石綿事前調査の記録|報告の対象と3年保存
公開 2026年8月23日
目次8項目
- 1石綿事前調査が求められる理由
- 対象になる工事
- 調査を省略できる場合
- 罰則と指導の対象になる
- 2石綿事前調査を行える者
- 資格の種類を工事に合わせる
- 講習の修了証を管理する
- 外部委託でも記録は残す
- 3石綿事前調査の進め方
- 書面調査で見るもの
- 現地調査で見るもの
- 分析とみなしの選び方
- 調査の対象を建材ごとに拾う
- 4石綿事前調査の報告が必要になる工事
- 報告する内容
- 電子システムで報告する
- 元請と下請の役割
- 分析機関の受入れ状況を確かめる
- 5石綿事前調査の記録と掲示
- 調査の記録に書くこと
- 現場に掲示する
- 作業の記録は別に残す
- 6石綿が見つかったときの措置
- 作業主任者を選任する
- 特別教育を行う
- 廃棄物の扱いも変わる
- 発注者への説明を書面で残す
- 保護具と作業衣の管理を決める
- 7石綿事前調査で起きやすい行き違い
- 打合せの記録に担当を書く
- 調査の範囲を図面で示す
- 追加調査の可能性を伝えておく
- 近隣への周知も検討する
- 8石綿事前調査を段取りに組み込む
- 見積りに調査の費用を入れる
- 工程表に調査を入れる
- 発注者に協力を求める
- 記録の様式を社内で1つにする
調査は済ませたのに報告を出していない、という形で指導を受ける例があります。調査・記録・報告・掲示の4つは、それぞれ別の手続きです。
一般には、着工前に建材の石綿の有無を調べ、その結果を記録して3年間保存します。一定の規模を超える工事では、着工前に電子で報告し、現場に掲示もします。どれか1つを済ませても、残りの義務はそのまま残ります。
ポイントはここです。石綿事前調査は、調査・記録・報告・掲示の4つがそろってはじめて手続きになります。
ここでは、調査を行える者、進め方、報告が必要になる工事、そして見つかったときの措置を順に整理します。
石綿事前調査が求められる理由
石綿を含む建材を知らずに壊すと、粉じんが飛散して作業者と周辺に健康の被害が及びます。着工前に有無を確かめることで、必要な措置を選べるようになります。
- 4つ調査・記録・報告・掲示
- 3年調査記録と作業記録の保存
- 有資格者調査を行える者が定められている
このうち有資格者の確保は、着工が迫ってからでは間に合わない部分です。
対象になる工事
建築物や特定の工作物を解体・改修する工事が対象になります。規模の大小にかかわらず、調査そのものは必要です。
ただし報告が要るかどうかは規模で分かれますが、調査は分かれません。
調査を省略できる場合
石綿が使われていないことが明らかな場合や、建材を壊さない工事では、扱いが変わる場面があります。
判断に迷う場面は、所轄の労働基準監督署か自治体に確かめます。
罰則と指導の対象になる
そのため、調査をせずに着工したり、報告を怠ったりすると指導の対象になります。記録の保存を欠いた場合も同じです。
工事が止まると、そのぶん工期も費用も動きます。
石綿事前調査を行える者
石綿事前調査は、定められた資格を持つ者が行います。
| 資格 | 主な対象 |
|---|---|
| 建築物石綿含有建材調査者(一般) | 一般の建築物 |
| 建築物石綿含有建材調査者(特定) | 一戸建て等を含む建築物 |
| 一戸建て等石綿含有建材調査者 | 一戸建て住宅・共同住宅の専有部 |
| 工作物石綿事前調査者 | 工作物 |
社内に有資格者がいるかどうかで、進め方が変わります。
- 社内に有資格者がいるか はい自社で調査する いいえ次へ
- 調査会社に依頼できるか はい外部に委託する いいえ次へ
- 元請が調査を手配するか はい結果の提供を受ける いいえ着工前に体制を確保
有資格者がいない状態では調査が進まない。着工前に決めておく
判断で詰まりやすいのは、着工が迫ってから体制を考える場合です。
資格の種類を工事に合わせる
対象になる建物や工作物によって、必要な資格が違います。一戸建て住宅と、工作物では別の資格になります。
受注する工事の種類を見て、どの資格が要るかを決めます。
講習の修了証を管理する
資格を持つ人の修了証を、社内で一覧にしておきます。調査の報告書に、資格の番号を書く場面があります。
退職や異動があったときに、有資格者が欠けないかを確かめます。
外部委託でも記録は残す
調査を外部に委託した場合も、その記録は自社で保管します。報告や掲示の義務は、工事を行う側に残ります。
委託先から受け取る書類の範囲を、契約の段階で決めておきます。
石綿事前調査の進め方
石綿事前調査は、書面から現地、そして判断へと6段階で進みます。
- 1 書面調査 設計図書・過去の調査記録
- 2 現地調査 目視で建材を確認
- 3 判断 含有あり/なし/みなし
- 4 分析 判断がつかない場合
- 5 記録 3年間保存
- 6 報告・掲示 規模により報告
流れの3番目で、判断がつかない場合の道が分かれます。
書面調査で見るもの
設計図書、仕様書、過去の改修の記録を確かめます。使われている建材の名称と、施工の年が手がかりになります。
図面が残っていない建物では、現地調査の比重が上がります。
現地調査で見るもの
目視で建材の種類と状態を確かめます。図面にない改修が行われている場合、そこで見つかります。
そのため天井裏や機械室など、普段見えない部分も確かめます。
分析とみなしの選び方
判断がつかない建材は、分析に出すか、含有するものとみなして措置します。
分析に出す
- 費用と日数がかかる
- 無ければ措置が軽くなる
- 結果が記録として残る
- 工期に余裕が要る
みなして措置する
- 分析の費用がかからない
- 措置が重くなる
- すぐ着工できる
- 作業の費用が上がる
このうち建材の量が多ければ分析のほうが有利になり、少なければみなすほうが早く済みます。
調査の対象を建材ごとに拾う
建物全体をまとめて「有り」「無し」で判断することはできません。天井、壁、床、配管の保温材と、建材ごとに拾います。
同じ部屋でも、施工の時期が違えば建材も違います。改修を繰り返した建物ほど、拾う数が多くなります。
石綿事前調査の報告が必要になる工事
石綿事前調査の報告が要るかどうかは、規模で決まります。
| 報告が必要になる工事 | 目安 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 床面積の合計80㎡以上 |
| 建築物の改修 | 請負金額100万円以上(税込) |
| 特定の工作物の解体・改修 | 請負金額100万円以上(税込) |
報告の時期によって、手続きの余裕が変わります。
早いほど、内容の不備を直す時間が残ります。
報告する内容
工事の場所と期間、建材の種類と有無、調査した者の情報を報告します。調査の結果がそろっていなければ、報告できません。
そのため調査から報告までの日数も、工程に入れておきます。
電子システムで報告する
報告は、専用の電子システムで行う扱いになっています。利用には事前の登録が要ります。
登録に時間がかかるため、最初の工事の前に済ませておきます。
元請と下請の役割
報告を出すのは、その工事を請け負った事業者です。元請と下請のどちらが出すかを、着工前に決めておきます。
決めていないと、互いに相手が出すと思ったまま着工します。
分析機関の受入れ状況を確かめる
分析を依頼できる機関には、その時期の混み具合があります。繁忙の時期は、結果が出るまでの日数が延びます。
依頼する前に、いつ結果が出るかを確かめておきます。その日数を工程に入れれば、着工の予定も動きません。
石綿事前調査の記録と掲示
石綿事前調査の記録の保存期間は、種類によって大きく違います。
- 3年調査記録の保存
- 3年作業記録の保存
- 40年石綿健康診断の個人票
作業に従事した人の健康診断の記録は、他より格段に長く保存します。
調査の記録に書くこと
調査した日、調査した者の氏名と資格、建材ごとの結果を残します。分析に出した場合は、その結果も添えます。
写真を添えると、どの部位のことかが分かります。
現場に掲示する
調査の結果を、作業に関わる人が見られる場所に掲示します。掲示する内容と大きさには定めがあります。
そのうえ工事の期間中は掲示し続けます。
作業の記録は別に残す
調査の記録とは別に、実際の作業の記録を残します。誰がいつどの作業に従事したかを書きます。
健康診断の記録と対応させられる形にしておきます。
石綿が見つかったときの措置
見つかった建材の区分によって、必要な措置が変わります。
| 区分 | 建材の例 | 主な措置 |
|---|---|---|
| レベル1 | 吹付け石綿 | 隔離・負圧・作業届 |
| レベル2 | 保温材・断熱材 | 隔離・湿潤化・作業届 |
| レベル3 | 成形板・仕上塗材 | 湿潤化・手ばらし |
区分が決まると、そこから作業計画と届出へ進みます。
- 1 区分の判定 レベル1〜3
- 2 作業計画 方法と体制を定める
- 3 届出 レベル1・2は作業届
- 4 措置 隔離・湿潤化など
- 5 記録 作業の記録を3年保存
区分の判定が、その後の費用と工期を大きく左右します。
作業主任者を選任する
石綿作業主任者技能講習を修了した者から選任します。作業の指揮と、措置の確認を行います。
そのうえで選任した者の氏名を、現場に掲示します。
特別教育を行う
石綿を扱う作業に就く人には、特別教育が必要です。記録は3年間の保存が定められています。
作業に入る前に済ませておきます。
廃棄物の扱いも変わる
石綿を含む廃棄物は、通常の建設廃棄物とは別に扱います。処分できる施設も限られます。
マニフェストの区分も変わるため、搬出の前に確かめます。
発注者への説明を書面で残す
石綿が見つかった場合、措置の費用と工期が変わります。その内容を書面にして、発注者に説明します。
口頭で伝えただけだと、後から金額の話になります。調査の結果と、必要な措置を対で示す形にします。
保護具と作業衣の管理を決める
石綿を扱う作業では、専用の呼吸用保護具と作業衣を使います。使い終わった作業衣を、そのまま持ち帰らせないようにします。
脱ぐ場所と、洗濯や廃棄の方法を決めておきます。現場の外に粉じんを持ち出さない形にします。
石綿事前調査で起きやすい行き違い
立場ごとに役割があり、その境目で行き違いが起きます。
| 立場 | 主な役割 | 起きやすい行き違い |
|---|---|---|
| 発注者 | 資料の提供、費用の負担 | 図面が無い、費用を見込んでいない |
| 元請 | 調査の手配、報告、掲示 | 下請がやると思っている |
| 下請 | 作業の実施、記録 | 元請がやると思っている |
| 調査会社 | 調査と報告書の作成 | 対象範囲の認識がずれる |
| 分析機関 | 建材の分析 | 日数の見込みが甘い |
行き違いの多くは、着工前の打合せで防げます。
止まる進め方
- 誰が報告するかを決めていない
- 調査の範囲を口頭で伝えている
- 分析の日数を工程に入れていない
- 費用の負担を後回しにしている
進む進め方
- 着工前の打合せで担当を決める
- 調査の範囲を図面で示す
- 分析の期間を工程表に入れる
- 見積りの段階で費用を織り込む
右側は、どれも着工前に決められることです。
打合せの記録に担当を書く
誰が調査を手配し、誰が報告を出すかを打合せ簿に書きます。口頭の了解だけだと、後から食い違います。
書いておけば、その内容が前提になります。
調査の範囲を図面で示す
どこまでを調査の対象とするかを、図面に線を引いて示します。言葉で伝えると、認識がずれます。
改修の範囲が変わったら、調査の範囲も見直します。
追加調査の可能性を伝えておく
解体を進めると、図面になかった建材が出てくることがあります。その場合は追加の調査が要ります。
その可能性を、発注者にも事前に伝えておきます。
近隣への周知も検討する
レベル1や2の作業では、隔離や負圧の設備を設けます。外から見ても分かるため、近隣から問い合わせが来ます。
作業の内容と期間、飛散を防ぐ措置を事前に伝えておきます。掲示とあわせて、あいさつの中でも触れます。
そのうえ改修の範囲が広がれば、調査の費用も増えます。
その扱いを、契約の段階で決めておきます。
石綿事前調査を段取りに組み込む
調査は工程の一部として組み込むと、後ろが詰まりません。
間に合わない進め方
- 契約後に調査を手配する
- 有資格者を工事直前に探す
- 分析の日数を見込んでいない
- 報告を着工の数日前に出す
間に合う進め方
- 見積りの段階で調査を織り込む
- 有資格者を社内で育てておく
- 分析の期間を工程に入れる
- 報告を着工の2週間前に出す
左側はどれも、契約してから動き始める形になっています。
見積りに調査の費用を入れる
調査、分析、措置の費用を見積りに入れます。含めていないと、後から追加を求める話になります。
石綿が見つかった場合の措置の費用も、条件として書いておきます。
工程表に調査を入れる
調査、分析、報告の期間を工程表に書き込みます。分析には日数がかかるため、そのぶんを見込みます。
工程に入っていれば、後ろの工種も現実的に組めます。
発注者に協力を求める
設計図書や過去の改修の記録は、発注者が持っています。早めに提供してもらうと、書面調査が進みます。
資料がない場合の扱いも、あわせて相談します。
記録の様式を社内で1つにする
調査の記録と作業の記録の様式を、社内で決めておきます。現場ごとに作り直すと、書く項目が変わります。
3年の保存に耐える形で、工事ごとにまとめます。健康診断の記録との対応も付けられる形にしておきます。
資料が出てこない場合は、その旨を記録に残します。
様式は石綿 事前調査・作業記録テンプレートからダウンロードできます。作業の手順は作業手順書、廃棄物の管理は産業廃棄物マニフェスト管理表にまとめています。
よくある質問
石綿事前調査は誰でも行えますか。
一定の資格を持つ者が行うことが求められています。建築物石綿含有建材調査者の講習を修了した者などが該当します。社内に有資格者がいない場合は、調査を専門に行う会社に依頼する形が一般的です。
小さな工事でも事前調査は必要ですか。
解体や改修の工事であれば、規模にかかわらず調査そのものは求められます。報告が必要になるかどうかは工事の規模で分かれますが、調査を省略できるわけではありません。調査の記録は3年間保存する形になります。
調査の結果、石綿が無かった場合も記録は要りますか。
無かったことも調査の結果です。調査した日、調査した者、対象、判断の根拠を記録に残し、3年間保存する形になります。掲示も必要で、調査の結果を工事現場の見やすい場所に示します。