の人は、暑さにも作業にも慣れていません。最初の数日は作業の量を抑える形にします。
入ったばかりの人を別に見ると、発症を減らせます。
屋内の作業も対象にする
風の通らない屋内は、屋外より値が高くなることがあります。地下や、開口部の少ない部屋が対象です。
屋内で作業する日も、その場所で測ります。
熱中症対策を工程と教育に組み込む
対策は、工程・教育・測定・判断・振り返りが回ってはじめて効きます。
- 1 工程を組む 夏の作業に余裕を持たせる
- 2 教育する 症状と処置を伝える
- 3 測る 毎日WBGTを記録
- 4 判断する 基準に沿って休む
- 5 振り返る 協議組織で共有
いちばん上流にある工程の余裕が、実は最も効きます。
工程に余裕がなければ、値が高くても作業を止められません。
夏の工程に余裕を入れる
暑い時期にかかる工種は、日数に余裕を持たせて組みます。止めた日を取り返せる形にしておきます。
工程の段階で決まっていないと、現場の判断では止められません。
教育で症状を伝える
どんな症状が出たら知らせるかを、作業する人に伝えます。自分では気づきにくいことも伝えます。
新しく入る人には、受入教育の中で伝えます。
協議組織で振り返る
夏が終わったら、その年の記録を振り返ります。発症があった日の状況や、値が高かった時期を確かめます。
翌年の工程と対策に反映します。
前の年の記録を見てから工程を組む
前の年に値が高かった時期と、発症があった日を確かめます。その時期に重い作業を置かない形で工程を組みます。
記録が残っていれば、感覚ではなく数字で判断できます。数年分をためると、その現場の傾向も見えてきます。
様式は熱中症予防・WBGT記録テンプレートからダウンロードできます。作業の手順は作業手順書、ミーティングの記録は安全ミーティング報告書にまとめています。
よくある質問
WBGT値は現場で測らないといけませんか。
作業を行う場所で測る形が基本になります。環境省が公表している暑さ指数は地点ごとの値で、現場の日射や風の状況までは反映されません。屋外の直射日光下や、風の通らない場所では、公表値より高くなることがあります。
熱中症の記録は何を残せばよいですか。
測定した日時と場所、WBGT値、そのときに取った措置、作業時間の調整の内容を残す形が広く行われています。発症した場合は、発症した時刻、症状、応急処置、搬送の有無まで記録します。
涼しい日でも測る必要はありますか。
暑さ指数が上がる時期は、毎日測っておく形が確実です。朝は涼しくても昼に急に上がる日があり、測っていないと判断の根拠が残りません。低い日は「低かった」という記録が残ります。