工事完了報告書の書き方と引渡し書類の整え方
公開 2026年9月1日
目次8項目
- 1工事完了報告書とは何を伝える書類か
- 検査の日程を決めるきっかけになる
- 請求の前提になる
- 下請から元請への報告にも使う
- 2工事完了報告書に書く項目
- 契約書の表記に合わせる
- 変更後の工期で書く
- 添付資料の一覧を作る
- 自主検査の項目を先に決める
- 3工事完了報告書を出す時期
- 完了の見込みで予告を入れる
- 自主検査を先に済ませる
- 契約の期限を確認する
- 部分的な引渡しがある場合の扱い
- 4工事完了報告書に添える資料
- 工事写真は施工中に撮る
- 材料の証明書は納品時に受け取る
- 試験の記録は実施の時期が決まる
- 完了報告の控えを工事の書類に綴じる
- 5工事完了報告書と引渡し書類の関係
- 引渡し書類は使う人を想定して作る
- 竣工図は変更を反映する
- 保証書と連絡先を入れる
- 電子で渡す場合の形式を決める
- 6引渡し書類チェックリストの作り方
- 着工時に一覧をもらう
- 取れた時点でチェックする
- 受領の記録を残す
- 7工事完了報告書でつまずきやすいところ
- 隠れる部分の写真を計画に入れる
- 手直しの記録を残す
- 下請からの完了報告を集める
- 鍵と備品の受け渡しを記録する
- 8工事完了報告書を出したあとの流れ
- 原価を締めて振り返る
- 保存する書類を仕分ける
- 歩掛と単価の実績を残す
竣工の直前になって、埋め戻した部分の写真がないことに気づく。完了報告に添える資料の多くは、施工中にしか取れないものです。
一般には、施工が終わったあとに自主検査を行い、資料を添えて工事完了報告書を出し、相手の検査を受けてから引渡しになります。必要な資料は相手によって違うため、着工の段階で一覧をもらっておく形になります。
ポイントはここです。工事完了報告書に添える資料は、着工時に一覧をもらっておくと、集める順序が決められます。
ここでは、書く項目、出す時期、添える資料、そして引渡し書類との違いを順に整理します。
工事完了報告書とは何を伝える書類か
工事完了報告書は、自主検査と相手の検査の間に立つ書類です。施工が終わったことを伝え、検査の日程を決めるきっかけになります。
- 1 施工の完了 作業が終わる
- 2 自主検査 自社で確認する
- 3 完了報告書 資料を添えて出す
- 4 検査 相手が確認する
- 5 手直し 指摘があれば対応
- 6 引渡し 書類を渡して完了
自主検査を飛ばして報告すると、相手の検査で指摘が並びます。先に自社で確かめておくほうが、結果として早く終わります。
検査の日程を決めるきっかけになる
報告書を出さないと、相手も検査の日程を組めません。完了の見込みが立った段階で予告を入れておくと、日程が押さえられます。
検査の担当が複数の現場を見ている場合、日程が先まで埋まっていることがあります。
請求の前提になる
多くの契約で、検査に合格してから請求という順序になります。提出が遅れると、入金の時期もそのぶん後ろにずれます。
検査に合格した日を入金・売掛管理表に写しておくと、予定が立ちます。
下請から元請への報告にも使う
元請から発注者への報告だけでなく、下請から元請への報告にも使います。自社が下請の場合、元請の様式に合わせる場面があります。
どちらの立場でも、添える資料をそろえる手順は変わりません。
工事完了報告書に書く項目
工事完了報告書は、工事の特定・完了日・添付の3つが柱になります。
- 何の工事か工事名と場所
- いつ終わったか完了の日
- 何を添えたか添付資料の一覧
このうち添付資料の一覧は、書き忘れても報告書として成立します。そのぶん抜けやすく、後から不足を指摘される原因になります。
| 項目 | 内容 | 書き方の目安 |
|---|---|---|
| 宛名・発行者 | 相手と自社 | 契約の当事者に合わせる |
| 工事名・工事場所 | 対象の工事 | 契約書の表記に合わせる |
| 契約の番号 | 注文書の番号 | 相手の管理番号も添える |
| 工期 | 着工と完了の日 | 変更があれば変更後で |
| 完了の日 | 施工が終わった日 | 自主検査の日と分ける |
| 添付資料 | 添えた資料の一覧 | 部数も書く |
契約書の表記に合わせる
工事名を略して書くと、相手の側で契約と結びつきません。契約書や注文書の表記をそのまま使います。
相手の管理番号があれば、それも添えます。
変更後の工期で書く
工期が延びた場合は、変更後の日付で書きます。当初の工期のまま書くと、遅れているように見えます。
工期の変更を書面で交わしていれば、その日付を使います。
添付資料の一覧を作る
何を何部添えたかを一覧にします。一覧があると、後から不足を指摘されることが減ります。
受け取った側でも、確認の作業が短時間で済みます。
自主検査の項目を先に決める
何を確かめるかを、着工の段階で決めておきます。図面との照合、仕上がりの状態、設備の動作が対象になります。
項目を決めていないと、その場で気づいたところだけを見ることになります。チェックリストにしておくと、担当が代わっても同じ水準で見られます。
工事完了報告書を出す時期
工事完了報告書は、出す時期によってその後の日程の余裕が変わります。
早く出すほど、手直しが出ても対応する時間が残ります。
完了の見込みで予告を入れる
正式な報告の前に、いつごろ完了するかを伝えておきます。相手も検査の日程を仮に押さえられます。
見込みが動いたら、その時点で知らせ直します。
自主検査を先に済ませる
自社で図面と現物を照らし、仕上がりを確かめます。そこで見つかった手直しは、報告の前に済ませます。
相手の検査で指摘されると、再検査の日程を取り直すことになります。
契約の期限を確認する
完了報告をいつまでに出すかが、契約で決まっている場合があります。着工の段階で確かめておきます。
期限を過ぎると、契約上の問題として扱われることがあります。
部分的な引渡しがある場合の扱い
工期の長い工事では、完成した部分から先に引き渡す場面があります。その部分の完了報告と資料を、そのつど出す形になります。
どこまでを引き渡したかを図面で示しておくと、後の範囲が明確になります。瑕疵の期間もその時点から始まるため、日付を記録に残します。
工事完了報告書に添える資料
添える資料には、あとから取り直せるものと取り直せないものがあります。
このうち上に行くほど、竣工前に気づいても取り返せません。そのため施工中に集める仕組みが要ります。
工事写真は施工中に撮る
埋め戻す部分や、仕上げで隠れる部分は後から撮れません。撮影の計画を施工計画書に入れておきます。
そのうえ黒板に工種と場所を書いて、位置が分かる形で撮ります。
材料の証明書は納品時に受け取る
ミルシートや品質の証明書は、納品のときに受け取ります。竣工前に仕入先へ頼むと、探してもらう時間がかかります。
そのため受け取った時点で、工事ごとのファイルに入れます。
試験の記録は実施の時期が決まる
コンクリートの圧縮強度試験や、配管の水圧試験は、施工の特定の段階でしか行えません。
工程表に試験の日を入れておきます。立会いの担当を決めておくと、記録の様式もそろいます。
完了報告の控えを工事の書類に綴じる
出した報告書の控えを、その工事の書類と一緒に綴じます。添付資料の一覧も残しておくと、何を渡したかが後から分かります。
数年後に問い合わせがあったときも、そこから確かめられます。
控えは電子で持つ場合も、工事のフォルダにまとめておきます。
紙と電子が分かれていると、探すときに両方を見ることになります。
工事完了報告書と引渡し書類の関係
報告のための書類と、渡したあとに使われる書類は別のものです。
工事完了報告書
- 完了を伝える
- 検査のきっかけになる
- 添付は完了の証拠
- 相手の検査で使われる
引渡し書類
- 引渡し時に渡す
- 維持管理に使われる
- 図面と取扱説明が中心
- 建物が使われる間ずっと残る
引渡し書類は、建物が使われている間ずっと参照されます。そのため作る目線も変わります。
引渡し書類は使う人を想定して作る
受け取るのは、建物を管理する人です。専門の知識がない人が読む場面もあります。
そのため目次を付けて、探しているものにたどり着ける形にします。
竣工図は変更を反映する
施工中に変更した内容を、竣工図に反映します。設計の図面のまま渡すと、実際と違う図面が残ります。
一方で将来の改修工事では、この図面が使われます。
保証書と連絡先を入れる
機器の保証書と、不具合が出たときの連絡先を入れます。連絡先が書類の中にあると、引渡し後の問い合わせが早く届きます。
電子で渡す場合の形式を決める
図面や写真を電子で渡す場面が増えています。どの形式で渡すかを、着工の段階で相手と決めておきます。
編集できる形式を求められる場合もあります。渡した内容の控えは、自社でも保管しておきます。
引渡し書類チェックリストの作り方
チェックリストは、着工時に作って施工中に埋めていきます。
- 1 着工時 必要な書類を一覧に
- 2 施工中 取れた時点でチェック
- 3 完了前 不足を洗い出す
- 4 製本 目次を付けてまとめる
- 5 引渡し 受領の記録を残す
竣工前に作り始めると、そこで不足が見つかっても取り返せません。
着工時に一覧をもらう
相手が求める書類の一覧を、着工の段階でもらいます。発注者や元請によって、求められる内容が違います。
もらった一覧をそのままチェックリストにします。
取れた時点でチェックする
試験の記録や証明書は、取れた時点で印を付けます。月に1回、残りを確かめる形にしておきます。
月ごとに確かめると、竣工前に慌てません。
受領の記録を残す
引渡しの際に、何をどれだけ渡したかを記録します。受領の署名をもらう形にしておきます。
後から不足を言われたときに、渡した内容を示せます。
工事完了報告書でつまずきやすいところ
工事完了報告書で竣工前に慌てる原因は、着工時の確認にあります。
- 着工時に必要書類の一覧をもらったか はい次へ いいえ相手に確認する
- 写真の撮影計画があるか はい次へ いいえ施工計画書に入れる
- 試験の日程が工程表にあるか はい次へ いいえ工程表に追記する
- 材料の証明書を納品時に受け取ったか はい間に合う状態 いいえ仕入先に依頼する
4つが押さえられていれば、竣工前に慌てない
どれも着工の段階で数十分あれば済む確認です。
隠れる部分の写真を計画に入れる
配筋、埋設の配管、防水の下地は、次の工程で隠れます。その工程の前に撮る計画を立てます。
工程表に撮影の日を書き込んでおくと、忘れません。
手直しの記録を残す
検査で指摘された内容と、対応した日を記録します。再検査のときに、何を直したかを示せます。
同じ指摘が続く場合は、施工の方法を見直す材料になります。
下請からの完了報告を集める
自社が元請の場合、下請からの完了報告も集めます。下請の分の資料が揃わないと、全体の報告が出せません。
各社への提出の期限を、工程の終盤に設定しておきます。
鍵と備品の受け渡しを記録する
書類だけでなく、鍵や取扱いの備品も引き渡します。何本の鍵を誰に渡したかを記録に残します。
後から本数が合わないという話になったときに、渡した記録が根拠になります。受領の署名と一緒にまとめておきます。
製本した書類は、渡す前に目次と中身が合っているかを確かめます。
差し替えた図面が反映されていないことがあります。
工事完了報告書を出したあとの流れ
完了報告のあとは、検査・引渡し・締めの3つが続きます。
- 検査指摘と手直し
- 引渡し書類と鍵を渡す
- 締め原価と台帳を閉じる
ただし引渡しが終わっても、原価の締めが残ります。ここを忘れると、その工事の利益が分からないままになります。
原価を締めて振り返る
引渡しの後に届く請求書もあります。それを含めて原価を締め、実行予算と比べます。
差の理由を1行残しておくと、次の見積りに使えます。
保存する書類を仕分ける
工事の書類は、種類によって保存の年数が違います。帳簿は5年、住宅の新築工事の図書は10年といった違いがあります。
年数の違うものを同じ箱に入れないと、処分の判断がその場で付きます。
歩掛と単価の実績を残す
出面表の人工を数量で割ると、その工事の歩掛が出ます。竣工の手続きの中で算出して、歩掛表に足します。
材料の単価も、実際の仕入れの額で更新します。
様式は工事完了報告書テンプレート、書類の管理は引渡し書類チェックリストからダウンロードできます。
よくある質問
工事完了報告書はいつ出しますか。
工事が完了し、自主検査が終わった時点で出す形が一般的です。相手の検査を受ける前に出しておくと、検査の日程が組まれます。契約で提出の期限が決まっている場合は、それに従います。
添える資料はどこまで必要ですか。
契約や元請の指定によって変わります。工事写真、使用材料の資料、試験の結果、産業廃棄物の管理票の写しが求められる場面が多くあります。着工時に一覧をもらっておくと、集める順序が決められます。
完了報告のあとに手直しが出たらどうしますか。
手直しの内容と完了した日を記録に残す形が扱いやすくなります。報告書を出し直すかどうかは相手の運用によって変わるため、確認したうえで進めます。記録が残っていると、後から経緯を説明できます。