建設業の歩掛とは?読み方と自社の歩掛表の作り方
公開 2026年9月1日
目次8項目
- 1建設業の歩掛とは何を表す数字か
- 歩掛は人工に換算するための係数
- 材料の所要量を表す歩掛もある
- 機械の運転にも歩掛がある
- 2建設業の歩掛が使われる場面
- 見積りでは労務費の根拠になる
- 工程の計画では日数の目安になる
- 振り返りでは実績との差を見る
- 3建設業の歩掛の読み方
- 職種の内訳を見る
- 含まれる作業の範囲を見る
- 前提の条件を見る
- 4建設業の歩掛表を自社で作る
- 出面表から人工を拾う
- 条件をあわせて記録する
- 3件から5件で傾向を見る
- 5建設業の歩掛と数量拾いのつなぎ方
- 拾い方の約束を歩掛表に書く
- 工種の区分を1つにする
- 単価表と並べて持つ
- 6建設業の歩掛を単価表につなげる
- 職種ごとに人工を集計する
- 単価表の更新日を見てから使う
- 機械の歩掛は別の単価と掛ける
- 7建設業の歩掛が実態と合わなくなるとき
- 工法を変えたら歩掛も作り直す
- 小規模な工事には補正をかける
- 応援を入れた日を分けて記録する
- 8建設業の歩掛を更新し続ける形にする
- 竣工の手続きに組み込む
- 年に1回、傾向を見る
- 担当を決めて1か所で持つ
同じ数量の工事でも、会社によって必要な人工の数が変わります。使う機械も職人の組み方も違うためで、その差を数字にしたものが歩掛です。
一般には、単位あたりに何人日かかるかを示した係数として使われます。数量に歩掛を掛ければ必要な人工が出て、そこへ労務単価を掛ければ労務費になります。公表されている資料の数字を使うこともできますが、それは標準的な条件での値です。
ポイントはここです。建設業の歩掛は、自社の施工方法をそのまま数字にしたものという位置づけになります。
ここでは、歩掛が表す数字の意味、読むときに確かめる点、自社の歩掛表の作り方、そして更新を続ける形を順に整理します。
建設業の歩掛とは何を表す数字か
建設業の歩掛は、単位あたりの施工にどれだけの人工がかかるかを示す係数です。数量と労務費のあいだをつなぐ位置にあります。
- 1 数量 図面から拾う
- 2 歩掛 単位あたりの人工
- 3 必要人工 数量×歩掛
- 4 労務単価 職種ごとの日額
- 5 労務費 人工×単価
数量は図面が決まれば動かず、労務単価は年度ごとに変わります。そのあいだにある歩掛だけが、自社の施工方法を映す部分です。
方法が変わらない限り、同じ数字が使い続けられる部分になります。
歩掛は人工に換算するための係数
内装のボード張りで「0.1人日/平米」とあれば、100平米の施工に10人日かかるという意味になります。
つまり歩掛が分かれば、図面から必要な人数と日数が出せます。見積りだけでなく、工程の計画にも同じ数字が使えます。
材料の所要量を表す歩掛もある
歩掛という言葉は、労務だけでなく材料の所要量にも使われます。コンクリート1立米あたりのセメント量といった数字がその例です。
労務の歩掛と材料の歩掛を同じ表に混ぜないと、後で読み違えません。
機械の運転にも歩掛がある
バックホウやクレーンの運転時間も、単位あたりの時間として表せます。土工では、機械の歩掛と人力の歩掛を分けて持ちます。
機械の歩掛に掛けるのは労務単価ではなく、リース料や運転経費を含めた機械の単価になります。
建設業の歩掛が使われる場面
建設業の歩掛は、見積りだけの数字ではありません。同じ数字が、工程の計画から振り返りまで使い回されます。
- 見積り労務費の根拠
- 工程日数と人数の目安
- 振り返り実績との差
見積りで使った歩掛をそのまま工程の計画に使えば、金額と日数の前提がそろいます。逆に別々の数字を使うと、見積りは合っているのに工程が破綻するという形になります。
| 場面 | 歩掛で何を出すか | つながる書類 |
|---|---|---|
| 見積り | 労務費の金額 | 工事見積書 |
| 工程の計画 | 必要な日数と人数 | 工程表 |
| 実行予算 | 原価の目標 | 予算実績対比表 |
| 進捗の確認 | 出来高の見込み | 出来高調書 |
| 振り返り | 実績との差 | 完成工事原価集計表 |
この5つを同じ歩掛でつないでおくと、どこで差が出たかを追えます。使う数字が場面ごとに違うと、差の原因が分からなくなります。
見積りでは労務費の根拠になる
労務費を「一式」で出すと、根拠を聞かれたときに答えられません。数量と歩掛と単価に分けておけば、どこが金額を押し上げているかを示せます。
値引きの交渉になったときも、歩掛を下げるのか単価を下げるのかという話に整理できます。
工程の計画では日数の目安になる
必要な人工が出れば、何人で何日かかるかが計算できます。人数を増やせば日数は減りますが、現場に入れる人数には限りがあります。
入れる人数の上限から逆に日数を見ると、無理のない工程になります。
振り返りでは実績との差を見る
竣工したあと、見積りの人工と実際にかかった人工を比べます。差が出た工種は、歩掛か施工の方法のどちらかに原因があります。
この比較を続けると、自社の歩掛が実態に近づいていきます。
建設業の歩掛の読み方
建設業の歩掛は、同じ工種でも資料によって数字が違います。前提が違うためで、数字だけを見比べても意味がありません。
- 単位は何か はい次へ いいえ平米か立米かを確認する
- 職種は何か はい次へ いいえ世話役を含むかを確認する
- 含まれる作業の範囲は はい次へ いいえ準備と片付けの扱いを見る
- 前提の条件は はい数字の意味が定まる いいえ規模や階数の条件を見る
4つがそろって、はじめて数字が比較できる形になる
この4つのうち、見落とされやすいのが3つ目の作業の範囲です。単位と職種は表に書かれていますが、範囲は注記に小さく書かれていることがあります。
職種の内訳を見る
「0.15人日/平米」という数字が、職人だけの値なのか、世話役や普通作業員を含む値なのかで意味が変わります。
職種ごとに分かれている表であれば、それぞれに単価を掛けます。まとめて1つの数字になっている場合は、平均の単価を掛けます。
含まれる作業の範囲を見る
材料の運搬、墨出し、清掃、片付けが含まれているかどうかを確かめます。含まれていなければ、別の工種として拾う必要があります。
含まれる範囲を確認しないまま使うと、同じ作業を二重に計上することがあります。
前提の条件を見る
階数、規模、施工の場所といった条件が前提に置かれています。高所での作業や狭い場所での施工は、同じ数量でも人工が増えます。
条件が自社の工事と違う場合は、補正をかけて使います。
建設業の歩掛表を自社で作る
公表されている資料の歩掛と、自社の実績から作る歩掛には違いがあります。
公表資料の歩掛
- そろえる手間がない
- 標準的な条件が前提
- 公共工事で通りやすい
- 自社の実力が反映されない
自社の歩掛
- 実績を集める手間がある
- 自社の方法が反映される
- 差がそのまま利益になる
- 更新を続ける必要がある
最初は公表資料を使い、実績がたまった工種から自社の数字に置き換える形が現実的です。
すべての工種を一度に置き換えようとすると、途中で止まります。金額の大きい工種や、繰り返し受注する工種から始めます。
出面表から人工を拾う
自社の歩掛を作る材料は、出面表にあります。工種ごとに人工を記録していれば、そこから拾えます。
そのため出面表に工種の欄を作っておくことが前提になります。欄がなければ、人工を工種に割り当てられません。
条件をあわせて記録する
人工の数だけでなく、そのときの条件も記録します。規模、階数、施工の場所、使った機械が対象になります。
条件が分からない数字は、次の工事に使えません。似た条件の工事かどうかを判断できないためです。
3件から5件で傾向を見る
1件の実績だけで歩掛を決めると、その現場の特殊な事情が入ります。3件から5件たまってから、平均や中央の値を見ます。
大きく外れた1件があれば、その工事に何があったかを確かめます。その理由が分かれば、補正の材料にもなります。
建設業の歩掛と数量拾いのつなぎ方
歩掛と数量は掛け算になるため、単位と拾い方の約束がそろっている必要があります。
数量拾い表で決めること
- 工種の区分
- 数量の単位
- 控除の有無
- 端数の扱い
歩掛表で決めること
- 単位あたりの人工
- 職種の内訳
- 含まれる作業の範囲
- 前提の条件
とくに控除の有無は、型枠や内装で差が出ます。開口部を控除して拾った数量に、控除しない前提の歩掛を掛けると人工が足りません。
| 工種 | 数量の単位 | 歩掛の単位 | そろえ方 |
|---|---|---|---|
| 内装のボード張り | 平米 | 人日/平米 | 同じ単位で拾う |
| 型枠 | 平米 | 人日/平米 | 開口部の控除を統一 |
| 鉄筋 | トン | 人日/トン | 径ごとに分けて拾う |
| 土工 | 立米 | 時間/立米 | 機械と人力を分ける |
鉄筋のように径で作業量が変わる工種は、分けて拾わないと歩掛が合いません。土工では、機械で掘る分と人力で仕上げる分を分けます。
拾い方の約束を歩掛表に書く
その歩掛がどういう拾い方を前提にしているかを、歩掛表の側に書いておきます。「開口部は控除しない」と書いてあれば、拾う側も迷いません。
数量拾い表と歩掛表を別の人が使う場合ほど、この記載が働きます。
工種の区分を1つにする
数量拾い表、歩掛表、単価表、工事台帳で、工種の区分をそろえます。区分が違うと、そのつど読み替えることになります。
社内の工種の一覧を1つ持つと、読み替えが要りません。
単価表と並べて持つ
歩掛表と単価表は、掛け算で対になる関係です。別のファイルに分けていると、片方だけを更新してしまいます。
2つを別々に更新すると、片方だけが古い状態が生まれます。
建設業の歩掛を単価表につなげる
歩掛が受け持つのは人工の数までで、そこから先は単価表の役目です。
- 1 数量 拾い出しの結果
- 2 歩掛 単位あたりの人工
- 3 人工の数 職種ごとに集計
- 4 労務単価 単価表から引く
- 5 労務費 見積書の内訳へ
この分担にしておくと、労務単価が改定されたときに単価表だけを直せます。歩掛は施工の方法が変わらない限り動かないため、更新の周期も別になります。
職種ごとに人工を集計する
工種ごとに出した人工を、職種ごとに集計します。同じ職種が複数の工種にまたがるためです。
職種ごとにまとまると、必要な職人の数が見えます。手配の計画にもそのまま使えます。
単価表の更新日を見てから使う
単価表を引くときは、いつ更新したものかを確かめます。労務単価は年度ごとに改定されるため、古い表を使うと差が出ます。
単価表と歩掛表の更新日をそろえておくと、片方だけが古い状態を防げます。
機械の歩掛は別の単価と掛ける
機械の歩掛に掛けるのは、労務単価ではありません。リース料、燃料費、運転手の人件費を含めた機械の単価になります。
そのため機械の単価表を別に持ちます。労務の単価表と混ぜると、掛ける相手を間違えます。
建設業の歩掛が実態と合わなくなるとき
建設業の歩掛は一度作れば終わりではなく、条件が変われば合わなくなります。
- 工法の変更施工の方法が変わった
- 職人の入替熟練度が変わった
- 規模の変化小規模で段取りが増えた
3つのうち、気づきにくいのは職人の入れ替わりです。
工法の変更と規模の違いは事前に分かりますが、人の熟練度は実績が出るまで見えません。
工法を変えたら歩掛も作り直す
新しい機械を入れたり、施工の順序を変えたりすると、必要な人工が変わります。そのとき古い歩掛を使い続けると、見積りが実態から離れます。
工法を変えた工事は、歩掛を取り直す機会でもあります。条件を記録したうえで、新しい数字として残します。
小規模な工事には補正をかける
数量が少ない工事では、段取りや移動の時間の比重が大きくなります。同じ工種でも、単位あたりの人工は増えます。
小規模の工事には補正の係数を掛ける形が広く使われています。何平米以下でどれだけ掛けるかを、社内で決めておきます。
応援を入れた日を分けて記録する
人手が足りずに応援を入れた日は、自社の職人だけの日と条件が違います。その日の人工をまとめて数えると、歩掛がぶれます。
出面表で自社と応援を分けておけば、後から切り分けられます。
建設業の歩掛を更新し続ける形にする
歩掛は、工事が終わるたびに1件ずつ足していく形で育ちます。
- 1 出面表 工種ごとに人工を記録
- 2 竣工時 数量で割って歩掛を出す
- 3 歩掛表へ 条件とあわせて追記
- 4 見直し 年に1回、傾向を見る
- 5 見積り 更新した数字を使う
竣工のときに人工を数量で割るだけなので、作業そのものは短時間で終わります。とはいえ手続きに組み込んでおかないと、そのまま忘れられます。
竣工の手続きに組み込む
完成工事原価をまとめる作業と同じ場面で、歩掛も算出します。どちらも出面表と数量を使うため、材料がそろっています。
竣工の書類の一覧に、歩掛の更新を1行入れておきます。
年に1回、傾向を見る
たまった歩掛を年に1回まとめて見ます。同じ工種で数字が動いていれば、施工の方法か人の構成が変わっています。
傾向を見る場を年に1回持つと、気づかないまま古い数字を使い続けません。
担当を決めて1か所で持つ
歩掛表を複数の人が別々に持つと、どれが最新か分からなくなります。更新する担当を決めて、置き場所も1か所にします。
見積りを作る人は、そこから引く形にします。
よくある質問
歩掛は公表されているものを使ってよいですか。
公共工事の積算基準として示されている歩掛は、目安として広く使われています。現場の条件や自社の施工方法によって必要な人工は変わるため、自社の実績と比べて調整する形が扱いやすくなります。
歩掛と人工は同じものですか。
歩掛は単位あたりに必要な人工の数を表す数字で、人工はその現場で実際にかかった人数と日数を表します。歩掛に数量を掛けると必要な人工が出る、という関係になります。
自社の歩掛表は何件くらいの実績から作れますか。
同じ工種で3件から5件そろうと、傾向が見えてきます。件数が少ないうちは幅を持たせて記録し、条件のよい現場と悪い現場の両方を残しておくと、後で使い分けられます。