建設業の作業手順書|急所の書き方とKYへの使い方
公開 2026年8月23日
目次8項目
- 1建設業の作業手順書が求められる理由
- 元請から提出を求められる
- 新規入場者教育の材料になる
- 事故が起きたときに見られる
- 作業の単位で作る
- 2建設業の作業手順書のステップの分け方
- 1ステップに動作を1つ
- 準備と片付けも入れる
- 前後の工程とのつながりを書く
- 3建設業の作業手順書の急所の書き方
- 急所は理由の形で書く
- 1ステップに急所は1つか2つ
- 数字で書けるものは数字にする
- 写真や図を添える
- 4建設業の作業手順書の危険と対策
- 「注意する」は対策にならない
- 対策は上から順に検討する
- 保護具は作業ごとに指定する
- 資格と特別教育を書いておく
- 5建設業の作業手順書をKY活動で使う
- 急所を声に出して確認する
- 当日の条件を書き足す
- 気づいた点を手順書に返す
- 6建設業の作業手順書を現場ごとに書き直す理由
- 前の現場の手順書を下敷きにする
- 変えた部分に印を付ける
- 作業が変わったら途中でも作り直す
- 新しく入った人と一緒に読む
- 7建設業の作業手順書と他の安全書類のつながり
- 重機を使う作業は作業計画も要る
- KY活動記録と紐づける
- 教育の記録に手順書名を書く
- 8建設業の作業手順書の運用と保存
- 現場の詰所に置く
- 改訂の履歴を残す
- 会社のひな形として蓄える
- 保存の年数を工事の書類に合わせる
元請に提出するために作った手順書は、ファイルに綴じられたまま開かれません。現場で読まれる手順書は、朝礼で使われる紙として作られています。
一般には、作業を動作の単位に分け、それぞれに急所と対策を書きます。その急所が、その日のKY活動の下敷きになります。提出のためだけに作ると、ステップが粗くなり、現場では使えない紙になります。
ポイントはここです。作業手順書は、提出するための書類ではなくその日の朝に読み合わせる紙として作ると生きます。
ここでは、ステップの分け方、急所の書き方、危険と対策、そしてKY活動での使い方を順に整理します。
建設業の作業手順書が求められる理由
労働安全衛生法は、事業者に対して危険性又は有害性等の調査と、その結果に基づく措置を求めています。調査で見つかった危険を、実際の作業の中でどう避けるかを書いたものが手順書になります。
- 作業ごと工種ではなく作業の単位で作る
- 現場ごと条件が変われば書き直す
- 朝の5分読み合わせに使う
このうち2つ目の「現場ごと」を飛ばすと、前の現場の危険が書かれたままになります。
元請から提出を求められる
安全書類の一部として、着工前に提出を求められる場面があります。その工事で行う作業ごとに、それぞれ作ります。
提出のために作ることになりますが、そのまま現場でも使える形にしておくと二度手間になりません。
新規入場者教育の材料になる
初めて現場に入る人に、その作業の危険を伝えます。手順書があれば、それを見ながら説明できます。
口頭だけだと、伝える内容が人によって変わります。
事故が起きたときに見られる
災害が起きたあと、その作業に手順書があったかが確かめられます。手順どおりだったのか、外れていたのかで原因の見方が変わります。
手順書がなければ、その事実も原因の1つになります。
作業の単位で作る
「内装工事」ではなく「軽量鉄骨下地の組立て」という単位で作ります。工種でまとめると、作業ごとの危険が混ざります。
同じ工種でも、高所での作業と床での作業では危険が違います。分けて作ると、それぞれに合った急所が書けます。
建設業の作業手順書のステップの分け方
建設業の作業手順書は、1ステップに1つの動作を入れると急所が書けるようになります。
粗すぎるステップ
- 足場を組み立てる
- 資材を搬入する
- 溶接する
- 片付ける
使えるステップ
- 敷板とジャッキベースを設置する
- 1層目の支柱と手すりを組む
- 床付き布わくを敷く
- 壁つなぎを取り付ける
- 完成後に作業主任者が点検する
右側は、1つのステップに1つの動作が入っています。
逆に左側のように粗いと、どの場面で何に気をつけるのかが書けません。
1ステップに動作を1つ
「組み立てる」ではなく「支柱を建てる」「手すりを取り付ける」と分けます。分けることで、それぞれに急所が付けられます。
10から15ステップに収まる形が、読み合わせに向いています。
準備と片付けも入れる
災害は、本作業より段取りや片付けの場面で起きることがあります。資材を運ぶ場面や、工具をしまう場面も入れます。
準備と片付けを入れると、抜けていた危険が見えてきます。
前後の工程とのつながりを書く
自分たちの作業の前に何があり、後に何が来るかを書きます。他社の作業と重なる場面が、そこで分かります。
作業間連絡調整書とも対応させられます。
建設業の作業手順書の急所の書き方
建設業の作業手順書の急所は、理由と確認の方法までそろえると教育に使えます。
- 1 ステップ 床付き布わくを敷く
- 2 急所 つかみ金具が確実にかかるまで押し込む
- 3 理由 かかっていないと踏み抜く
- 4 確認 敷設後に足で踏んで確かめる
理由まで書いてあると、想定外の場面でも作業者が判断できるようになります。
急所は理由の形で書く
「気をつける」ではなく、何がどうなると危ないかを書きます。そのうえで、どう確かめるかまで添えます。
理由が分かれば、少し違う場面でも応用が利きます。
1ステップに急所は1つか2つ
すべてのステップに5つも急所を書くと、読み合わせが終わりません。そのステップで最も重いものに絞ります。
そのため絞ることで、朝礼で全部を読み上げられます。
数字で書けるものは数字にする
「十分に離れる」ではなく「2m以上離れる」と書きます。数字で書けば、守れているかどうかが見えます。
高さ、距離、角度、時間は数字にできます。
写真や図を添える
言葉だけでは、どの部位のことか伝わらない場面があります。工具の持ち方や、立つ位置は写真のほうが早く伝わります。
前の現場で撮った写真をそのまま使えます。文字を減らせるぶん、読み合わせの時間も短くなります。
建設業の作業手順書の危険と対策
建設業の作業手順書では、危険と対策を対で書きます。
| 予測される危険 | 対策 |
|---|---|
| 開口部からの墜落 | 手すり・中さん・幅木を設置し、作業前に点検する |
| 資材の落下 | 幅木とメッシュシートを取り付け、下部を立入禁止にする |
| 重機との接触 | 誘導員を配置し、作業半径内に立ち入らない |
| はさまれ | 治具の手前を持ち、手を差し込まない位置に立つ |
| 熱中症 | WBGT値を測り、28を超えたら作業時間を短縮する |
対策には効果の高さに順序があります。
上にあるものほど、人の行動に頼らずに効きます。
「注意する」は対策にならない
注意は行動ではないため、実行したかどうかが確かめられません。何をどうするのかを書きます。
「足元に注意」ではなく「通路の資材を撤去してから通る」と書きます。
対策は上から順に検討する
まず作業そのものをなくせないかを考えます。次に設備で防げないか、それから手順で防げないかと降りていきます。
保護具は最後です。それ以外で防げない部分を受け持ちます。
保護具は作業ごとに指定する
すべての作業に同じ保護具を書いても、意味がありません。その作業で必要なものを指定します。
作業ごとに指定すると、なぜ要るのかが伝わります。
資格と特別教育を書いておく
その作業に必要な資格を、手順書の冒頭に書きます。玉掛けや足場の組立て等作業主任者が対象になります。
配置する人がその資格を持っているかを、作業の前に確かめます。作業員名簿と照らせば、その場で分かります。
建設業の作業手順書をKY活動で使う
手順書がその日のKYの下敷きになるかどうかは、3つで決まります。
- 今日と同じ作業の手順書があるか はい次へ いいえ作業前に作る
- 現場の条件と合っているか はい次へ いいえ当日の条件で書き直す
- 作業者全員で読み合わせたか はいKYの材料に使える いいえ朝礼で読み合わせる
3つがそろうと、手順書がその日のKYの下敷きになる
3つのうち、抜けやすいのは現場の条件と合っているかという2番目です。
急所を声に出して確認する
その日に行うステップの急所を、朝礼で読み上げます。全員が同じ内容を聞くことになります。
黙って回覧するより、声に出したほうが残ります。
当日の条件を書き足す
雨が降っている、隣で他社が作業している、資材が仮置きされている。その日だけの条件を書き足します。
KY活動記録の側に書いて、手順書と対で残す形もあります。
気づいた点を手順書に返す
朝礼で出た危険や、作業中に気づいた点を手順書に反映します。その日のうちに書き足すと、記憶が残っているうちに残せます。
次の現場でも、その内容が引き継がれます。
そのうえで職長が書く時間を、作業の時間の中に取っておきます。
休憩中に書かせる形にすると、内容が薄くなります。
建設業の作業手順書を現場ごとに書き直す理由
同じ作業でも、現場が変われば危険の中身が変わります。
変わらない部分
- 作業の基本的な順序
- 必要な資格と特別教育
- 使う工具の種類
- 完成後の点検項目
現場で変わる部分
- 高さと足場の種類
- 周囲の状況(道路・隣家・線路)
- 他社との混在の有無
- 搬入の経路と時間帯
- 天候と季節(凍結・熱中症)
右側は、どれも危険の中身を変えるものです。
前の現場の手順書を下敷きにする
一から作る必要はありません。前の現場のものを下敷きにして、右側の部分を書き換えます。
そのほうが早く、抜けも減ります。
変えた部分に印を付ける
書き換えた箇所に印を付けておきます。朝礼で読み合わせるとき、そこを重点的に伝えられます。
前の現場から来ている人にも、違いが分かります。
作業が変わったら途中でも作り直す
工事の途中で施工の方法が変わることがあります。そのときは、その時点で手順書も書き直します。
古い手順書のまま作業を続けると、書いてある内容と実際が離れます。
新しく入った人と一緒に読む
配置が決まった人と、その作業の手順書を一緒に読みます。分からない部分をその場で聞ける形にします。
一方的に渡すだけでは、読まないまま作業に入ることになります。読んだ記録は、教育の記録に残します。
建設業の作業手順書と他の安全書類のつながり
手順書は、方針と日々の活動の間に立っています。
| 書類 | 作業手順書との関係 |
|---|---|
| 安全衛生計画書 | 現場全体の方針。手順書はその下の具体策 |
| 作業間連絡調整書 | 他社との段取り。手順書の前後の工程と対応させる |
| 車両系建設機械等 作業計画 | 重機を使う作業。手順書と別に必要になる |
| KY活動記録 | 手順書の急所を、その日の条件に当てはめたもの |
| 新規入場者教育の記録 | 手順書を使って教育した記録 |
上から下へ、方針が現場の作業まで降りていく形になります。
- 1 安全衛生計画書 現場全体の方針
- 2 作業手順書 作業ごとの具体策
- 3 KY活動記録 その日の条件を当てる
- 4 教育の記録 誰に伝えたか
上から順に、抽象から具体へ降りていく作りになっています。
重機を使う作業は作業計画も要る
手順書があっても、車両系建設機械を使う作業では作業計画が別に要ります。機械の能力と経路を扱うためです。
2つの書類で、合図の方法などをそろえておきます。
KY活動記録と紐づける
その日に使った手順書の名前を、KY活動記録に書きます。どの作業についてのKYだったかが分かります。
後から見返すときにも、対応が追えます。
教育の記録に手順書名を書く
新規入場者教育で使った手順書の名前を、記録に残します。その人が何を教わったかが分かります。
配置が変わったときに、追加で教育すべき内容も見えます。
建設業の作業手順書の運用と保存
手順書は、作る・確認する・周知する・書き足す・改訂するが回って現場の道具になります。
- 1 作る 職長が現場の条件で
- 2 確認する 安全管理者・元請
- 3 周知する 朝礼で読み合わせ
- 4 書き足す 気づいた点を当日に
- 5 改訂する 版数を上げて残す
作るのは、その作業をいちばんよく知っている職長です。事務所で作ると、実際の動きと違うものになります。
現場の詰所に置く
事務所のファイルにあると、朝礼で使えません。詰所に置いて、その場で開ける形にします。
その日に使う分だけを掲示する方法もあります。
改訂の履歴を残す
いつ何を変えたかを、版数とあわせて残します。災害が起きたとき、その時点の版を示せます。
古い版は回収して、現場に残さないようにします。
会社のひな形として蓄える
現場で使った手順書を、会社の資産として蓄えます。同じ作業を次に行うとき、下敷きとして使えます。
工種ごとに整理しておくと、探す時間が短くなります。
保存の年数を工事の書類に合わせる
作業手順書は、その工事の書類として保管します。災害が起きたときに、どう作業する計画だったかを示す資料になります。
工事関係の帳簿と同じ年数に合わせておくと、まとめて処分できます。年度ではなく工事ごとにまとめておきます。
様式は作業手順書テンプレートからダウンロードできます。KY活動の記録はKY活動記録、重機を使う作業は車両系建設機械等 作業計画にまとめています。
よくある質問
作業手順書は誰が作るのがよいですか。
その作業を実際に行う職長が作る形が広く行われています。作業の順序と急所は、現場で手を動かしている人がいちばん分かっているためです。作った手順書を安全管理者や元請が確認する、という二段構えにしている会社が多くあります。
同じ工種なら手順書を使い回してよいですか。
同じ工種でも、現場の条件が違えば危険も変わります。高さ、足場の種類、周囲の状況、使う機械が変われば、急所も対策も変わります。前の現場の手順書を下敷きにするのは構いませんが、そのまま使うと現場の危険と対応しなくなる点にご注意ください。
作業手順書は何年保存すればよいですか。
法令で年数が定められているものではありません。工事の完成から引渡し後しばらくの間は残しておく会社が多く、事故が起きた工事のものは、そのやり取りが終わるまで保管する形が確実です。