熱中症対策の記録|WBGTの測り方と体制の届出

公開 2026年8月23日

目次8項目

「対策済」とだけ書かれた記録は、後から何をしたのかを説明できません。熱中症の対策で問われるのは、どの数値を見てどう判断したかです。

一般には、作業する場所でWBGT値を測り、その値に応じて休憩や作業時間を調整します。その判断を日ごとの記録に残す形になります。測っていても記録がなければ、対策そのものが無かったことになります。

ポイントはここです。熱中症対策は、測る・判断する・記録するの3つがそろってはじめて体制になります

ここでは、WBGT値の測り方と判断、体制の作り方、記録に書く項目、そして見落とされやすい場面を順に整理します。

熱中症対策の記録が求められる理由

熱中症対策でおさえるのは、指標・体制・周知の3つです。

  • WBGT判断の基準になる指数
  • 体制発見・連絡・処置の手順
  • 周知関係者に伝えておく
熱中症対策でおさえる3つ

体制を作っていても、現場の作業者が知らなければ機能しません

そのため書面を整えるだけでなく、朝礼や教育で伝えるところまでが対策になります。

記録が無いと対策が無かったことになる

災害が起きたあとに確認を受けるのは、その日に何をしていたかです。測定の値も、休憩の回数も、記録がなければ示せません。

日ごとに残しておけば、経過をそのまま説明できます。

元請から提出を求められる

夏場の現場では、元請から熱中症対策の記録の提出を求められる場面があります。様式が示される場合もあります。

着工の段階で、求められる内容と提出の周期を確かめておきます。

記録は日単位で残す

週にまとめて書くと、その日の判断が思い出せません。測った時点で書く形にしておきます。

作業日報に欄を作れば、書く場所を増やさずに済みます。

熱中症対策で使うWBGT値の測り方

熱中症対策で気温だけを見ると、体が受ける暑さを表せません。

指標反映されるもの
気温空気の温度のみ
湿度汗が蒸発しやすいか
輻射熱日射やアスファルトからの照り返し
WBGT上の3つを合わせた指数

湿度が高いと汗が蒸発せず、体温が下がりません。そのため気温が同じでも、湿度によって危険の度合いが変わります。

気温だけで判断する

  • 曇りの日を安全だと思う
  • 湿度の高い日を見落とす
  • 屋内の作業を対象外にする
  • 照り返しの強い場所を見落とす

WBGTで判断する

  • 曇りでも湿度が高ければ止める
  • 湿度が数値に入っている
  • 屋内でも測る
  • 測る場所を作業位置に合わせる
気温が同じでも、湿度と日射でWBGTは大きく変わる

右側は、どれも作業する場所そのものを測る形になっています

測る場所を作業位置に合わせる

事務所の前で測った値と、屋上や地下で作業している場所の値は違います。実際に人が作業している位置で測ります。

作業の場所が複数ある現場では、それぞれで測ります。

測る時刻を決めておく

朝と昼過ぎの2回という形が広く使われています。時刻を決めておけば、日をまたいで比べられます。

値が上がりやすい時間帯が分かれば、工程の組み方も変えられます。

公表値との使い分け

環境省が地域ごとの予測値を公表しています。前日の準備や、その日の見通しを立てるときに使えます。

ただし現場の値とは差が出ます。判断に使うのは、その場で測った値にします

測る機器を用意して確かめる

WBGTを測る機器は、黒球の付いたものを使います。温湿度計だけでは輻射熱が入らないため、値が低く出ます。

夏に入る前に、機器が動くかを確かめておきます。電池が切れていて測れないという場面が実際にあります。

熱中症対策のWBGT値による判断

熱中症対策では、測った値に応じて取る措置の重さが変わります。

  • 31以上(危険) 100作業の中止を検討
  • 28〜31(厳重警戒) 75休憩を大幅に増やす
  • 25〜28(警戒) 50定期的に休憩
  • 25未満(注意) 25水分補給を促す
WBGT値と、取る措置の重さの目安

31を超えた日に作業を続けるなら、理由と追加の措置を記録に残す形が確実です

休憩の取り方を決めておく

値が上がったときに、何分作業して何分休むかを決めておきます。その場で判断すると、作業を優先しがちになります。

決めた基準を掲示しておけば、現場でも守られます。

作業時間をずらす

値が高くなる時間帯を避けて、朝早くから作業する形があります。昼の時間を長く取って、暑い時間帯を外す方法もあります。

近隣への影響もあるため、作業できる時間の範囲で組みます。

判断した記録を残す

値を測って、それに応じて何をしたかを書きます。測っただけで措置を書いていないと、判断が見えません。

休憩を増やしたのか、作業を止めたのかを残します。

そのうえで休憩の場所と時間も、あわせて決めておきます。

止めた日の作業をどこで取り返すかも、工程に入れておきます。

熱中症対策の体制を整える

体制は、発見から記録までの5段階を先に決めておきます。

  1. 1 発見 本人・周囲が異変に気づく
  2. 2 連絡 職長・現場代理人へ
  3. 3 判断 重症度を見る
  4. 4 処置 冷却・水分・救急要請
  5. 5 記録 時刻と経過を残す
熱中症の体制は、この5段階を先に決めておく

5段階のうち、いちばん難しいのは最初の発見です

本人が不調を言い出しにくい場面や、症状が進むと自分では判断できなくなる場面があるためです。

発見の仕組みを作る

2人1組で作業する、休憩のたびに声をかけるといった形にします。1人で作業する場面を減らすことが、そのまま発見の早さになります。

体調の確認を朝礼で行う現場もあります。

連絡先を掲示する

職長、現場代理人、救急への連絡先を1枚にまとめて掲示します。現場の住所と目印も書いておきます。

救急に伝える内容を書いておけば、その場で読み上げられます。

処置の道具を用意する

氷、冷却剤、水分、体温計を用意します。どこに置いてあるかを、全員が分かる形にします。

夏の初めに中身を確かめ、使ったら補充します。

水分と塩分を用意する

水だけでは、汗で失われた塩分が戻りません。経口補水液や塩分の入った飴を用意します。

現場に置いて、いつでも取れる形にしておきます。自分で持ってくる形にすると、忘れた人が出ます。

熱中症対策と発症したときの対応

迷ったときは、救急要請する側を選ぶ形が安全です。

  1. 意識がはっきりしないか はい直ちに救急要請 いいえ次へ
  2. 自分で水分が取れないか はい直ちに救急要請 いいえ次へ
  3. 冷却しても改善しないか はい医療機関へ いいえ次へ
  4. 症状が軽く改善したか はい経過を観察し記録する いいえ医療機関へ

迷ったときは、救急要請する側を選ぶ形が安全

熱中症が疑われるときの判断

自分で水分が取れない状態は、重症のサインとして扱われます

冷やす場所を決めておく

日陰で風の通る場所か、冷房のある場所を決めておきます。その場で探すと、その間に症状が進みます。

休憩所を兼ねる形にしておくと、移動も短くなります。

記録は時刻とともに残す

発症した時刻、処置を始めた時刻、搬送した時刻を残します。経過が時刻で追えると、医療機関でも状況が伝わります。

その日のWBGT値と、作業していた内容もあわせて書きます。

再発を防ぐ

症状が軽く回復した場合も、その日はその作業に戻さない形にします。翌日以降の配置も、様子を見ながら決めます。

なぜ起きたのかを振り返り、体制の側を直します。

持病や服薬の状況を把握する

持病がある人や、薬を飲んでいる人は影響を受けやすくなります。健康診断の結果や、本人からの申し出で把握します。

把握した内容は、必要な範囲だけを職長に伝えます。配置や休憩の取り方を変える判断につながります。

熱中症対策の記録に書く項目

熱中症対策の記録は、日常のものと発症時のものに分かれます。

記録の種類書く項目
日常の記録測定の時刻、場所、WBGT値、取った措置
日常の記録休憩の回数と時間、作業時間の調整
日常の記録体調確認の結果(人数、要注意者の有無)
発症時の記録発症した時刻、場所、作業の内容
発症時の記録症状、応急処置の内容、搬送の有無
発症時の記録連絡した先と時刻、その後の経過

このうち日常の記録は毎日、発症時の記録はその都度になります。どちらも数字と時刻が入っているかで、後からの説明のしやすさが変わります。

説明が難しい記録

  • 「対策済」だけが並ぶ
  • 測定値が入っていない
  • 休憩を取ったかが分からない
  • 発症時の時刻が無い

説明のつく記録

  • WBGT値が数字で入っている
  • 測定の時刻と場所がある
  • 休憩の回数と時間が書いてある
  • 発症から搬送まで時刻が追える
数字と時刻が入っているかで、記録の価値が変わる

右側は、どれも数字と時刻が入っています

作業日報に組み込む

熱中症の記録だけを別の紙にすると、書く場所が増えます。作業日報にWBGTと措置の欄を足せば、そのまま残ります。

夏の期間だけ様式を差し替える形もあります。

現場に掲示する

測った値と、その日の休憩の取り方を掲示します。作業する人が、自分でも判断できる材料になります。

数値の意味を添えておくと、伝わり方が変わります。

元請に共有する

求められている場合は、決められた周期で提出します。求められていなくても、協議組織の場で共有できます。

他社の記録と並べると、現場全体の状況が見えます。

記録の保存期間を決める

熱中症の記録をどれだけ残すかを決めておきます。災害が起きたときに、その日の状況を示す資料になります。

工事の書類と同じ年数に合わせておくと、まとめて処分できます。年度ごとに綴じて、表紙に期限を書いておきます。

熱中症対策で見落とされやすい場面

暑さに慣れているかどうかが、気温より効くことがあります。

見落とされやすい場面起きる理由
梅雨明け直後体が暑さに慣れていない
曇りで湿度の高い日気温が低く油断する
屋内の作業風が通らず熱がこもる
作業開始から数日以内新しく入った人が慣れていない
午前中の作業昼をピークと思い込む
休憩から戻った直後体温が下がりきっていない

どれも「真夏の午後の屋外」という思い込みから外れる場面です。そのため気温だけを見ていると気づけません。

想定しがちな場面

  • 真夏の午後
  • 屋外の直射日光下
  • 気温35度を超える日
  • ベテランより新人

実際に多い場面

  • 梅雨明け直後の数日
  • 湿度の高い曇りの日
  • 風の通らない屋内
  • 現場に入って数日以内の人
「暑さに慣れているか」が、気温より効くことがある

暑くなり始めの時期に手を入れる

梅雨明けの直後は、まだ体が暑さに慣れていません。気温が急に上がる時期に、対策を始めます。

7月に入ってからでは遅い年もあります。

新しく入った人を分けて見る

現場に入って数日の人は、暑さにも作業にも慣れていません。最初の数日は作業の量を抑える形にします。

入ったばかりの人を別に見ると、発症を減らせます

屋内の作業も対象にする

風の通らない屋内は、屋外より値が高くなることがあります。地下や、開口部の少ない部屋が対象です。

屋内で作業する日も、その場所で測ります。

熱中症対策を工程と教育に組み込む

対策は、工程・教育・測定・判断・振り返りが回ってはじめて効きます。

  1. 1 工程を組む 夏の作業に余裕を持たせる
  2. 2 教育する 症状と処置を伝える
  3. 3 測る 毎日WBGTを記録
  4. 4 判断する 基準に沿って休む
  5. 5 振り返る 協議組織で共有
熱中症対策は、この5つが回ってはじめて効く

いちばん上流にある工程の余裕が、実は最も効きます

工程に余裕がなければ、値が高くても作業を止められません。

夏の工程に余裕を入れる

暑い時期にかかる工種は、日数に余裕を持たせて組みます。止めた日を取り返せる形にしておきます。

工程の段階で決まっていないと、現場の判断では止められません。

教育で症状を伝える

どんな症状が出たら知らせるかを、作業する人に伝えます。自分では気づきにくいことも伝えます。

新しく入る人には、受入教育の中で伝えます。

協議組織で振り返る

夏が終わったら、その年の記録を振り返ります。発症があった日の状況や、値が高かった時期を確かめます。

翌年の工程と対策に反映します。

前の年の記録を見てから工程を組む

前の年に値が高かった時期と、発症があった日を確かめます。その時期に重い作業を置かない形で工程を組みます。

記録が残っていれば、感覚ではなく数字で判断できます。数年分をためると、その現場の傾向も見えてきます。

様式は熱中症予防・WBGT記録テンプレートからダウンロードできます。作業の手順は作業手順書、ミーティングの記録は安全ミーティング報告書にまとめています。

よくある質問

WBGT値は現場で測らないといけませんか。

作業を行う場所で測る形が基本になります。環境省が公表している暑さ指数は地点ごとの値で、現場の日射や風の状況までは反映されません。屋外の直射日光下や、風の通らない場所では、公表値より高くなることがあります。

熱中症の記録は何を残せばよいですか。

測定した日時と場所、WBGT値、そのときに取った措置、作業時間の調整の内容を残す形が広く行われています。発症した場合は、発症した時刻、症状、応急処置、搬送の有無まで記録します。

涼しい日でも測る必要はありますか。

暑さ指数が上がる時期は、毎日測っておく形が確実です。朝は涼しくても昼に急に上がる日があり、測っていないと判断の根拠が残りません。低い日は「低かった」という記録が残ります。

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