足場の点検記録|点検の時期と記録の残し方
公開 2026年8月23日
目次8項目
- 1足場の点検記録が求められる理由
- 点検が求められる3つの場面
- 記録に残す事項
- 元請の確認を受ける
- 2組立て・変更の後の点検
- 一部でも変えたら点検する
- 全層を見る
- 作業主任者が行う
- 点検する人をあらかじめ指名する
- 3悪天候や地震の後の点検
- 気象情報の確認を朝の手順に入れる
- 休工日と連休の扱い
- 使用を止める判断
- 一側足場の使用に制限がある
- 4毎日の作業前点検
- 上がる前に下から見る
- 手をかける前に確かめる
- 気づいたことを伝える道を作る
- 注文者にも点検の義務がある
- 5足場の点検で見る項目
- 手すりの一時的な取り外し
- 壁つなぎの間隔
- 脚部の沈下
- 朝のルーティンに組み込む
- 6足場の点検記録の様式と運用
- 図面を添えると場所が特定できる
- 写真を残す
- 点検表を足場に近い場所に置く
- 記録の様式に点検者の欄を置く
- 7足場の点検記録から墜落を減らす
- 指摘を箇所ごとに数える
- 作りを変える判断につなげる
- 他の現場にも展開する
- 8足場の点検記録と他の書類のつながり
- 協議組織で共有する
- 安全パトロールとの重複を整理する
- 引渡しまで保存する
組んだときに確かめたから大丈夫、という考え方では足場の点検になりません。作業や天候で、足場の状態は日々変わっていきます。
一般には、組立てや変更の後、悪天候や地震の後、そして毎日の作業前という3つの場面で点検します。それぞれ見る範囲も、記録の残し方も違います。繰り返し確かめる仕組みになっているのは、状態が変わり続けるためです。
ポイントはここです。足場の点検は、組立て後・悪天候の後・毎日の作業前の3つの場面に分かれます。
ここでは、3つの場面ごとの点検、見る項目、記録の残し方、そして他の書類とのつながりを順に整理します。
足場の点検記録が求められる理由
足場からの墜落は、建設業の死亡災害の中で大きな割合を占めます。組んだ直後は問題が無くても、作業や天候で状態が変わるため、繰り返し確かめる仕組みになっています。
- 3つ点検が求められる場面
- 氏名点検した者を記録する
- 作業終了まで記録を保存する期間
このうち氏名の記録は、誰が確かめたのかを明らかにするためのものです。そのため、担当を決めずに回すと、後から確認した人を辿れなくなります。記録が残っていなければ、点検そのものを行ったことを示せません。
点検が求められる3つの場面
組立てや一部の変更の後、悪天候や中震以上の地震の後、そして毎日の作業を始める前の3つです。
このうち最初の2つは記録を残し、足場を使う作業が終わるまで保存します。一方、毎日の作業前点検には、記録の作成までは求められていません。作業前の点検は、日々の確認として行います。
記録に残す事項
点検した年月日と、点検の結果を書きます。異常があった場合は、補修した内容も残します。
点検した人の氏名も記録します。資格のある人が行ったことを示す部分になります。
元請の確認を受ける
現場によっては、点検記録の提出を求められます。安全パトロールのときに確かめられる場面もあります。
そのため記録は現場に置き、すぐ出せる形にしておきます。
組立て・変更の後の点検
足場の点検記録は、組立て後にこの流れを終えてから使う形になります。
- 1 組立て完了 作業が終わった時点
- 2 点検 指名された者が全層を確認
- 3 記録 年月日・結果・氏名
- 4 補修 異常があれば直ちに
- 5 使用開始の表示 使ってよい状態を示す
流れの最後にある表示が、使ってよい合図になります。
逆に表示がないまま使われると、点検を通っていない足場に人が上がります。
一部でも変えたら点検する
全体を組み替えたときだけでなく、一部を外したり足したりしたときも対象です。資材の搬入のために手すりを外した場合も含まれます。
小さな変更ほど、点検を飛ばしがちになります。
全層を見る
作業する階だけでなく、すべての層を見ます。下の層の脚部が沈下していれば、上の層にも影響します。
上から下へ、あるいは下から上へと順序を決めて見ると、抜けが減ります。
作業主任者が行う
足場の組立て等作業主任者など、その足場を理解している人が点検します。あらかじめ点検する人を指名しておきます。
指名されていないと、その場にいた人が形だけ見ることになります。
点検する人をあらかじめ指名する
その場にいた人が見るのではなく、点検する人を先に指名します。足場の構造を理解している人が対象になります。
指名した人が休んだ日の代わりも決めておきます。決めていないと、その日の点検が形だけになります。
悪天候や地震の後の点検
足場の点検記録が要る天候には、目安があります。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 強風 | 10分間の平均風速10m/s以上 |
| 大雨 | 1回の降雨量50mm以上 |
| 大雪 | 1回の降雪量25cm以上 |
| 地震 | 中震(震度4)以上 |
| 足場の組立て・変更 | 一部でも変えたとき |
ただし問題になるのは、人がいない時間帯に天候が荒れた場合です。夜間や休工日の天候を、誰がどう拾うかで点検の有無が変わります。
見落とされやすい場面
- 夜間に強風が吹いた翌朝
- 休工日に地震があった後
- 連休明け
- 台風の接近で数日中止した後
点検が確実に行われる形
- 気象情報を朝礼で確認する
- 休工日の気象を担当者が確認する
- 連休明けは点検から始める工程にする
- 中止の解除に点検を条件として入れる
右側は、どれも仕組みで拾う形にしています。
気象情報の確認を朝の手順に入れる
前日の夜からの気象を、朝礼の前に確かめます。確認する担当を決めておけば、毎朝の手順になります。
風速や降雨量は、気象庁の観測値から確かめられます。
休工日と連休の扱い
休みの日に荒天があっても、誰も現場にいません。休工日の気象を確かめる担当を決めておきます。
連休明けは、点検から始める形で工程を組みます。
使用を止める判断
天候が荒れている最中は、点検そのものが危険です。落ち着いてから行います。
それまでは足場を使わせない形にします。使用を止める判断も、点検の一部として扱います。
一側足場の使用に制限がある
幅の広い場所では、本足場を使う形が求められています。狭い場所でのみ一側足場が使える扱いです。
計画の段階で、どちらを使うかを確かめておきます。組んでから指摘を受けると、組み直しになります。
毎日の作業前点検
作業前点検は、頻度と見る人の数で気づける度合いが変わります。
帯が長いほど、小さな変化に早く気づけます。
上がる前に下から見る
足場に上がる前に、下から全体を見上げます。脚部の沈下や、壁つなぎの外れは下からのほうが分かります。
上がってしまうと、自分がいる層しか見えません。
手をかける前に確かめる
手すりや建地に手をかける前に、緩みがないかを確かめます。体重をかけてから気づくと、そのときには落ちています。
朝の1回だけでなく、作業の合間にも目を向けます。
気づいたことを伝える道を作る
作業者が異常に気づいても、伝える先が分からなければ止まります。誰に言えばよいかを、受入教育で伝えておきます。
言いにくい空気があると、そのまま作業が続きます。
注文者にも点検の義務がある
足場を提供したり貸したりする注文者にも、点検の義務があります。元請が組んだ足場を協力会社に使わせる場合が、これにあたります。
使う側と提供する側の両方が、それぞれの責任で点検します。実務では重なりますが、記録もそれぞれ残します。
足場の点検で見る項目
足場の点検記録で見る箇所は、床から脚部まで8つに分かれます。
| 点検する箇所 | 見るところ |
|---|---|
| 床材 | 損傷、取付けの状態、ずれ、隙間 |
| 建地・布・腕木 | 損傷、変形、腐食 |
| 緊結部・接続部 | 緩み、外れ |
| 緊結材・緊結金具 | 損傷、腐食 |
| 手すり・中さん・幅木 | 取り外し、脱落 |
| 壁つなぎ・控え | 損傷、取付けの間隔 |
| 脚部 | 沈下、滑動、敷板の状態 |
| 昇降設備 | 取付けの状態、損傷 |
見つかった異常をどう扱うかは、程度によって判断が分かれます。
- 床材に隙間や損傷があるか はい使用を止めて補修 いいえ次へ
- 手すり・中さんが外れているか はい直ちに取り付ける いいえ次へ
- 壁つなぎの間隔が基準内か はい次へ いいえ追加して補修
- 脚部が沈下していないか はい使用してよい いいえ敷板を見直す
1つでも外れたら、直してから使う形にする
判断で迷いやすいのは、程度の問題です。
手すりの一時的な取り外し
資材の搬入で手すりを外す場面があります。外している間の措置と、戻す担当を決めておきます。
外したまま忘れられるのが、いちばん危ない形です。
壁つなぎの間隔
外装の工事で壁つなぎを外すことがあります。外した分の代わりをどう取るかを、事前に決めておきます。
間隔が基準を超えると、足場全体の倒壊につながります。
脚部の沈下
雨の後に地盤が緩み、脚部が沈むことがあります。敷板の下の地盤も含めて確かめます。
わずかな沈下でも、上の層では大きなずれになります。
朝のルーティンに組み込む
作業前の点検を単独の作業にすると、忘れられます。健康の確認や危険予知活動と一緒に、朝の流れに入れます。
足場の異常は、前日との違いとして現れることが多くあります。毎日同じ目で見ることに意味があります。
足場の点検記録の様式と運用
足場の点検記録は、場面ごとに様式を分けると使いやすくなります。
- 1 組立て後の点検表 全層・全項目
- 2 悪天候後の点検表 同じ様式でよい
- 3 作業前点検表 簡略な形で毎日
- 4 是正の記録 異常と補修の内容
3つ目の作業前点検表だけ、簡略な形にすると続きます。
毎日書くものに全項目を並べると、丸を付けるだけの作業になります。
図面を添えると場所が特定できる
大きな現場では、どの面のどの層かを言葉で示すのが難しくなります。図面に番号を振り、記録でその番号を使います。
是正の記録でも、同じ番号で場所を示せます。
写真を残す
異常が見つかった箇所と、補修した後の状態を撮ります。是正が終わったことを示せます。
写真台帳と番号でひもづけておくと、後から探せます。
点検表を足場に近い場所に置く
事務所に置くと、点検してから戻って書くことになります。その間に内容が曖昧になります。
足場の入口付近に置いて、その場で書ける形にします。
記録の様式に点検者の欄を置く
点検した人の氏名を書く欄を、様式に置いておきます。欄がなければ、書かれないまま運用が続きます。
資格の種類まで書ける形にしておくと、求められたときにその場で示せます。
解体するまでの期間を、工程表にも書いておきます。
足場の点検記録から墜落を減らす
点検で繰り返し出やすいのは、手すり・床材・脚部の3か所です。
- 手すり外れの指摘が最も多い
- 床材隙間とずれが続く
- 脚部雨の後に沈下が出る
3か所とも、原因が分かれば作りで防げます。
指摘を箇所ごとに数える
点検記録の指摘を、箇所ごとに数えます。同じ箇所が繰り返し出ていれば、その場の直しでは足りません。
月ごとに集計すると、傾向が見えます。
作りを変える判断につなげる
手すりの外れが多いなら、外さずに搬入できる方法を考えます。床材のずれが多いなら、固定の方法を変えます。
その場の是正ではなく、原因のほうを直します。
他の現場にも展開する
同じ足場の組み方をしている現場では、同じ問題が起きます。気づいた内容を、他の現場にも伝えます。
安全衛生協議会の場で共有する形が広く使われています。
そのうえ写真は、日付が入る設定にしておきます。
後から並べたときに、いつの状態かが分かります。
足場の点検記録と他の書類のつながり
点検記録は、他の書類とつながってはじめて働きます。
| つながる書類 | 揃えるところ |
|---|---|
| 作業手順書 | 組立ての手順、点検の実施者 |
| 足場の組立て等作業主任者の選任 | 点検を行う者の資格 |
| 安全パトロールの記録 | 指摘された箇所と是正 |
| 工事写真台帳 | 是正の前後の状態 |
| 作業間連絡調整書 | 他社が足場を使う場合の伝達 |
つながっているかどうかは、事故が起きたときに差が出ます。
書類がつながっていない
- 点検表だけがファイルにある
- 指摘と是正が別々に管理されている
- 足場を使う他社に結果が伝わらない
- 写真がどこにあるか分からない
つながっている
- 点検表・是正記録・写真がひとまとめ
- 指摘から是正までが1枚で追える
- 協議組織で結果を共有している
- 写真台帳と番号で紐づいている
協議組織で共有する
足場は、組んだ会社だけでなく他の職種も使います。点検の結果を、使うすべての会社に伝えます。
協議組織の場で共有すれば、各社が自社に持ち帰れます。
安全パトロールとの重複を整理する
パトロールで指摘された内容と、点検で見つかった内容が重なります。どちらの記録に残すかを決めておきます。
二重に管理すると、片方だけ是正が記録されます。
引渡しまで保存する
組立て後と悪天候後の記録は、その足場を使う作業が終わるまで保存します。工期の長い現場では、数か月から1年を超えることもあります。
解体するまで捨てない形にしておきます。
様式は足場の点検記録テンプレートからダウンロードできます。作業の手順は作業手順書、パトロールの記録は安全パトロール 指摘・是正記録にまとめています。
よくある質問
足場の点検は誰が行えばよいですか。
組立て・変更の後の点検は、事業者が指名した者が行う形になります。足場の組立て等作業主任者を選任している場合は、その者が行うことが多くあります。毎日の作業前の点検は、その日に足場を使う作業者が行う形が広く行われています。
点検記録は何年保存すればよいですか。
組立てや変更の後、悪天候の後に行う点検の記録は、その足場を使う作業が終わるまで保存する形が求められています。実務では、工事が完了して引渡しが済むまで残しておく会社が多くあります。
毎日の作業前点検も記録が必要ですか。
毎日の点検について、記録の作成と保存が明文で求められているわけではありません。ただし点検したことを示せるのは記録だけなので、日報やチェック表に1行残す形にしている現場が多くあります。