完成工事原価とは?4つの費目の分け方と集計のしかた

公開 2026年9月1日

目次8項目

決算のときだけ原価をまとめている会社では、その数字が次の見積りに戻ってきません。費目の分け方が年度ごとに変わっていると、前の年と比べることもできないためです。

一般には、材料費・労務費・外注費・経費の4つに分けて集めます。この区分は建設業の財務諸表の様式と対応しているため、決算でもそのまま使えます。同じ区分で工事台帳を作っておくと、決算の段階で組み替える作業が要りません。

ポイントはここです。完成工事原価は、4つの費目に分けて集めることで、次の見積りに使える数字になります

ここでは、4つの費目の分け方、未成工事支出金との違い、労務費の集計、そして確定させる時期を順に整理します。

完成工事原価とは何を集めた金額か

完成工事原価は、引渡しが終わった工事にかかった費用の合計です。4つの費目に分けて集める形が定められています。

  • 材料費 30工事に使った材料
  • 労務費 25作業に従事した人
  • 外注費 35他社に請け負わせた分
  • 経費 10それ以外の費用
完成工事原価を100としたときの並び方(工種で動く)

ただし割合は工種と会社の作り方で動きます。自社で施工する範囲が広ければ労務費が増え、専門工事を外に出せば外注費が増えます。

4つの費目は財務諸表の様式と対応する

この4区分は、建設業の財務諸表で使う完成工事原価報告書の様式に対応しています。社内で別の区分を使っていると、決算のときに組み替える作業が発生します。

工事台帳の費目をこの4つにそろえておくと、そのまま報告書になります。

労務費には内書きがある

労務費のうち、労務の提供に近い形で外注した分は「うち労務外注費」として内書きします。人を出してもらう形の契約が、これにあたります。

外注費と労務外注費の線引きは判断が要る部分です。判断の基準を社内で決めておくと、年度によって数字がぶれません。

経費にも内書きがある

経費のうち、現場の管理に従事した人の給与は「うち人件費」として内書きします。現場代理人や主任技術者の給与が対象になります。

その人が複数の現場を見ている場合は、配分の基準が要ります。従事した日数で割る形が扱いやすくなります。

完成工事原価と未成工事支出金の違い

完成しているかどうかで、同じ原価でも置く場所が変わります。

未成工事支出金

  • 完成前の工事の原価
  • 貸借対照表の資産
  • 期末に残高として残る
  • 完成すると振り替える

完成工事原価

  • 完成した工事の原価
  • 損益計算書の費用
  • 完成工事高と対応する
  • 粗利益の計算に使う
完成の時点で、資産から費用へ移る

工事台帳で工事ごとに原価が集まっていると、振り分けが短時間で済みます。

逆に工事ごとに分かれていなければ、期末に一件ずつ拾い直すことになります。

工期が期をまたぐと振り分けが要る

期末の時点で完成していない工事の原価は、未成工事支出金として資産に残します。翌期に完成した時点で、完成工事原価へ振り替えます。

工事台帳に引渡しの日が入っていれば、この振り分けは機械的に進みます。

工事の完成をいつと見るか決める

引渡しをもって完成とする形が広く使われています。検査が終わった日とするのか、引渡書を交わした日とするのかを決めておきます。

判断の日を1つに決めておくと、年度をまたぐ工事でも扱いが変わりません。

工事進行基準を使う場合は扱いが変わる

工期が長く金額の大きい工事では、進行の度合いに応じて収益と原価を計上する方法があります。その場合、完成前でも原価の一部が費用になります。

どの工事にどの方法を使うかは、会計の方針として決めておきます。

完成工事原価報告書に並べる項目

完成工事原価報告書は、4つの費目と2つの内書きで組みます。

  • 4費目材料・労務・外注・経費
  • 2内書き労務外注費と人件費
  • 1合計完成工事原価
報告書は、4つの費目と2つの内書きで組む

このうち内書きの2つは、費目の中の一部を示すものです。そのため合計には足しません。

区分内容拾い方の目安
材料費工事に使った材料納品書と請求書から
労務費作業に従事した人の費用出面表と賃金台帳から
うち労務外注費労務の提供に近い外注契約の内容で判断
外注費他社に請け負わせた分注文書と請求書から
経費それ以外の費用現場経費精算書から
うち人件費現場の管理を担う人給与から配分

材料費に何を入れるか決める

工事に取り付ける材料は材料費ですが、仮設材の損料や消耗する工具の扱いは判断が分かれます。

どちらに入れるかを社内で固定します。工事ごとに扱いが変わると、比べたときの差が費目の違いなのか実態の違いなのか分かりません。

労務外注費の判断を統一する

材料を持たずに労務だけを提供してもらう形は、労務外注費にあたります。一方で材料も含めて請け負ってもらう形は、外注費になります。

判断が担当ごとに違うと、年度をまたいだ比較ができなくなります。

経費の人件費を配分する

現場代理人が3つの現場を見ている場合、その給与を3つに配分します。従事した日数で割る形が扱いやすくなります。

逆に配分していないと、経費の人件費が計上されないまま残ります。

完成工事原価の労務費をどう集計するか

労務費は、出面表と賃金台帳を突き合わせて工事ごとに割ります。

  1. 1 出面表 工事ごとの人工を拾う
  2. 2 賃金台帳 人ごとの支給額を見る
  3. 3 労務単価 1人日あたりを出す
  4. 4 配賦 工事ごとに割り振る
  5. 5 労務費集計表 工事台帳へ渡す
労務費は、出面表と賃金台帳を突き合わせて工事ごとに割る

日ごとに書く欄を作っておくと、月末の配賦の作業が短時間で済みます。

出面表に工事名を入れる

出面表に現場名か工事番号の欄がなければ、人工を工事に割り当てられません。1日に複数の現場へ行った日は、時間で割って書きます。

この欄がないと、月末に本人へ聞き直すことになります。

賞与と法定福利費も労務費に含める

月々の給与だけでなく、賞与や社会保険の事業主負担分も労務費に含まれます。月の給与だけで単価を作ると、実際より低く出ます。

年間の人件費の総額を、年間の稼働日数で割る形が扱いやすくなります。

手待ちの時間をどう扱うか決める

雨で作業ができなかった日や、材料待ちの時間が発生します。その分をどの工事の原価にするかを決めておきます。

その現場で発生した手待ちなら、その工事に入れる形が一般的です。

完成工事原価をいつ確定させるか

完成工事原価は、締めるのが早すぎると後から数字が動き、遅すぎると決算に間に合いません。

  1. 引渡しが終わっているか はい次へ いいえ未成工事支出金のまま
  2. 主要な請求書が届いているか はい次へ いいえ見込みで計上する
  3. 現場経費が精算されているか はい次へ いいえ現場に確認する
  4. 労務費の配賦が済んでいるか はい原価を確定できる いいえ出面表を締める

4つが済んだ時点で締めると、数字が後から動かない

完成工事原価を確定させる前の確認

見込みで入れた分は、確定した時点で置き換える形にします

締めの期限を決める

引渡しから何日以内に原価を締めるかを決めます。1か月以内という形が扱いやすくなります。

期限を決めていないと、決算の直前まで確定しません。

見込みで入れた分に印を付ける

まだ請求書が届いていない分は、見込みで入れます。どれが見込みかを印で示しておきます。

確定したら置き換え、印を外します。印が残っている項目を追いかければ、確定漏れが見つかります。

瑕疵の対応にかかる費用を見ておく

引渡しの後に手直しが発生することがあります。その費用をどの年度の原価にするかを決めておきます。

金額が大きくなりそうな工事では、引当てを見込んでおく形もあります。

集計の担当と手順を残す

原価をまとめる担当が代わると、費目の判断も変わりがちです。どの書類からどの費目に拾うかを、手順として1枚に書いておきます。

拾う先の書類名と、迷ったときの判断の基準を並べておけば、引き継いだ人も同じ数字を出せます。

年に1回、手順が実態と合っているかを確かめます。

完成工事原価と工事台帳のつなぎ方

工事台帳の費目をそろえておくと、決算で組み替える作業が要りません。

  1. 1 工事台帳 工事ごとに原価を集める
  2. 2 費目で集計 4つの区分でまとめる
  3. 3 完成分を抽出 引渡し済みだけを取る
  4. 4 完成工事原価 報告書の形にする
  5. 5 決算 財務諸表へ
台帳の費目をそろえておくと、決算で組み替えが要らない

完成分の抽出は、引渡しの日が台帳に入っていれば機械的に進みます

台帳の費目を報告書とそろえる

台帳で独自の区分を使っていると、決算のたびに読み替えます。最初から4費目と2内書きの形にしておきます。

社内の管理でさらに細かく見たい場合は、その中に小区分を置きます。

引渡しの日を台帳に入れる

引渡しの日が入っていれば、完成した工事を機械的に抽出できます。竣工の手続きの中で、台帳に日付を入れる形にします。

入れ忘れると、期末に一件ずつ確かめることになります。

決算の直前にまとめて作らない

決算の直前に1年分をまとめて集計すると、資料が集まりません。現場の担当も、半年前の支出は思い出せません。

月次で台帳を更新していれば、決算では抽出するだけで済みます。

電子で保管する場合の書き出しを決める

会計のソフトで原価を持っている場合、書き出せる形を確かめておきます。ソフトを入れ替えたときに、過去の工事が見られなくなることがあります。

完成した工事は、費目ごとの集計を書き出して別に保管します。

完成工事原価でつまずきやすいところ

完成工事原価は、費目の判断がぶれると年度をまたいだ比較ができなくなります。

  1. 一人親方の扱いを決めているか はい次へ いいえ契約の形で判断すると決める
  2. 仮設材の損料の費目を決めているか はい次へ いいえ材料費か経費に固定する
  3. 現場管理者の給与を配分しているか はい次へ いいえ従事日数で割ると決める
  4. 引渡しの日を台帳に入れているか はい費目の判断がぶれない いいえ竣工の手続きに組み込む

4つが決まっていれば、年度をまたいでも数字が比べられる

完成工事原価の費目でぶれやすいところ
つまずき何が起きるか決めておくこと
一人親方の扱い労務費と外注費がぶれる契約の形で判断する
仮設材の損料材料費と経費がぶれるどちらに入れるか固定
現場管理者の給与経費の人件費が漏れる配分の基準を決める
期をまたぐ工事未成工事支出金が合わない引渡しの日で判断する

判断の基準を1枚にまとめる

迷いやすい支出の扱いを、1枚の紙にまとめておきます。新しい担当が入っても、そこを見れば同じ判断ができます。

そのうえで新しく迷った例が出たら、そこに書き足します。

年度をまたいで比較する

同じ区分で集めていれば、去年と今年を並べられます。材料費の割合が上がっていれば、仕入れの価格か施工の方法が変わっています。

比較ができると、原価の構造の変化に気づけます。

小さな工事もまとめて集計する

金額の小さい工事は、台帳を作らずに済ませることがあります。そうすると、その分の原価がどこにも集まりません。

区分をそろえておくと、小口の工事の傾向も見えるようになります。

完成工事原価を次の見積りに生かす

見積り・実行予算・完成工事原価の3つを並べると、どこで差が出たかが見えます。

  • 見積り受注前の想定
  • 実行予算原価の目標
  • 完成工事原価実際の結果
3つを並べると、どこで差が出たのかが見える

見積りと実行予算の差は自社の目標の置き方で、実行予算と実績の差は現場での結果です。分けて見ると原因が絞れます。

工種ごとに差を見る

総額だけを比べても、どこがずれたのか分かりません。工種ごとに並べると、特定の工種で毎回差が出ていることに気づけます。

その工種の歩掛か単価が、実態と合っていない可能性があります。

赤字になった工事の理由を残す

赤字になった工事は、なぜそうなったかを1行残します。見積りが甘かったのか、施工で手戻りが出たのかを分けます。

理由が残っていれば、似た条件の工事を受けるときに判断できます。

得意な工種を数字で確かめる

工種ごとの利益率を並べると、自社が得意な工種が見えます。感覚ではなく数字で確かめられます。

受注する工事を選ぶときの材料になります。

様式は完成工事原価集計表テンプレート、労務費の集計は労務費集計表からダウンロードできます。

よくある質問

完成工事原価の4つの費目は、どう分けるのですか。

材料費・労務費・外注費・経費の4つに分ける形が、建設業の財務諸表の様式として示されています。労務費のうち労務外注費、経費のうち人件費については、内書きで示す扱いが置かれています。

一人親方への支払いは労務費と外注費のどちらですか。

請負契約であれば外注費になります。作業に対して人工の数で支払っている場合は、労務外注費として労務費の内書きで示す扱いが使われることがあります。社内で判断の基準を決めておくと、年度によって数字がぶれません。

完成工事原価はいつ確定させますか。

工事が完成し、引渡しが終わった時点で締める形が一般的です。請求書が遅れて届く原価があるため、締めの期限を決めたうえで、それ以降に届いた分の扱いも決めておくと数字が動きません。

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