建設業の事故報告書と労働者死傷病報告の違い
公開 2026年9月1日
目次8項目
- 1建設業の事故報告書とは何を伝える書類か
- 第一報は電話で足りる
- 写真は現場を動かす前に撮る
- 聞き取りは早いうちに行う
- 元請への連絡の経路を決めておく
- 2建設業の事故報告書と労働者死傷病報告の違い
- 労働者死傷病報告は休業の日数で分かれる
- 電子での提出が広がっている
- 元請の様式に合わせる
- 3建設業の事故報告書に書く項目
- 事実と推測を分けて書く
- 作業手順書と照らす
- 被災者の経験を書く
- 保険の手続きを並行して進める
- 4建設業の事故報告書を出す時期
- 第一報を遅らせない
- 事実の確認に時間をかけすぎない
- 法令の報告の期限を確認する
- 被災した人への対応も記録する
- 5建設業の事故で報告が要る範囲
- 第三者に関わる事故は扱いが重い
- 通勤中の事故も確認する
- ヒヤリハットとして残す
- 6建設業の事故報告書の原因の書き方
- 不注意で終わらせない
- 4つの面から挙げる
- 対策に担当と期限を付ける
- 7建設業の事故報告書でつまずきやすいところ
- 責任の追及の場にしない
- 元請と自社の両方に残す
- 様式を事前に用意しておく
- 年に1回まとめて傾向を見る
- 8建設業の事故報告書を再発の防止につなげる
- 作業手順書に反映する
- 他の現場にも共有する
- 対策の実施を確認する
元請に事故報告書を出したから手続きは終わり、と考えて労働基準監督署への報告が漏れる。この2つは出す先も対象も違う書類です。
一般には、現場の元請や発注者へ出す事故報告書と、労働基準法や労働安全衛生法にもとづく労働者死傷病報告の2本立てになります。前者は現場が求める様式で、後者は定められた様式です。片方を出しても、もう片方の義務は残ります。
ポイントはここです。建設業の事故報告書は、現場に出すものと法令にもとづくものの2本立てになります。
ここでは、2つの違い、書く項目、出す時期、そして原因の書き方と再発の防止を順に整理します。
建設業の事故報告書とは何を伝える書類か
建設業の事故報告は、救護から始まり法令の報告まで続きます。書類を作るのはその途中の段階です。
- 1 救護と通報 けが人の対応を最優先
- 2 現場の保全 状況を写真で残す
- 3 第一報 元請へ速やかに知らせる
- 4 事実の確認 関係者から聞き取る
- 5 事故報告書 原因と対策を書く
- 6 法令の報告 労働者死傷病報告など
このうち最初の2つは分単位の話で、書類はその後になります。順序を守らないと、救護が遅れたり状況が失われたりします。
第一報は電話で足りる
書面を作ってから知らせると、その分だけ遅れます。第一報は電話で、事実だけを伝えます。
元請の側でも、発注者への連絡や関係先への手配が必要になります。早く伝わるほど、その動きも早くなります。
写真は現場を動かす前に撮る
けが人の対応が済んだら、状況を写真に残します。片付けてしまうと、何が起きたのかを後から確かめられません。
片付ける前に状況を写真で残すと、原因の検討に使えます。
聞き取りは早いうちに行う
その場にいた人から、見たことを聞き取ります。時間が経つと、記憶が周囲の話と混ざります。
聞いた内容は、誰が何を言ったかが分かる形で残します。
元請への連絡の経路を決めておく
誰から誰へ連絡するかを、着工の段階で決めておきます。夜間や休日の連絡先も含めて、1枚にまとめます。
現場代理人が不在のときの代わりも決めておきます。決めていないと、連絡がつくまでの時間がそのまま初動の遅れになります。
建設業の事故報告書と労働者死傷病報告の違い
出す先も、対象になる事故も違います。
現場への事故報告書
- 元請や発注者へ出す
- 様式は現場の指定
- 原因と対策まで書く
- 物損だけでも求められる
労働者死傷病報告
- 労働基準監督署へ出す
- 定められた様式
- 休業の日数で時期が変わる
- 労働者の負傷などが対象
労働者死傷病報告は、法令にもとづく届出になります。
そのため出さなかったり、事実と違う内容で出したりすると責任を問われます。
労働者死傷病報告は休業の日数で分かれる
休業が4日以上になる場合は、遅滞なく提出します。1日から3日の場合は、四半期ごとにまとめて提出する扱いです。
最初の見込みが短くても、後から日数が伸びることがあります。その時点で4日以上になれば、遅滞なく出す対象になります。
電子での提出が広がっている
労働者死傷病報告は、電子で提出する扱いが広がっています。自社がどちらの方法で出すかを、あらかじめ決めておきます。
最新の様式と提出の方法は、厚生労働省の案内で確かめます。
元請の様式に合わせる
現場への事故報告書は、元請が様式を指定していることが多くあります。着工の段階で受け取っておきます。
自社の様式で先に作ってしまうと、書き直しになります。
建設業の事故報告書に書く項目
建設業の事故報告書は、事実・原因・対策の3段で組みます。
- 事実いつ・どこで・誰が
- 原因なぜ起きたか
- 対策どう防ぐか
1段目の事実に推測が混ざると、その後の2段も揺らぎます。推測が混ざると、原因の検討そのものが揺らぎます。
| 項目 | 内容 | 書き方の目安 |
|---|---|---|
| 発生の日時 | 分まで書く | 作業日報と突き合わせる |
| 発生の場所 | 階数とエリア | 現場共通の記号で |
| 被災者 | 氏名・所属・経験 | 作業員名簿から転記 |
| 作業の内容 | 何をしていたか | 作業手順書と照らす |
| 事故の状況 | 何が起きたか | 事実だけを書く |
| 原因 | なぜ起きたか | 複数挙げてよい |
| 対策 | どう防ぐか | 担当と期限を添える |
事実と推測を分けて書く
見ていなかった部分は、推測になります。誰が見ていたのか、どこまでが確かめられた内容かを分けます。
分からない部分は、分からないと書きます。
作業手順書と照らす
その作業に手順書があるかを確かめ、実際の作業と照らします。手順どおりだったのか、外れていたのかで対策が変わります。
手順書がなければ、その事実も原因の1つになります。
被災者の経験を書く
その作業の経験がどれだけあるかを書きます。新しく就いた人に多いのか、慣れた人に多いのかで対策が変わります。
作業員名簿と新規入場者調査票から転記できます。
保険の手続きを並行して進める
労災保険の給付の請求は、報告とは別の手続きです。被災した人の補償に関わるため、早めに進めます。
第三者に関わる事故では、任意の保険の連絡も要ります。どの保険が使えるかを、平時に整理しておきます。
建設業の事故報告書を出す時期
報告には段階があり、それぞれ求められる早さが違います。
第一報と写真は当日の話で、書類はその後です。とはいえ書類も、事実の記憶が新しいうちに作ります。
第一報を遅らせない
とはいえ、社内で内容を固めてから連絡しようとすると、その分だけ遅れます。分かっている範囲で、まず伝えます。
そのうえで後から分かったことは、そのつど追加で伝えます。
事実の確認に時間をかけすぎない
原因の検討まで済ませてから報告書を出そうとすると、日数がかかります。事実の部分を先に出し、原因と対策は後から補う形もあります。
元請がどちらを求めているかを確かめておきます。
法令の報告の期限を確認する
休業の日数によって期限が違うため、診断の内容を早く確認します。
被災した人の状況を追いかける担当を決めておきます。
被災した人への対応も記録する
見舞いや治療の状況の確認も、記録に残します。休業の日数を追いかける材料にもなります。
復職の時期や、就業上の配慮が必要かどうかもそこで分かります。産業医や主治医の意見が関わる場面もあります。
建設業の事故で報告が要る範囲
けががなくても、記録に残す形にしておくと次に生きます。
- 人がけがをしたか はい両方の報告を検討 いいえ次へ
- 第三者や近隣に影響したか はい現場への報告と近隣対応 いいえ次へ
- 設備や機械が壊れたか はい現場への報告 いいえ次へ
- けがには至らなかったか はいヒヤリハットとして記録 いいえ状況を確認する
けががなくても、記録に残す形にしておくと次に生きる
物損やヒヤリハットも記録に残すと、同じ原因の事故を防げます。
第三者に関わる事故は扱いが重い
近隣の建物や通行中の人に影響した場合、対応の範囲が広がります。保険の手続きや、相手への説明が関わります。
現場だけで判断せず、会社として動く形にします。
通勤中の事故も確認する
現場への行き帰りの事故は、労災保険の扱いが変わります。労働者死傷病報告の対象になるかも、判断が分かれます。
迷う場面は、所轄の労働基準監督署に確かめます。
ヒヤリハットとして残す
けがに至らなかった出来事も、記録に残します。同じ状況が繰り返されれば、いずれ事故になります。
そのため事故報告書とは別の様式にして、書く欄を減らします。
建設業の事故報告書の原因の書き方
建設業の事故報告書の原因は、4つの面から挙げると対策が立てやすくなります。
このうちいちばん対策を立てやすいのが作業の方法で、いちばん立てにくいのが人の面です。
不注意で終わらせない
原因を「本人の不注意」で止めると、対策が「注意する」になります。それでは同じ事故が繰り返されます。
なぜ注意できない状況だったのかまで掘ります。
4つの面から挙げる
1つの事故に、複数の原因が重なっていることがほとんどです。複数の面から挙げると、打てる対策の幅が広がります。
たとえば足場が不安定で、手順書がなく、確認もなかったという形で並べます。
対策に担当と期限を付ける
対策を書くだけでは、実行されたかが分かりません。誰がいつまでに行うかを添えます。
期限が来たら、実施を確かめる形にします。
建設業の事故報告書でつまずきやすいところ
建設業の事故報告書が書けない原因は、日ごろの記録が足りていないことにあります。
- 現場の写真を撮ったか はい次へ いいえ片付ける前に撮る運用にする
- 作業日報にその日の作業があるか はい次へ いいえ日報の記入を徹底する
- 被災者が作業員名簿にあるか はい次へ いいえ名簿の更新を確認する
- 作業手順書があるか はい報告書を書ける状態 いいえ手順書の整備から始める
4つがそろっていると、報告書が事実だけで書ける
どれも事故のためだけの記録ではなく、日常の書類です。
責任の追及の場にしない
報告書を責任を問う道具にすると、事実が出てこなくなります。次の事故を防ぐための記録として扱います。
被災した本人が話しやすい形にしておきます。
元請と自社の両方に残す
元請に出した報告書の控えを、自社でも保管します。後から確認を受けたときに、そこから確かめられます。
工事の書類と一緒に綴じておきます。
様式を事前に用意しておく
事故が起きてから様式を探すと、その分だけ遅れます。元請の様式を着工時に受け取り、現場に置いておきます。
自社の様式も、書き方の例と一緒に用意します。
年に1回まとめて傾向を見る
その年に起きた事故とヒヤリハットを並べて見ます。同じ工種や同じ時間帯に集まっていないかを確かめます。
集まっている部分があれば、そこに対策を寄せます。安全衛生の年間計画を立てるときの材料になります。
写真の撮り方も、現場をまたいで同じ形にしておきます。
引きの絵と寄りの絵を1組で撮ると、位置と状態の両方が伝わります。
建設業の事故報告書を再発の防止につなげる
対策は、手順書・教育・点検の3つに落とします。
- 手順書作業の方法を直す
- 教育同じ作業をする人へ
- 点検設備と環境を確認
手順書と教育まで届くと、他の現場にも効果が広がります。
報告書を書いて終わると、その現場の記憶として残るだけになります。
作業手順書に反映する
原因が作業の方法にあれば、手順書を直します。同じ作業をする他の現場でも、同じ手順書が使われています。
直した日と理由を残しておきます。
他の現場にも共有する
同じ作業や同じ機械を使う現場に、事故の内容を伝えます。写真を添えると、状況が伝わります。
安全衛生協議会の場で共有する形が広く使われています。
対策の実施を確認する
決めた対策が実際に行われたかを、期限に確かめます。確かめる担当を決めておきます。
実施の記録を残せば、次の事故のときに経緯を追えます。
まとめた結果は、安全衛生委員会でも共有します。
数字で示せると、対策の優先順位も決めやすくなります。
前の年と比べると、減っている部分と増えている部分が見えます。
対策の実施を確かめた記録も、報告書と一緒に綴じておきます。
次に同じ作業をするときの資料になります。
様式は事故報告書テンプレートからダウンロードできます。作業の見直しは作業手順書、日ごろの記録は危険予知活動記録にまとめています。
よくある質問
元請への事故報告書と、労働基準監督署への報告は同じものですか。
別のものになります。労働基準監督署へ出すのは労働者死傷病報告という定められた様式で、元請や発注者へ出す事故報告書は契約や現場の運用にもとづく書類です。両方を出す場面が多くあります。
休業が1日だけの場合も報告が要りますか。
労働者死傷病報告は、休業の日数によって提出の時期が変わります。休業が4日以上の場合と、1日から3日の場合で扱いが分かれています。現場への報告は日数にかかわらず求められることが多いため、両方を確認しておくと漏れません。
物損だけの事故も報告しますか。
人がけがをしていない事故でも、現場への報告を求められる場面が多くあります。第三者の物を壊した場合や、公衆災害につながりうる事故は特に扱いが重くなります。現場の運用を着工時に確認しておくと迷いません。